モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「お前の罪を自白しろ」感想ネタバレあり解説  果たしてケンティーはそこまでするような役柄だったのか。

お前の罪を自白しろ

私の罪を自白します。

それは、自販機のお釣りの中にあった誰かが取りこぼしたであろう500円玉を、こっそり自分のポケットにしまったことです…。

おお、神よ!私が犯した罪をお許しください!!

 

…と、これくらいの罪は誰でもしたことあるでしょう。

わざわざ交番に届けることもないだろうし、そのまま放置にすることもないでしょうw

 

今回観賞する映画は、こんなしょうもない罪ではなく、政治の世界に蔓延る闇を暴く社会派ミステリー。

自白を要求する側と、自白したくない側の思惑、その間に挟まれ奔走する主人公。

いったいどんな罪が暴かれるのか、そして暴かれることで国家にどんな衝撃が走るのか。

早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

劇場版ドラえもんの脚本から、織田裕二主演で映画化された「ホワイトアウト」、外交官黒田康作シリーズの原作者として知られる真保裕一が、2019年に発表した同名小説を実写化。

 

政治家の孫を誘拐した犯人からの要求は身代金ではなく「罪の自白」。

秘書を務める主人公が、頑なに自白をしない父と犯人に翻弄されながらも、徐々に明らかになっていく巨悪に迫っていく社会派ミステリー。

 

アイ・アム・まきもと」で久々に映画監督業を務めた水田伸生監督が、得意とするコメディを封印し、シリアスでドライブ感のある社会派ミステリーに挑む。

 

主演には、俳優業が板についてきた中島健人

アイドルグループとして活躍する傍ら、30歳を前にした彼の覚悟を、本作で示してくれることだろう。

他にも、主人公の父で政府を裏で支える内閣副総理役に、「ザ・ファブル殺さない殺し屋」、「望み」の堤真一

主人公の姉で、子供を誘拐される母親役に、「真夜中乙女戦争」、「貞子」の池田エライザ

また、「スイート・マイホーム」の中島歩や、「イチケイのカラス」の山崎育三郎、「MINAMATA」の美波、「ハケンアニメ」の尾野真千子、「湯道」の角野卓造などが脇を固める。

 

 

また主題歌には、国民的ロックスターのB’zが担当。

闇を相手に暴れる感情を音楽で表現し、本作に疾走感を与える。

 

国か、家族か。タイムリミットは24時間。

警察、マスコミ、そして国民をも巻き込んでく一大政治サスペンスエンターテインメントです。

 

 

 

 

あらすじ

 

政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司(中島健人)は建築会社を設立するも倒産し、やむなく政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の父・宇田清治郎(堤 真一)の秘書を務め、煮え切らない日々を送っていた。

 

そんなある日、一家の長女・麻由美(池田エライザ)の幼い娘が誘拐された。

犯人からの要求は身代金ではなく、「明日午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という清治郎への脅迫。

それは決して明かすことが許されない国家を揺るがす”罪”だった。

 

権力に固執し口を閉ざす清治郎―。

晄司はタイムリミットまでに罪に隠された真相を暴き、家族の命を救うことができるのか !?(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

「天国と地獄」風誘拐サスペンスを期待したけど、肝心の犯人への関心が湧いてこない。

その最たる理由はやはり利権絡みの問題が複雑なのと、早すぎる自白シーンというピークの持っていき方なのかもしれない。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

つまらないわけじゃなくて、リアルじゃないんだな。

副総理の孫娘誘拐から始まり、政治家たちの保身、私腹を肥やすための汚職に賄賂、隠蔽、そしてそれによって人生を狂わされた弱き者たちに視点を向けた政治サスペンス。

 

決して政治に関心がないわけではない僕ですが、実際こういうことが行われてるんだろうなぁという想像を、こういう映画で見せて貰えたのは大変満足。

 

橋の建設予定地が急きょ変更になった理由には、総理と親しい人が経営する建設会社に利益をもたらしすためであり、その汚れ役を買って出たのが堤真一演じる副総理。

さらに競艇場移転問題も飛んでくることで、孫娘を誘拐した犯人への関心よりも、一体どこの誰が裏で糸を引いているのかに関心。

 

しかし、その関心は堤真一による自白会見によってどこ吹く風。

結局は建設予定地移転によって、バレてしまうかもしれない殺人事件へと展開し、その発端は再び橋の建設移転によるものだったという、1週回ってなんやねんという話。

 

