エクス・マキナ
アカデミー賞脚本賞にノミネートして視覚効果賞を受賞したってことは、単純にSF作品にして話がすげーっ!!って言ってるようなもんです。
キャッチコピーがいいっすよね。「全てがアップデートされた最新のSFスリラー」
オラ、ゾクゾクすっぞ!!
でも、裏を返せば何年かしたらアップデートされちゃうんだろうなぁ。
なんてひねくれたこと考えず、見た後でずっとアップデートされず記憶に留まる作品であることを期待し、見に行ってまいりました。
あらすじ
検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社“ブルーブック”でプログラマーとして働くケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さない社長のネイサン(オスカー・アイザック)が所有する山間の別荘に1週間滞在するチャンスを得る。
しかし、人里離れたその地に到着したケイレブを待っていたのは、美しい女性型ロボット“エヴァ”(アリシア・ヴィキャンデル)に搭載された世界初の実用レベルとなる人工知能のテストに協力するという、興味深くも不可思議な実験だった・・・。(HPより抜粋)
監督・キャスト
監督は今作がデビュー作となるアレックス・ガーランド。
名前こそ耳にしたことはありませんでしたが、ダニー・ボイル監督作品にはかかせない人だったんですね。
いやー如何に監督以外に目がいってないかがバレバレですね。
レオナルド・ディカプリオが「タイタニック」の後に選んだ作品として知られ、日常に退屈していた青年が夢の楽園を捜し求め、後に恐ろしい事態へとなっていくミステリアス・アドベンチャー「ザ・ビーチ」の原作を書いており、その縁から監督であるダニー・ボイルとの共同製作にかかわっていく。
その後、人間がウイルスによって凶暴化したロンドンを舞台に、生き残ったものたちのサバイバルを描いたSFホラー「28日後・・・」や、衰えた太陽をよみがえらせるべく宇宙へと旅立った乗組員が予期せぬ事態に遭遇していく近未来SFサスペンス「サンシャイン2057」では脚本を手がけます。
また、決められた運命を受け入れながらも翻弄されていく3人の人生を静かに淡々と描いた「わたしを離さないで」では、製作総指揮と脚本を手がけるなど徐々に監督になるべくステップアップしていきます。
そして、今作で監督デビュー。
アカデミー賞視覚効果賞はじめ、様々な賞にノミネート、受賞するなどしてその才能を遺憾なく発揮しています。
こちらもどうぞ。
社長の家に訪問することになったプログラマー、ケイレブを演じるのはドーナル・グリーソン。
なにでブレイクしたんだ!?っていうくらい話題作に立て続けに出てます。主役としては華がない感じですが、2番手3番手としてはいい存在感かな。
スターウォーズ、不屈の男アンブロークン、レヴェナント蘇えりし者と、話題作に引っ張りだこです。
こちらもどうぞ。
美しい女性型AIロボット、エヴァを演じるのはアリシア・ヴィキャンデル。
この方もこの1年で急激に露出度が増えた女優さん。
写真で見てもわかるとおり、何とまぁキレイなお顔だち。
彼女に関してはこちらもどうぞ。
そして、人里はなれた山奥でひっそりと暮らす検索エンジン会社のCEO、ネイサンを演じるのがオスカー・アイザック。
ははは・・・・。誰だアンタ!と思うほどオスカーの変わり様にビックリです。
どれだけ違うかって?彼の出演作の写真がこちら。
左上から、スターウォーズ・フォースの覚醒、X-MENアポカリプス、エンジェル・ウォーズ、ドライヴ、ロビンフッド、インサイドルーウィンデイヴィス、アメリカンドリーマー。
見よっ!この七変化っ!!
まさにハリウッド界の山田孝之ですよ。
もちろん山田孝之以上に演技の幅が広く、時にハイテンションに、時に天真爛漫に、時に狂気に、時に高潔に、時に情けなく時に頼りないでもどこか憎めない、などなどいい奴悪い奴ダメな奴腹の底何考えてるか読めない奴と様々な役をこなす彼が大好きです。
だからこの作品を見たい一番の理由はオスカーが出てるから!これであります。まずは彼の演技を堪能したい、話や内容はそれからです!
