恋に至る病

連続殺人犯が依頼したのは一件の冤罪証明だったことから始まる物語「死刑にいたる病」。
阿部サダヲが非常に怖かったのが印象的でしたし、何より誰もがその殺人鬼に虜になっていく姿が既に「病」だって話でしたよね。
で、今回鑑賞する映画のタイトルが非常に似てるので、てっきり同じ原作者が書いた「病」シリーズモノかと思ったら、全然違うっていうw
タイトル寄せんなよ!w
こちらも好きな女の子が人を殺してんじゃねえか、それでも僕は好きだ、みたいなキャッチコピーになってるので、死刑にいたる病同様、病んでるね~と思える話なんでしょうか。
TikTokでバズった小説だそうで、映画の続編製作が決まっている「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」みたいに、ティーンズを中心にヒットするんでしょうか。
ま、恋は盲目なんて言いますから、世代関係なく刺さる内容だとは思いますけどね。
というわけで早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
TikTokで200万再生の大反響を呼んだ衝撃の恋愛小説を手掛けた斜線堂有紀の同名小説を、「ヴァイヴレータ」で国際的に評価され、近年では少女漫画原作の恋愛青春映画を次々と手掛け、「月の満ち欠け」でアカデミー賞優秀監督賞を受賞した廣木隆一監督によって実写映画化。
内気な男子高校生と学校内の人気者女子高生による、高校生ならではの不器用で一途な初恋を描くとともに、同級生の不審死や洗脳、マインドコントロールが入り混じった、一筋縄ではいかない刺激的な恋愛映画。
土屋太鳳や前田敦子、二階堂ふみや有村架純など、まだトップ女優になる前の若かりし彼女たちを、廣木隆一はカメラに収めてきた。
そして彼が次に収めるのは、山田杏奈。
「ミスミソウ」以降着々とキャリアを重ね、大作映画「ゴールデンカムイ」では二番手のポストを掴むなど、女優としての成長が止まらない彼女。
今回「殺人犯へと変わりゆく恋人」という二面性を持つキャラを、監督は時に華やかに時にミステリアスに捉えることで、物語の行方を揺さぶっていく。
「不安定さと強さを併せ持つ景という役を、自然に演じている。本当に今の映画界が求める役者さんだと思います」とコメントを残しており、被写体となった彼女を絶賛している。
山田杏奈演じる景に惹かれていく内気な男子高校生役を、「室町無頼」、「俺ではない炎上」と話題作に立て続けに出演する傍ら、アイドルグループ「なにわ男子」のメンバーとしても活躍中の長尾謙杜が担当。
少しずつ演技のスキルを上げている彼が、今回も恋心と疑念の両方を表現する難しい役柄を見事に演じた。
他にも、「天気の子」で主人公の声を担当した醍醐虎汰朗、「少女は卒業しない」の中井友望、「耳をすませば」の中川翼、「遺書、公開」の忍成修吾、「さよなら歌舞伎町」の河合青葉、「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」の前田敦子などが出演する。
恋心を寄せる相手は、殺人犯かもしれない。
恐怖を抱きながらも止まらない恋心に、男子高校生はどう決着をつけるのか。
そして彼女の本心は…。
あらすじ
他人と深い関係を結ばないように生きてきた内気な性格の高校生・宮嶺望(長尾謙杜)は、転校先の学校で、誰からも好かれるクラスの人気者・寄河景(山田杏奈)と出会う。
周囲との距離を保とうとする宮嶺に対して、景は持ち前の明るさで距離を縮め、2人は次第に一緒に過ごす時間が増えていく。
そんなある日、同級生の根津原(醍醐虎汰朗)が近所で遺体となって発見される。
さらに、その後も同級生の不審死が相次ぐ中、宮嶺は大切な景が事件に関わっているのではないかという疑惑を抱きはじめる。
それでも彼女を思う気持ちを抑えることができず……。(映画.comより抜粋)
感想
#恋に至る病 鑑賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) October 24, 2025
いやぁ震えた。ついていけない。
死を扱ってるのに緊張感ないし、アホかってくらいキャラの思考がぬるく常識がない。
そしてウブな恋のやり取り以降盛り上がりがない。ロングショット好きな監督が、中盤からガンガン引きで撮る自由度。ラストは果てまで引いて笑った。 pic.twitter.com/TZYvuGGVhM
小説が好きだって人には申し訳ないけど、この話の何に共感したんでしょうか・・・。
これ要するにどっちも不器用だった初心な恋愛って話?