 

もちろん原作を巧く改変して作ったお話なんでしょう。

しかしながらいくつか疑問が浮かんで仕方ありません。

 

そもそも親父の秘書である主人公を視点にした意味は何なのか。

主人公はオヤジの地盤を継ぎたくないどころか、政治事態に不信感を募らせる次男坊で、建設会社を立ち上げたにもかかわらず、社員を引き抜かれて倒産。

仕方なく親父の秘書を務めることになるという設定。

 

慣れない仕事に悪戦苦闘してる姿はどこにもないどころか、国会で議論されている「橋建設移転問題」で世間を騒がせている親父がのらりくらりと回答を避けている姿に不満げな様子なんですな。

 

走行してるうちに主人公の妹の娘、親父である副総理大臣の孫娘が誘拐される事件が発生。

身代金目的かと思い来や「お前の罪を自白しろ」という要求に、戸惑う宇田家一同。

 

もちろん罪を自白すれば国を揺るがす一大事になるわけで、一体何人の政治家の首が飛ぶかわからないようなヤバい案件の真相を世間に対して大っぴらにしなくてはいけないわけで、そりゃ簡単に「わかった、孫のために自白する」とはならないわけです。

 

ここで政治や親父に不信感を抱く主人公のケンティが、親父に啖呵を発して説得させてとんでもない巨悪が世間に暴かれるんだろう…と。

ですが、本作はここが主軸になっていかないのがモヤモヤ。

 

僕が思ったのはオヤジは結局真っ黒で、それを息子がしっかり悔い改めさせるものだとばかり思ってたんですよ。

だから秘書であるケンティが主人公ってことが腑に落ちるだろうと思ってたわけですが、全くそうじゃない。

 

オヤジである堤真一は、総理のためにガチで汚れ役に徹していて、実はクリーンだった(といっても暴行したとか福島の会社で力使ったとかいってましたけどw)わけです。

じゃあ黒幕はどこにいるのかってなるんですけど、劇中は、なぜか急に能力発動したかとばかりに勝手に奔走して政治家のポテンシャルを見せるケンティのかっこいい姿をマジマジと見せられるわけです。

 

総理を失脚させるために幹事長が動いていて、ケンティはその証拠をつかんだ、でも親父にしっかり自白させるために、このことは黙っておいてほしいと、これまで総理側の立場だった親父を動かすためにうまく立ち回るわけです。

 

いや別に秘書ってこんなことまでするんだぁ、って部分はいいんですよ。

僕が不思議に思うのは、急に機転効かせて巧く立ち回るケンティの行動です。

前フリがないんですよ、この急な行動に対する。

 

もちろん彼にとって一番大事なのは親父の地位を守ることではなく、姪っ子を救出すること。

そのためならなんだってするという覚悟からくる行動なのは理解できるんですが、だからって幹事長にまで近づいて行動できる、頭を働かせる力を急に見せられても「はぁ?」ってなりますって。

 

だって彼には兄貴がいるんですよ。

この兄貴が、罪の自白をすると親父が逮捕される可能性があるから指揮権発動を法務大臣にお願いしようという話になった時に、指揮権発動ってなに?ってくらい知識に乏しいような存在なんですよ。

要は政治をまだよくわかってない立ち位置なんですよ。

なのに、「今回の橋の問題、なんでリークされたのか考えたところ、あの人が漏らしたんじゃいかって思うんですよ」とか急に言い出す始末。

いやいやそれどういう経緯でそういう発想になったのか教えてください。

いきなり言われても、ポテンシャル在り過ぎてついていけませんw

 

 

また親父である堤真一演じる宇田清治郎ですが、当初は汚れ役に徹するために中々会見を開くことに躊躇してた立場ですが、紆余曲折を経て二度の会見で全部ぶちまけることを決心します。

ただ一体どこで心変わりしたのか、その心境の変化がいまいちわかりやすく描けてません。

 

これは恐らくですが、総理の後ろ盾を失ったことが一番の要因かと思います。

指揮権発動すれば、法務大臣が検察官に対して指揮権を行使でき、仮に清治郎が会見ですべてぶちまけても法務大臣が指揮権を行使してくれるので罪に問われないという保険をかけることができます。

 

そうすれば会見で全部ぶちまけてもセーフだし、孫娘もきっと帰ってくるという一石二鳥のアイディアだったわけですが、官房長官は中々立ち会ってくれないし、法務大臣も「会見までに間に合いません」とほざく始末。

