ザ・クリエイター 創造者
AIと人間が争う世界。
アンドロイドと人間を描いた「ブレードランナー」や「ターミネーター」などで映してきた世界は、少しづつではありますが近づいているように思えます。
スマホや家電製品、医療の世界はもちろん、ChatGPTやAIイラストなどにより、人間の生活は便利になる一方で、今後仕事をAIに奪われていく可能性もあるわけです。
いずれAIは人間よりも賢くなり、世界を維持するには「人間を排除することが不可欠」、なんて答えをガチで導く、かもしれません。
映画の見過ぎと言われればそれまでですが、AI技術の発展は今後もっと進んでいくだろうし、それによる危険性も考えなくてはならないわけです。
今回観賞する映画は、そんな未来になるかもしれない「人間とAIが争う世界」を舞台にした物語。
今更ありきたりな設定だなとも思ってしまいますが、既に見た人は「AIに感情移入してしまう」という声を上げるほど、心揺さぶられるドラマになってるとのこと。
いったい今の私たちにどんな問題と答えを提示してくれるのでしょうか。
早速観賞してまいりました!!
作品情報
「GODZILLA ゴジラ」や「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」などを手掛けてきたギャレス・エドワーズ監督が、AIと人間の行く末を描いたオリジナルSF映画。
人類とAIの間で戦いが激化した時代を舞台に、「人類を滅ぼす兵器」の破壊を命じられた元特殊部隊の主人公が、あどけない6歳の少女を姿をした「最終兵器」のAIを「ある理由」から守っていく姿を、新発想のVFX映像と世界観を背景に、濃厚なドラマとして描く。
アイオワの地を訪れた監督のふとしたアイディアがきっかけにより生まれた本作。
「ブレードランナーが舞台の黒沢映画」と語るように、登場するアンドロイドは皆人間の肉体と機会が入り混じった奇抜な姿。
そこに「果たしてAIは人類にとって何を意味するのか」という未来の世界の課題ともいえるテーマをドラマチックに描くことで、これまでのSF映画の先を行く作品に仕上がった。
キャスト陣には「テネット」や「アムステルダム」などで主演を演じ、デンゼル・ワシントンの息子としても知られるジョン・デヴィッド・ワシントンをはじめ、「GODZILLA ゴジラ」で監督作に出演経験のある渡辺謙、「エターナルズ」や「ドント・ウォーリー・ダーリン」のジェンマ・チャン、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のアリソン・ジャネイらが出演。
そして本作で演技初体験というマデリン・ユナ・ヴォイルズが、本作のカギを握る少女を演じる。
「モンスターズ/地球外生命体」でのゲリラ撮影スタイルを発展させたともいわれる本作。
VFXアーティストだからこそできる映像表現と心揺さぶるテーマに、目と心をば奪われるに違いない。
あらすじ
2075年、人を守るはずのAIが核を爆発させた。
人類とAIの戦争が激化する世界で、元特殊部隊のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は人類を滅ぼす兵器を創り出した“クリエイター”の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。
だがそこにいたのは、純粋無垢な超進化型AIの少女アルフィー(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)だった。
そして彼は“ある理由”から、アルフィーを守りぬくと誓う。
やがてふたりが辿りつく、衝撃の真実とは。(Fassion Pressより抜粋)
感想
#ザ・クリエイター創造者 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) October 20, 2023
AI対人類という幾度も擦られまくった題材故、なんというか全てが惜しい。
アルフィーの使い方にしろ話の展開にしろメッセージ性にしろ、あと一歩、あと一歩自分の想像の先を見せて欲しかった。しかし徹底的にアメリカをクソみてえに描く戦争映画及び戦闘描写は興奮。 pic.twitter.com/2xDEon2bh0
AIは自由でありたい、それをさせないアメリカ。
ベトナム戦争を彷彿とさせる数多くの描写に興奮するも、アルフィーのチートな能力をもっと活かすことはできなかったのか。
とはいえ、ローグ・ワンからさらにステップアップしたギャレスの腕は健在。
以下、ネタバレします。
進化したAIと共存はできるか。
AIの創造者=ニルマータの破壊を命じられ、ニューアジア諸国コナンという地で潜入捜査を行っていた主人公ジョシュアは、フィアンセであり妊娠中のマヤと愛を育んていたが、そこにアメリカを主とする西側諸国が開発した軍事要塞「ノマド」による空爆が開始される。
あともう少しでニルマータの居場所を突き止められたにもかかわらず、始まってしまった攻撃を中止するよう要請するジョシュアだったが、そのやり取りをマヤに聞かれてしまい、2人の間に亀裂が生じる。
やがてマヤはジョシュアの元を離れ逃亡を図るが、空爆によって命を絶たれてしまう。
