モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「十一人の賊軍」感想ネタバレあり解説 東映の十八番だけどあんましだった。

十一人の賊軍

僕のマイベスト映画の一つに「将軍家光の乱心 激突」って映画がありまして。

家光の後継者を刺客から守る浪人たちの話で、千葉真一がアクション監修のもと、

超アクロバティックな剣術アクションが拝めるという、最高の痛快時代劇なんですよ。

 

これが子供のころ大好きで何十回も見ておりまして。

そういう意味で、この手の「命を捨ててまで守ろうとする武士たち」みたいな映画、大好きなんですよ。

 

今回鑑賞する映画は、武士ではないけど罪人たちが自由を求めて官軍と真っ向勝負するという「男くさい」映画。

顔芸も半端ないんだろうけど、どれだけ動きで魅了してくれるか、そこに宿る魂みたいなもんを感じ取れたらと思っております。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

仁義なき戦い」や「県警対組織暴力」など東映の黄金時代を築いた脚本家・笠原和夫が、かつて執筆したもの映像化を却下され破り捨てた16ページのプロットを基に、「孤狼の血」シリーズや、Netflixシリーズ「極悪女王」などのヒットコンテンツを生み出した白石和彌監督の手によって映画化。

 

旧幕府軍と新政府軍(官軍)で争われた「戊辰戦争」のさなか、新発田藩で起こった旧幕府軍・奥羽越列藩同盟への裏切り事件をベースに、藩に捕らえられていた罪人たちが決死隊として砦を守る様を、泥臭く抗う男たちの生きざまを余すことなく映し出す集団抗争時代劇。

 

 

監督前にたまたま読んでいたインタビュー本「昭和の劇 映画脚本家 笠原和夫」の中にあったエピソードに目をとめた白石監督。

長年作品を配給してきた東映に企画を持ち込み実現した。

ロケをする場所に頭を抱えながらも、難攻不落の砦をセットで組み立てるなど、対策活劇にふさわしい作品を見事に作りあげた。

 

そんな監督作の主演には、かつて「凶悪」でタッグを組んだ山田孝之や、監督の時代劇初挑戦となった「碁盤斬り」の仲野太賀、「死刑にいたる病」の阿部サダヲといった「白石組」常連の面々が集う。

また、「ヘルドッグス」の尾上右近、元モーニング娘。の鞘師里保、「怒り」の作久本宝、お笑い芸人の千原せいじ、「Cloud」の岡山天音、「キリエのうた」の松浦祐也、「ゴールデンカムイ」の玉木宏など、様々なジャンルの演者が一堂に集結した。

 

引越しをする大名でも、財政に頭を抱える勘定方でもない時代劇。

一筋縄ではいかない荒くれ者たちや、軍と軍の板挟みに遭う家老の腹の内といった人間模様にも注目の1作。

夢と自由を賭けた罪人たちの覚悟に、惚れろ。

 

 

 

 

あらすじ

 

新潟の新発田藩家老・溝口内匠(阿部サダヲ)は進退窮まっていた。

 

日本は二つに分裂し、戊辰戦争が勃発。

「新しい時代を切り開く!」という強い使命感を掲げ進軍を続ける新政府派「官軍」によって、旧幕府軍は徐々に東国へと追い詰められていた。

密かに官軍への寝返りを画策する新発田藩の目の前には、ついに官軍の到着が迫っていた。

 

そんな折に、旧幕府派の奥羽越列藩同盟が出兵を求め新発田藩へ軍を率いて押し掛ける!

城から退かない同盟軍と迫りくる官軍が鉢合わせしてしまっては。新発田は戦火を免れない!

まさに絶体絶命!

 

一刻の猶予もない溝口内匠は一計を案じ、官軍の進撃を食い止める起死回生の一手として【砦の護衛作戦】を命じる。

集められたのは、殺人、賭博、火附け、密航、姦通などで収監された死罪になるべき人道を外れた十一人の罪人たち。

圧倒的不利な命がけの過酷ミッションは、【官軍が砦へ侵攻するのを防ぐこと】ただそれだけ。

 

死を覚悟していた彼らに見えた「生きる」という一筋の希望。

勝てば”無罪放免”という契りを信じ、罪人たちは己のために突き進む。

 

果たして、彼らは未来をつかみ取ることができるのか!?