どんどん人が自殺するのに、誰もがその辺ガバガバで、今の子たちってそんなに死生観低いの?
以下、ネタバレします。
人に依存し過ぎるなって話
転校族だった故他者との関係から距離を取っていた宮嶺の前に、突然現れた天使・景。
皆の前で自己紹介すらぎこちなかった彼を救うため、「久しぶり」と友達として振る舞うことで生徒たちが歓迎ムードになる冒頭。
もうこの時点で怖かった。
景の一挙手一投足で生徒たちがそっちの方向に向くからだ。
え?友達なの?なんだぁ~。
一見何気ないやり取りに聞こえるが、よく考えてみると「友達だからナニ?」と俺は感じた。
景の友達じゃなかったら宮嶺は歓迎されなかったのか。
そう考えると、もうこのクラスは彼女の掌の上に収まっていることになる。
その後、日曜日に行われるクリーン活動の人出が足らないと有志を募ったホームルームでも、景が参加するというとみんなが参加の意思を示す。
怖かった。
いくらクラスの人気者とはいえ、月曜に学校に行けば会えるのに、日曜日にも会いたいのか、一目見ないと落ち着かないのか。
彼女が活動に不参加だったら、きっとクリーン活動もさぞ大変だったろう。
さらには、クリーン活動時に景がケガをしてしまい、宮嶺が介抱したことがきっかけでデートをするという流れになる。
その約束の後、映画はすぐさまデートに向かうシーンに切り替わるのだが、電車に乗ってるのは景のみ。
宮嶺はというと、モノレールに追いつこうと全力で自転車をこいでいる画が映る。
一応「果たして自転車で追いつくのか」という賭けをしていたようだが、賭けにしてはあまりにもチャリが降り過ぎて賭けになってないだろと心の中でツッコんだ。
本作は人を好きになるあまり、ダメだと分かっていても許すことしかできないくらい景という女性に皆が依存し過ぎてる描写が数々映し出される。
なぜそこまで彼女が魅力的に見えるのか、なぜそこまで彼女がクラスにいないとダメなのか、皆「自分」というモノがなさ過ぎる。
一応その辺が現代的だったり、学校のクラスという狭いコミュニティで過ごしている以上、こういうリーダーシップだったり人気者にぶら下がっていないと存在意義が見いだせないんだろう、みたいな空気感は昔から無いわけではなかったから一定の理解はできる。
実際景は自殺しようとしていた先輩の引き留めに成功するし、誰かが意地悪なことをすればみんなの前で「それはよくない」とはっきり言える姿を見るに、確かにこういう子は人気だよなぁとも思えた。
とはいえ宮嶺をいじめている男子にどうやっていじめをやめさせるかを、クラスメイトの操って止めさせる、というか殺させるのが怖い。
恐らくクラスのグループLINEのようなもので、散々男子生徒を批判させたんだろうが、それで殺人教唆まで出来てしまうほどの発言力は一体どこから出てくるのか。
物語は、景が仕向けたことだと頭では理解しつつも、それを止めることもできなければ、何かあったら俺がやったと言うと言いきってしまうほど、宮嶺が景に骨抜きになっていることが判る。
止めたくても止めることができない、だって好きなんだもん。
思春期の恋ほど盲目になってしまうあたりが初心でいいのだけど、死を扱ってる以上その辺のリテラシーというか非常識な面が、どうしても引っかかってしまって終始ドン引きだった。
一体なんでついていけなかったのか考えると、この物語にはストッパーがいないのがダメだったと思う。
宮嶺自身景のためを思って守って入るものの、ブルーモルフォなる自殺強要サイトによって命令を無視できない生徒が多数おり、どんどん自殺していく姿が映るわけだが、それを横目に止めることもできなければ立ち止まって死を考える仕草もなく、ただただ景は今どう思ってるんだろうとか、景を守るために何をすればいいんだろうとノーリアクションで物事を見つめる宮嶺が映る。
長尾君は正直お芝居が巧いとは思えない。
もちろん誰かから学んできたわけでなくアイドルが主な活動なのだから仕方がないし、それでも「室町無頼」以降、演技に目覚めたのかそれなりに形にはなってきた。