5年後、当時の記憶を中々思い出せないでいたジョシュアだったが、マヤが生存確認された二日前の映像を見せられたことや、西側諸国の司令官による命令によって、再びニルマータの捜索活動をすることになる。
やがてジョシュアはニルマータがいると思しき場所を突き止めるが、そこにいたのはアニメを眺めていた少女だけだった。
彼女からマヤの居場所を聞き出し、もう一度人生をやり直したいと考えたジョシュアは、上司の命令を無視して少女と共に「天国」と呼ばれる地を目指し逃亡を図る。
本作は、AIの暴走によってロサンゼルスが核爆発の被害に遭ったことをきっかけに、西側諸国(アメリカ)と、AIの開発を推進するニューアジア諸国との戦争を描きながら、愛する妻を失った悲しみから解放されたいために行動する主人公と、彼女の居場所を知っているが、あまりの強大な力を持つあまり「兵器」と見做されている少女との親子にも似た絆の物語でありました。
正直本作を見るにあたり、これまで散々擦られてきた「AI対人類」のテーマに、一歩踏み込んで行く物語になるだろう、それはあらゆる映画を追いかけてきた我々映画ファンにとって更なる興奮を与えてくれることだろう、そんな期待を込めて臨んだのであります。
結果、擦られてきたテーマのその先を見れた、という気は起こらず、あくまでSF映画を作り続けてきたギャレスのいつもの映画だな、そんな印象でした。
しかし、今回のこの「ザ・クリエイター」、これまでAIやアンドロイドを敵として描き翻弄される人間の姿ばかり追って来たSF映画のそれかと言われると、少々違う。
なぜなら本作は、「アメリカの無慈悲な攻撃によって窮地に立たされるAIの気持ち」をしっかり描写しているからです。
というのも、少女であるアルフィーはことごとく「自由になりたい」と口にします。
もうこの言葉が本作の全てを物語っていると言っても過言ではありません。
AIが感情を持てば、例え人間が「Not Real」といっても、彼らには意志があり生きる意味があり、そして生活が既に存在するのです。
それを無差別に排除するアメリカのやり口を徹底して見せる本作は、正に「AIの気持ちに感情移入」してしまうようなお話になっており、彼らが「自由を求める」姿は、我々人間と同じ尊厳と同等なのではないか?と考えたくなります。
おそらく現実世界で本作のような発達したAIが自我を持ち生活をするとなれば、様々な形で人間に影響を及ぼすことは容易です。
労働や経済、全ての生活において人間にとって不都合な事態が予測されます。
しかし、だからと言って排除することが正しいのか。
共存することはできないのかと思ってしまうのがこの「ザ・クリエイター」だったのではないでしょうか。
因みに本作で描かれる「ロサンゼルスでの核爆発」は、AIが暴走したのではなく、アメリカ側の「入力エラー」という何ともお粗末な人間による誤作動であり、それを隠すためにAIを敵とみなし攻撃するという、大国故のプライドを守るための行動だったのであります。
そもそもAIは戦いなど望んでないのです。
とはいえ、世界のリーダーであるアメリカは、AIが開発する「兵器」を脅威とみなしてることや、彼らを先導する「ニルマータ=創造者」を見過ごすわけにはいかないのです。
このように、徹底して人間を悪と描く「AI対人類」の映画は、非常に珍しい作品だったのではないかと思うのであります。
アルフィーをもっと活かせなかったか
ただ、AIの描き方に関しては正直な所腑に落ちません。
大前提として「AIに心はあるのか」という点。
アルフィーは途中泣いたりするし、他のAI(模擬人間=シミュラントって呼んでましたね)もまた、アイスを食べようとするシーンがあるなど、今の現実世界では考えられない発展を遂げた存在になっています。
正直ここまで行くともはや人間であり、もっと別の思考が働くんじゃないかとというSF映画ならではの「穴」が感じられるのです。
というのも、かつての「AI対人類」を描いた作品て、人間が考えるその先を予測したAIによって中々勝利することができないみたいな流れがあったと思うんですが、本作はそこまで洗練された機械であるにもかかわらず、人間との戦では防戦一方なんですよね。
一応アルフィーというチート能力をもつ存在を開発しておきながら、人間にはまるで歯が立たない。
なぜだ、と。
またシミュラントは、様々な人間の容姿と機械を組み合わせたデザインなんですが、そもそもむき出しの機械の姿をした者たちとの差はなんなのか。
それこそむき出しの機械の姿を下AIは僧侶の格好をしてましたが、どういう経緯で僧侶になったのか。
それ以前に、なぜニューアジア諸国はAIの開発をし続けていたのか。
色んな背景がぼかされているのも不思議でした。
その何故はとりあえず置いておくとして、本作のキーパーソンであるアルフィーのその力をもっと存分に披露するべきではと思ったのです。
因みにアルフィーは、全ての電子回路を操作できる能力を持っています。
電源の入らないポンコツ車を自らの力で動かしたり、飛行機の操縦やロックされた扉を開けるのも朝飯前。
終いには検問されている場所全ての電源をオフにしてしまうほどの能力をもっているのであります。
彼女が兵器と呼ばれているのは、その能力を使ってアメリカが持つ軍事要塞「ノマド」に侵入すれば、いとも簡単に破壊できるからだと劇中で語られております。