新発田藩、同盟軍、官軍…三者の思惑が交錯する中、「己の誇り」「故郷の残した愛する人を護るため」——それぞれの執念が轟く、十一人の壮絶な戦いが、今始まる!(HPより抜粋)

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登場人物紹介

  • 政(まさ)(山田孝之)…駕籠かき人足。妻・さだを新発田藩士に襲われた怒りから新発田藩士を殺害して罪人となる。砦を守り抜けば無罪放免だと言われ、決死隊として戦場に駆り出される。

 

  • 鷲尾兵士郎(仲野太賀)…剣術道場の道場主で直心影流の使い手。家老・溝口内匠の命により砦を守る決死隊となる。

 

  • 赤丹( 尾上右近)…イカサマ博徒。武士から金を巻き上げる。罪状は賭博。
  • なつ( 鞘師里保)…新発田の女郎。子を堕ろされた恨みで男の家に放火をする。罪状は火付け。
  • ノロ(佐久本宝)…新発田の花火師の息子。捕らえられた政を、死んだ兄と思い込み、逃がそうとしてしまう。罪状は脱獄幇助。
  • 引導(千原せいじ)…坊主。檀家の娘を手籠めにするなど、数多くの女犯に及んでいる。罪状は女犯。
  • おろしや( 岡山天音)…医師の倅。医学を学ぶため、おろしや(ロシア)へ密航をしようとする。罪状は密航。
  • 三途(松浦祐也)…貧乏な百姓。⼀家心中をするが、自分だけ死ねなかった。罪状は一家心中。
  • 二枚目(一ノ瀬颯)…新発田随一の色男。侍の女房と恋仲になる禁忌を犯す。罪状は姦通。
  • 辻斬(小柳亮太)…浪人。新発田にある村で、大人数の村人を無差別に殺害する。罪状は辻斬り。
  • 爺っつぁん(じっつぁん)(本山力)…長州出身の剣術家。新発田で地主への強盗殺人を犯している。

 

  • 入江数馬(野村周平)…決死隊隊長。城代家老・娘婿で腹心。侍と罪人の板挟みになる。

  • 溝口内匠( 阿部サダヲ)…新発田藩の城代家老。藩の実権を掌握し、領地が戦火に見舞われぬよう画策する。
  • 山縣狂介(玉木宏)…官軍先鋒総督府の参謀で、決死隊と対峙する。新発田藩を官軍に取り込もうと画策する。

(以上Wikipediaより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

七人の侍」や「十三人の刺客」など、魂を震わせる歴史的な作品となるのか。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

 

感想

血みどろの戦いにテンションは上がるが、何度も押し寄せては戦わざるを得ないアクションの連発で、正直飽きる。

なんというか、構成上に溜めがない。

溜めがあるからアクションで爆発するのに。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

迫力あるアクションシーン。

砦に向かわせ、官軍の足止めをするよう要求された罪人たちと兵士郎たち。

一筋縄ではいかない罪人たちを「ミッション達成したら無罪放免」というニンジンで釣り上げ、何とか機能させていく家老たち。

 

突然やってくる官軍たちを決死の斬り込みで戦いまくる彼らの姿は、どこを切っても熱い。

 

皆罪状で名を呼ばれるが故に、キャラ名を中々把握できないのが玉に瑕だが、それぞれを役割を戦場で果たしていることで、キャラクターの戦闘力のようなものは徐々に見て取れる。

序盤は辻斬りを先頭に、兵士郎や入江らが足軽たちに切りかかり、それに続けとばかりにばくち打ちや百姓、二枚目らなどが命がけの表情で突き進んでいく。

 

そうした「必死」の形相があるからこそこの映画は熱い。

 

砦に向かうには「吊り橋」を渡らなければたどり着けないことや、少数精鋭だからこそ「知恵で勝負」という面も序盤では冴えわたる。

 

紅一点の女郎と花火職人の息子・ノロが藁をたくさん野焼きして煙を作り、敵の司会を奪い、砦の中に何人かを閉じ込めて成敗するという賢い戦法が功を奏す。

残りの連中は高台から火縄銃で一人ずつ討ち取り、敵の数を減らしていくという流れ。

 

とにかく敵は多数で「時間稼ぎ」するための籠城が非常に困難な中、欲抗った戦だったと思う。

 