彼に関してはこちらで紹介しています。よろしければどうぞ。
というわけで、才能豊かな監督のデビュー作を、これからの映画界を背負って立つ次世代俳優たちがどんな物語を見せてくれるのか、そしてAIロボットと人間との間にどんな戦慄が待っているのか。
それでは、鑑賞後の感想です!!!
既視感はありつつも静かな恐怖がまとわりつくSFスリラー!!
以下、核心に触れずネタバレします。
風景やセットの美しさとセリフの小難しさ
まず目に飛び込んでくるのは、ネイサンが住む別荘の大自然。
ケイレブがヘリで向かうその場所は、彼が目的地にいつたどり着くのかウズウズしていた2時間前から別荘の敷地というありえねー広さ。
そこから見える絶景に、雪解け水が流れる小川、朝もやの中そびえ立つ山々、そこから顔を出すお天道様の眩い光は生唾ごっくんな美しさであり、
それはそれはこれからビリーバンバンの歌が流れ、15秒後には「いいちこ」のCMだったのか!
なんて妄想してしまうほど美しい自然でした。
そこへポツンと構えた別荘は表向きこそ金持ちが訪れる避暑地みたいな造りだけど、実際はネイサンの研究施設であり、ケイレブの部屋に至っては窓のない閉塞感と圧迫感が同居した居心地の悪さがありました。
かといってシェルターのような重苦しいものではなく和テイストなデザイン性を意識したいかにもSFチックで直線的な構造できっとネイサン好みの施設になっているのでしょう。
このSFテイストな感じと解放感溢れた大自然のコントラストが物語に強弱をつけていたように思えます。
じゃあ話はどうだったのか。
序盤こそ前振りなどほとんどなくすんなり入れたものの、全体を通してセリフが小難しいしスラスラ入ってこない、
まだお口に入ったままの肉の塊が飲み込めていないのに口につっこまれるかのような感覚。
おい私の咀嚼力!いや、私の脳内処理能力!頭の悪さ!
バカな私では少々難解な会話が多々あり、久々に頭の悪さを呪いました。
詳しく言うのであれば、専門用語が飛び交う会話ではなく、どこか思考的であり哲学的であり。
特にネイサンやエヴァが話すセリフはケイレブに対して高度な問いかけが多々感じられ、
どういうこと?
と理解しようとする間に、ケイレブが答えちゃうもんだからおいてけぼりになっちゃうんです。
それもこれもアリシアの美貌とオスカーの怪演ばかりが目に飛び込んでうわの空だっただけかもしれないんですけどね。
三者三様の素晴らしい演技
一応主役はケイレブ役のドーナルグリーソンなんで彼のことから書くとすると、優秀なプログラマーだから選ばれたっつーんで社長の別荘に行くんですけど、既に優秀さが彼から感じられないんですね。この時点でグッドキャスティングなわけなんですけど。
彼のイメージは素朴でオクテで非モテでいい人な感じがやっぱりあって。
それが見事に発揮されてるのがいいんですよね。
特にエヴァとのガラス越しの会話なんか、向こうが低い温度の表情だったり質問をした時のケイレブの隙だらけの態度とか人間味とかすごく伝わりやすいし、エヴァに徐々に惹かれていく様がオーバーでない自然な表情で良かったと思います。
アリシア演じたエヴァも、わざとらしいロボットではなく少し人間に寄せてはいるけど心の豊かさがない、義務的で感情の起伏が少ない感じを見事に体現していて。
途中からケイレブに対して、アンドロイドでなく人間と認識させるべく服を着てカツラをかぶるんですけど、目に入った瞬間吉川ひなのに見えて仕方なかったです。
それだけお目目ぱっちりなお人形さんみたいで。それでいて声がハスキーで。
まあ美しかった。
監督からすごく曖昧で微妙な演技を要求されていたと思うんです。
だって人工知能か機械かを人間に判断させるテストの被験者で、機械なのに人間と思わせなきゃいけないわけで。
しかも、機械過ぎてもいけないし人間過ぎてもいけないという立場故に中立的感覚でずっと演じなきゃいけない。
これを最後まで演じ切ったのはさすがでしたね。てか、最後のほうでほんのちょっと人間味を魅せる表情がホントよくて。溜めて溜めてのあの表情か!と。
まあね、この2人はこれくらいにしてですよ。
俺のオスカーアイザックが今回も最高だったぜー!!!って話ですよ。
もう怪演ですよ、クレイジーですよ、マッドサイエンティストですよ、とにかくヤベー奴ですよ!!