未だに棒読みなセリフ回しが気になるけど、まぁみられないわけではない。
本作も見事なまでに棒読みで、相手がセリフを言ってる間は全く表情を崩さない。
一応目が泳いだりする仕草はあるものの、役者としてのリアクション度は弱いし、引き出しもない。
だが逆にそれが功を奏しているとも取れる。
だって彼は恋という洗脳によって思考が動いていないのだから。
人の死よりも景の事が気がかりなのだから。
話を戻すと、そんな宮嶺に目を覚まさせるキャラがいると物語はもっと転がるのになと思った。
もちろん本作の核は、景は宮嶺の事が好きなのか、利用していたのかだと思うし、ラストショットを見るに、その答えは一応出ているので小説は「ヤバい超切ないんですけど」みたいにウケたんだろうとも取れる。
でも映画となると物語が中盤以降停滞していてこれといった展開が無さ過ぎるため、退屈が勝る内容だった。
そうならないために宮嶺の事を思う女子生徒を出すことで、彼が葛藤していくような展開にすればもっと面白くなったのではないかと思った。
景の事が好きだけど、ホントに俺の事好きなのかはっきりしない、いつも思わせぶりなことばかり言う景なんかよりも、ちゃんと自分の気持ちを僕に伝えてくれる、僕に正しさを導いてくれるあの子に心が移っていく。
いつしか三角関係になることで、景が動き出しその子を誰かを使って殺させるような展開、もしくはその個人も洗脳の使い手で、景以上に恐ろしいことを考えていた、寧ろブルーモルフォの管理人が彼女だったという設定でもいい。
とにかく、宮嶺を正しい方向へ導く、もしくは恋の行く手を阻む存在が登場することで、物語は停滞せずに済んだのではないかと、色々妄想してしまった。
変な話ヒーローモノの展開にして、善と悪のキャラを対立させる、善だと思っていたのが実は悪で、グレーだった存在が実はシロだったという種明かしが最後明かされれば、ラストショットはもっとグッと来たかもしれない。
・・・とまぁこんな妄想をしたところで本作が全く面白くなかったことに変わりはないのだが、本当に見ていて誰もが洗脳されすぎていてリアリティライインがガバガバなんだよなぁと呆れてしまったのであります。
だってクラスメイトが何人死んだっていうのさ。
自殺未遂も含めて4人よ?たった数日で。
明らかにヤバいし。
これがホラー映画なら成立するけどさ、そういう話じゃないじゃない。
喪に服せとかそういう話ではなく、誰もが「何かがおかしい」と思える空気にしないと。
それを全部「洗脳されてる」で片づけるのは物語的に面白くないです、はい。
監督はホントにロングショットが好きだなぁ
物語が面白くないのは、カメラワークも理由にあります。
本作はとにかく画がつまらないのであります。
先に「これはよかった」ってのを書きましょう。
終盤、自殺未遂した生徒が再び自殺しようと試みるシーン。
宮嶺は景に彼女の自殺を止めてほしいとお願いし、景はそれを了承して学校の屋上に向かいます。
まずは景のみで引き留めようと試みますが、先輩は景が自分の自殺を止めてみんなからちやほやされてることに怒りをあらわにしており、おまえさえいなければ私は来世で生まれ変われたんだと責任転嫁。
そしてあらかじめ用意していた(なぜかは知らん)カッターナイフで景の腹を3度も突き刺し殺してしまいます。
殺害した後、先輩は窪塚洋介のアイキャンフライの如く屋上から飛び降りて自殺を実行。
宮嶺は、流血が止まらない景を連れ出して救急車を呼ぼうとしますが、景はそんなことよりも私にキスしてとせがみ、宮嶺は言うとおりにして景は息絶えます。
このシーンを長回しで映したんですね。
クレーンか何かを使って、実際に先輩が学校の屋上の死きりの上に立っていることを映し(奥の街並や地面が映っていることから恐らく合成ではない)、徐々に景と先輩にクローズアップしながら、景に刺す瞬間を捉える。
その後景の視点に持っていき、空の方を映しながら先輩が飛び降りる瞬間を捉える。