終いには敵の兄弟武将の兄をひっ捕らえることで停戦状態に持ち込んだり、油田を見つけて寸尺玉に塗り付けて火量を増大させて攻撃したりと、映画が盛り上がるに比例して描写も激しくなっていく辺りは、さすが超エンタメ時代劇と言って過言ではないだろう。

 

それらをリズミカルな編集と多彩なスローモーションで緩急をつけ見せていく演出によって、観る者の心を掴むのは容易だ。

 

劇中何度も血が飛び散り、吹っ飛んだカラダの破片の雨はもちろん、切られた箇所を惜しみなく見せていく残虐描写も、この戦いが如何に激しいものなのかを窺えるし、演者たちの激しい怒号や魂の叫びは、「絶対生きて帰ってやる」という現れにも見え、罪人として一度はあきらめたその命を最後まで燃やしつくてやるという気概が、とにかく溢れた群像劇でもありました。

 

 

ただ思うのは、砦に入るまでの過程は非常にスムーズになったものの、官軍のとの戦を何度も見せてしまうことで、クライマックスに行くまでの「タメ」がない作品にも思えた。

要は「戦い過ぎ」。

 

そりゃ官軍が何度も攻め入ってくるわけだから戦わざるを得ないわけだが、防戦一方だった争いが形勢逆転するような、サッカーでいう守備片目からのカウンターのような試合展開がない。

そもそも彼らは在任で戦に慣れてない。

いきなり戦場に出されて無我夢中で戦う死鳴かないのに、やけに手慣れている感じがどうも解せない。

 

兵士郎主導の下作戦を立てて実行するわけだから、その役目を果たそうと必死になる姿は理解できるが、いざ兵士たちとかを合わせたら、結局は個人の力のみで戦うことになるわけで、辻斬りや爺っちゃんなどの経験者はわかるとして、百姓家二枚目、医者などはよく死なずに済んだなと、映画的都合の多さにどんどん萎えてくる。

 

主人公である政も、逃げ足は速いが、そこまで戦いに慣れてるわけでもない。

しかも誰よりも生きて帰りたいと願うキャラクターなのに、捨て身の戦いが過ぎる。

 

この物語は、まずは罪人たちの背景を少しずつ炙り出していきながら、お互いの関係を構築するような「絆」の過程を描写するのが先決だったのではないかと考える。

 

対して面白いとも思ってない「スーサイド・スクワッド」だってちゃんとそういう絆を構築してから決死の攻防を繰り広げるわけだし、映画的なタメがあるからこそあの4人の横並びがカッコイイと思えた「ワイルドバンチ」だし、「七人の侍」を模倣してオリジナル映画を作ったザック・スナイダーの「レベル・ムーン」だって、ちゃんとそういう土台を作って物語を見せてきたのに、本作はそうした過程がどうも疎かに感じる。

 

キャラ描写がもったいない

例えば、官軍がやってくるのをもう少し遅らせ、まずは罪人たちが来るべき戦いに向けて一つになっていく過程=ドラマを見せるのを先決した方が良かったのではないかと。

 

政がなぜ聾唖の妻に会いたいと願うのか。

ひとりでも逃亡すれば皆死刑と言われているのに、なぜ勝手に逃げる奴を徐々に信頼していくのか。

 

ノロとの関係最後まで持続させて政の死を醜くも美しく見せるシーンは及第点ではあるが、そこにもっとドラマを加えるべきだったのではないか。

 

皆それぞれ訳があって罪を犯してきた連中なのだから、罪人ならではの薄汚い根性や、そこから改心して敵と命がけの戦いに向かう覚悟を、ちゃんと見せてもらえないと面白みがない、と俺は思う。

 

彼らは決して藩お抱えの節ではないから大義がない。

でもそれを劇中で見つけるような描写があっても良い。

そうすることで一筋縄でいかない奴らが一つになるから熱いのではないかと。

 

兵士郎もそもそもは同盟軍に感銘を受けたキャラクターなのに、どうして溝口の作戦に乗ったのか、そこからどうして彼らに肩入れしていくのかが中途半端に思え、いわゆる心の入れ替えをした決断のシーンなどがなく、彼に感情移入もできない。

 

それは入江も同様で、本当の狙いを罪人たちに知られ四面楚歌な状態でコロッと頭を下げて助けを乞う姿も、妙に納得がいかない。

恐らく溝口の娘と添い遂げ、出世したいがための浅い考えのようにもおもうけど、それが仮に違ったとしても、態度を変えたのかはやっぱりよくわからない。

 