お前そんな引き出しいつから持ってたんだよ!!
まず見た目がヤベーんすよ。
この現代に頭丸めてもじゃヒゲの社長がどこにいるって!
アレにオレンジ色のツナギ着せたら完全に囚人だよ!ダークナイトで船の爆破スイッチ押さなかったアイツだよ!
んでもってタンクトップで筋トレしてっからムキムキでさ、亀仙人のじっちゃんじゃねえんだからさ!
んでもって酒ばっか飲んで酔っ払ってさ、常に頭の中は回っているのら〜とか言っちゃってさ、それじゃあハングオーバーのアランじゃねえかww
スターウォーズの時の頼もしい好青年だったポーダメロンはどこいったよ!!面影どこにもねーよ!!
というようにカタチから見入ってしまうオスカーの役作りに今回もまた脱帽し、
演技でもケイレブを受け入れているかと思いきや試して試して小馬鹿にする、頭のいいのをイヤミに見せつける奴を見せたかと思えば、
急に持論を展開するセリフをエモーショナルにケイレブにぶつけたり、心のない空っぽな目でケイレブを見下したり、平然な顔でマッドなことをさらーっと言い放つわけですよ。
一番引いたのは、「アンドロイドの股間に穴開けて超敏感なセンサーを搭載してあるんだ、だからヤることは可能だよ」
ゾワゾワゾワゾワっ!!
こんなセリフを真顔で言う。社長がヤベーってのもあるけど、もうオスカー自身の言葉にも聞こえてしまう演技!
役が彼に寄ってるんじゃなくて、彼が役に寄りすぎてるんじゃないかな。
そして彼の新たな技、ディスコに乗ってダンス!振り付けがダセー!!ww
もう何でもできんじゃ〜ん。すげーよオスカー。
これだからさぁ、次のアポカリプスも楽しみなんだよ。オスカーがオスカーを獲る日は近いぞ!!
視点を変えてみる。
この映画はやがて人間を超えるものが生まれてしまう、しかも遠い未来ではないというメッセージが込められているわけですが、
その一方で、ケイレブがエヴァに恋してしまうという一方的なラブストーリーにも取れるし、
逆にエヴァを我々が人工知能としてみてしまえば、カゴの中の鳥が自由を獲得するために男2人を出し抜いて要塞から脱出するミッションストーリーにも感じられる。
もちろん監督の意図は一番最初のものだと思うし、徐々に危機が近づいてくる演出や電子音で構成された効果音や音楽が物語をスリラーチックに導いてるわけだから自ずと人工知能の怖さに目線が行ってしまうんだけど。
ケイレブのラブストーリーで言うならば、こんなに切ないものはなくて。
テストの試験官として色々エヴァを言葉巧みに試すのに気が付いたら試されてるのは自分で、
夜も眠れなくなって目が離せなくなって、お前あいつのこと好きなんじゃねーん?と突かれては見透かされないように虚勢を張って、
モヤモヤした思いは恋だったと疑惑は確信へと変わり、やがて彼女を思うあまり狂っていくという。
そして彼が出した答えとその先に待っていたものがあまりにも無情。
と、こんな風にも観れるし、
エヴァ目線で見るのであれば、人工知能が人間より優れてるとか云々よりも、
このテストに合格しなければ殺される!なんとかしなくては!と試験官であるケイレブを7日間かけて少しずつ心理的に追い込み、その合間にネイサンの監視網を掻い潜りトラップを仕掛け、その時を今か今かと心待ちにしている。
みたいなようにも観れる。
違う視点で見ても楽しめるよなぁ、という提案でした。
だって頭悪いから本筋がイマイチ理解できなかったんだもの。
他にも、視覚効果賞を取るだけのアンドロイドの完成度はSF好きには必見だし、スリラー映画としての後半からジワってくる怖さもあります。
ただ、いかんせん私はオスカー愛の強さとセリフの小難しさによって話が入ってこない、気持ちがノらないという感じになってしまいました。
期待値が高かっただけに少々残念ではありましたかね。でも、普通に楽しめたんですよ、これでも。