宮嶺が景の方を担いで屋上から出ようとするも、景は力尽きる前にキスをせがむ、という一連の行動が長回しだったんですよね。
これは良いカメラワークだなと思いました。
大体役者に屋上の死きりの上に本当に立たせるのは危険な行為ですし、高さ的にも学校とはいえかなりの高さでした。
恐らく下には救助用のマットが敷いてあったろうし、仮に実は飛び降りた場所が屋上じゃなかったとしても、一体どこでシーンを切ったのかよくわかりません。
どう見ても屋上から飛び降りたようにしか見えない。
これが凄い。
また、先輩が景を刺す瞬間、あまりにリアル過ぎて驚きました。
急にカッターナイフを出して躊躇なく刺すのをカットを入れずにやってること、そして特にこれといった効果音もなく突然行われる殺害の瞬間が唐突過ぎたんですよね。
隣に座ってた若い女性がとっさに手で目を覆ってましたよ。
びっくりしたよね。
細かいところで言えば、電車内から自転車で追いかける宮嶺を捉えたショットとか、さりげなくアイテムの存在を挿入する優しさ、眼帯姿の山田杏奈を可愛らしくもうつろ気な表情で見せるショットは良かったと思います。
しかし全体的に「引き」で撮るショットが多すぎて不可解過ぎました。
基本的に監督は引きで撮ったり、ロングショットを多用するのが多い傾向があります。
それは個性と捉えても良し、パターンがない捉えても良しなんですが、今回ホントに引き出しが無かったのかよく分かりませんが、引いて撮るシーンが多すぎて眠たくなりました。
宮嶺の家に景の親が訪ねるシーンも引いて撮るし、互いの部屋でのシーンもなぜか部屋の四隅から撮ってるのか?というほど引いて撮ってました。
なぜそこまで引く!?と頭を抱えて見てましたが、未だに意図はよく分かってません。
単純にそれがやりたいだけなんじゃないかとしか言いようがありません。
これでカメラが動けばいいんですけど、動かないんですよ。
固定なんです。
そりゃ飽きますよ、物語自体停滞してるのにカメラが動かないんだから。
2人目の生徒が死んだ辺りから雲行きが怪しくなって、何かあったら海辺で二人で喋って、次のシーンでは学校で。
この繰り返しだったんじゃない?
でもって宮嶺はずっと真顔で黙ってるでしょ。
なにがおもろいんじゃ。
最後に
あとめっちゃ気になったのは、宮嶺が転校して間もなく景って下の名前で呼ぶんですよね。
というかこの学校では男子を名字で呼んで、女子を下の名前で呼ぶんですよ。
これどういうことですか?
特に宮嶺は人と距離を取りたい設定から景のおかげで距離を縮めるわけですけど、その縮め方があまりにも早いというか。
もう少し宮嶺が新しい学校に慣れない馴染めない尺があっても良かったかもですね。
あといじめ方ですよ。なんか高校生がやるいじめ方にしては低能過ぎるなぁと。
いじめに低いも高いもないんですけど、どうもやり口が幼稚というか。
執拗に手を潰すの、あれどういう意味があったんですかね。
蝶に絡めただけの無意味なやり方だったなぁ。
しかも自分が好きな女とデートしただけって小学生じゃあるめえし、何だよその理由w
あとはもうブルーモルフォの設定があまり意味がないというか。
それなしでも成立する話でしたよね。
普通に景が心理学とか自殺強要サイトに興味があった程度に留めて、管理人が逮捕されたとかそれによってクラスメイトが巻き込まれたとか、あまり直結する設定になってない気がしました。
途中でも書きましたが、本作の核は「果たして景は宮嶺の事が好きだったのか、利用したかっただけなのか」だと思うので、ラストシーンを見た後もう一度見れば見る角度が変わって楽しめるかもしれません。
とはいえ、あまりにも死に対する重さが低く、幾ら未成年とはいえもう少しまともな奴はいねえのかと頭を抱える話でした。
結局景自身もクラスを掌握して何をしたかったんでしょうかね。死に追い込むことをしたかったんですかね。
その辺の説明もなかったなぁ。謎過ぎるんだよな。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10