主要キャラはそうした見せ場が容姿されてるからまだ良しとしよう。

他の連中はというと、もっとわからん。

 

特に僧侶は戦いもせず何をやっていたんだろう。

スケベ坊主のくせに、劇中スケベなこともしない。

僧侶として「ナムアミダ」とお経を唱えているだけ。

 

医者は後方支援的な立場として色々怪我の面倒を見ているが、終盤医者には欠かせない手をやけどし、やけくそになって捨て身で襲い掛かるのも、あれは「見せ場」とは言わない。

それなら異国に言ってもっと医者としての勉強をしたい旨を語る「見せ場」を作ってやらないと、彼の死が報われない。

 

女郎も百姓も二枚目も、これといった背景も薄く見せ場も少なく、10人の罪人を平等に映すことには成功したとしても、平等に描くことは失敗していると思った。

 

一番褒めていいのは阿部サダヲ演じる溝口だろう。

この物語を指揮するの役目を持つ彼は、同盟軍と未だ同盟を結んでいるように見せかけ、官軍がやってくるのを待ち、無血開城をしようという魂胆。

同盟軍と官軍が鉢合わせしてしまうことを避けるために、罪人たちを取りでに向かわせ、時間稼ぎをさせるというのが彼の計画だった。

 

しかし、同盟軍が中々出陣しないというトラブルが発生し、溝口は思いもよらない行動に打って出るという流れ。

当初は、藩のため殿のため、そして民のためにあれこれ悩みながら賭けに出るというキャラに思えたが、その本性はとんでもない下劣な野郎だったというオチ。

 

特に「こいつらのせいで俺たち出陣できなかったんで打ち首にします、見てください」なんてシーンは、「死刑に至る病」以上の真顔の表情で首を斬りまくっており、それをしっかり印象付けたうえで最後、罪人たちを一人残らず始末する、しかも頼んだ兵士郎元いう残虐ぶりを見せることで、この物語の黒幕的存在としてしっかり悪役を演じているのが素晴らしかった。

 

だからこそ、兵士郎が「俺が11人目の賊軍だ」というセリフがもっと活かされるような、彼の心変わりや罪人たちとの交流を映してほしかった。

あそこが本作で一番上がるところなんすわ。

そもそも10人しか罪人がいないのに、なぜ11人の賊軍なのか。

それは彼が罪人たちに肩を持って、本当の裏切者に啖呵を切るから、見る人の気持ちが上がり、最高の「見せ場」として機能するのに、やはり過程が弱いよなぁ…と萎えてしまった。

 

 

最後に

小林正樹を始めとした映画を研究して作ったそうで、確かにそれらを彷彿とさせるシーンはいくつか見受けられたものの、そもそもの脚本が良くないと思ってしまった作品でした。

ただただ決死の戦いを繋いで見せればいいってもんじゃない。

それは様々な映画が今までやってきたことだから、そういうところをもっと研究してほしかった。

 

2時間半も籠城を見せられても、面白くないって。

まずはキャラたちの土台を作って、絆を深めて、そして決死の戦ですよ。

だからこそ、彼らが死ぬ姿が美しいってもんじゃないですかね。

 

最後はほとんどの者が死ぬことは想定内だから、こっちがアガる死にざまをもっと見たかったですよ。

あれじゃアガらない。

 

しかし、今回色んな職種の役者が登場したけど、ちゃんと機能したのかな。

ナダルはちゃんとやっていたように思えたけど、磔に遭うのは彼の方で良かった気もw

芸人としてのリアクションを見せられる唯一の場所だったと思うんだけどなぁ。

 

まとめとしては、確かにアクションシーンはすごい。音のデカさも相まって迫力はある。CGを使っての爆破シーンも特に気にはならないし、カメラワークも夜のシーンが特に見えづらくてイライラしたけど、まぁしょうがないよねと。

ただ物語自体が本当によくない。もっと気持ちがアガるように作らないと、決死隊の死にざまが面白くないって。

 

あと単純に、尺が長いですね。

150分もやる必要がない。90分で済む話。

長尺でやるなら、やっぱり中盤辺りから官軍を攻めさせないと、長くした意味がない。

 

正直白石監督はとうに見放してたんだけど、今回頑張ってそうだなと思ったから見たのに、やっぱり俺の気持ちは冷めてたままだった。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10