もちろん終盤はノマドに侵入し、アルフィーの力によって破壊するという結末なんですが、この能力をもっとフル活用したアイディアはギャレスにはなかったのかと思ったのです。
多分、アルフィーのシミュラントは、外の情報や環境によって知能を向上させていくようなアンドロイドなんでしょう。
だから彼女は、その未知数な力を持つために隔離されていたと思うんですが、外の世界に出たことで彼女が得たモノは語学くらいで、もっと戦争状態である光景を見て生まれるであろう思考が、人間の想像を超えるような答え然り行動みたいなものを提示することはできなかったのかと。
自由になりたい、だけじゃない、感情が生まれると思うんですよね。
実際少女の姿をしてるし、妻と生まれてくるであろう子供を失ったジョシュアの悲哀が相まって、二人の間に生まれる絆は美しいです。
でも、それはアルフィーが少女だからであって、子供の姿ではない「兵器」に見立てた姿だったら、きっと受け取る側の我々の見方も変わってくるんじゃないかなとか。
これらの意味も踏まえて、どうも「想像を超えてこない」仕上がりとしか思えないなと。
それでも褒めてます
あれこれ愚痴っておりますが、それでも本作の中で「お!すご!」と思える描写はいくつもあったんですよ。
例えば冒頭。
一体なぜこうなってしまったのかという背景を昔のTVのニュースに見立てた映像で説明視した後、ロサンゼルスでの核爆発の映像が映し出されます。
説明によるとこの爆発で100万人の命が失われたようですが、いやそれ以上なんじゃないの!?と思えるような大きなキノコ雲が映し出されるのです。
またジョシュアが潜入捜査をしていたコナンという島のシーンでは、逃げたマヤの乗る船が起きにまで行ったと同時に、ノマドのレーザー感知から空爆という一連の流れは破壊力抜群でした。
何より浜辺にいたジョシュアが思いっきり吹っ飛ばされるほどの威力ですから。
他にも同じようにノマドから落とされた爆弾によって吹っ飛ばされるジョシュアのシーンがあるんですが、ものすごいスピードでやってくる粉塵から逃れようと必死に走るジョシュアの姿もまた圧倒されました。
このように爆破シーンに関しては容赦ない映像を我々に見せており、戦争映画たらしめる「恐ろしさ」を見事に表現していましたね。
銃撃戦に関してはどこかローグ・ワンを彷彿とさせる映像で、正直既視感はありましたが、戦闘風景という点ではなかなか楽しいものでした。
やはり50年後の未来ということで、いわゆる普通の銃ではなく、レーザー銃のような武器で光を乱射してましたね。
他にも相手を麻痺させる銃なんてものありましたね。
ガジェットという点では、一番キュンとしたのは「G-13」と呼ばれる「走る爆弾」でしょうか。
アメリカ側が作ったであろう武器なんですが、見てくれは金色のガッシュベルに出てくるメカバルカンみたいな形のロボなんですが、どうやらカウントダウンして起動すると「準備完了、あなたに仕えて光栄でした」と話し出して、一目散に目標に向かって走り出すんですよ。
で、カウントが0になると爆死するというロボットなんですけど、正直喋らなくていいんですよw
でも、あれを喋らせることによって妙な気持ちが生まれるんでよねw
また彼が橋から走ってくる姿を煙幕焚いて演出してたり、アルフィーが力使って制止ささせるっていうシーンまでやってるんですよ。
その時思いましたね、あ。ギャレスこいつの事大好きだなってw
でも、あれ発明だなあと思いましたw
他にも遺体の脳から記憶をUSBメモリに記録させて、別のシミュラントにそのメモリを差し込んでダウンロードすると一定時間意識が移るという装置ね。
結末ではその装置を使ってドラマチックな展開にしてますけど、これも面白いアイディアだったなぁと。
最後に
まるで「AIが発展した世界線で起きたベトナム戦争」を見てるかのような容赦ない戦争映画という「見た目」は楽しめましたし、AI側に感情移入させるかのような構図によって、果たしてAIという存在は完全悪なのか否かというテーマにしたのはお見事ではありましたが、相変わらずギャレス特有のまどろっこしいお話の構成や、別に隠さなくていい核心などがどうもノイズになったり、SF映画ならではの「穴」に疑問を抱いたりと、個人的にはそこまで没入できなかった点はありました。
マヤが創造者だってことを上が隠してたなんて言及がありましたが、一体どのタイミングでそれが分かったんでしょうかね、上層部は。
あれ?ハルンが言ったんだっけか?
まぁいいや。
しかし本作は1億ドルに満たない予算で製作されたそうで、他の大作映画と比較しても見劣りのないクオリティを持ったSF映画だったと思います。
だからといって、こうしたオリジナル映画に多額の予算を与えることができないスタジオの意向はどうにか改善できないモノかと考えたくなりますね。
創造者っていわば作り手のことじゃないですか。
それを叩き潰そうとする本作でのアメリカって、見方を変えればメジャースタジオですよw
そうしたメタファーも込められてるのかなw
ともかくもっとこうしたA級、S級のオリジナル映画がたくさん作られる時代がまた来て頬しいことを願って、本作は甘めの満足度といたします。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10