しかも宇田家をちゃんと守ると総理に一筆書いてほしいというお願いもちゃんとやってもらえないということから、清治郎は2度目の会見で「橋の建設移転問題」のからくりを全て語ることになるわけです。

 

その過程でケンティが幹事長に口封じさせた働きあってのことなんですが、どうも清治郎が一体どこで「会見で全部話そう」と決心したのかがわかりにくいです。

例えば、総理に完全に裏切られたことを示す表情や言動など1ショットでも加えておけば色々理解が深まるし、あくまで清治郎も娘のため、孫娘のため、そして家族のために何とかしたい、でも立場があるからそう簡単にはいかないという葛藤ももっと映しておけば伝わりやすいのかなあとも思ったわけですが、相変わらずこの手の役柄の堤真一はノリノリで演じてくれないので、いまいちわからん。

 

このように、主軸となるであろう「誘拐事件」の裏側に潜む利権絡みの問題は、総理の失脚を企む幹事長の計画だった!!…と思ったらさらに二転三転していくわけです。

 

物語の後半は、会見を開いたことでようやく保護された孫娘で一件落着…というわけにはいかず、犯人探しへとスライド。

ケンティは本職そっちのけで、新競艇場予定地である研修センターを潰す潰さないでもめている原因は何なのかを追求していくのであります。

 

もうそれね、ケンティのやることじゃない。

警察がやるべきこと。

彼がなぜそれをやらなければならないのか。

それはもちろん主役だからだ!て片付くわけですが、なんていうんだろう、わざわざ政治家パートと犯人探しパートを分けて見せる必要性があったのかどうか。

 

わかってますよ原作通りなんでしょう?

それ言われたら何も言えねえんだけど、例えばその犯人が判明した時に、実は後ろで糸を引いていたのが政治家だったって方が一つの物語として驚くし、何より序盤で描いていた「橋建設問題」の真相を描いた時の疾走感が保たれると思うんですよ。

もうね、急につまんなくなるの。この犯人探しが。

 

だって、もう「お前の罪を自白」しちゃってるし、孫娘帰ってきてるし。

あとはもう警察が、実はあの人が犯人でしたで片付くんですよ。

それを、「橋の予定地を変更したことで、場所を移さざるを得なかった者たちが不幸に見舞われつい勢いで殺人を犯してしまい、それを隠ぺいするために選んだ場所が、再び政治家の利権争いによって掘り起こされてしまうかもしれない、だからその腹いせに競艇場の移転を主導する清治郎の孫娘を誘拐した」って顛末を、ケンティ使って色々究明させていかなくてもいいんですよ。

 

 

最後に

あくまで楽しめたものの、こうした方がいいのになぁという愚痴をぶちまけたわけですが、本作における最大の「罪の自白」は、親父が自分を継いでもらいたいがために、ケンティの会社を潰したってのが一番の罪ですねw

 

あれ聴いてなんで政治家になるんですかね~w

オヤジは結局汚れ役になって色々動いたけど、片足はツッコんでたわけじゃないですか。

ただでさえ政治家や親父に不信感たっぷりだったケンティが、今回の一件で、しかもそんな事実まで聞かされて、なんで政治家になって終わるんだろうと。

確かにポテンシャルというか才能はあると自覚したんでしょうけど。

 

しかもよ、結局親父に振り回された娘や兄貴の立場はどうなんだろう。

その辺のオチは一切ないんですよね~。

一応孫娘は精神的ショックから立ち直って普段の生活を送れたろうからいいとして、お前に告いでほしいとケンティに告げた会話を隅っこで盗み聞きしていた兄貴は一体どういう心境なんだろうと。

 

あとはもう指揮権発動してないんだから清治郎って逮捕されんじゃないの?

関与していたわけだからせめて事情聴取とか重要参考人とかで警察呼ばれるとか、家でゆっくりしてる場合じゃないと思うんだけど。

結局力が動いて有耶無耶にされたってことなんですかね。

ようわからん。

 

まぁ個人的にはどこを分厚くして面白く見せるかだと思うんで、今回の物語の山場の配分だったり、犯人捜しをもっと劇的なモノにする面白さが欠けていたので満足度は低いです。

楽しかったけどね。

 

余談ですが、今回子供たちが多く劇場に足を運んでる姿を見かけました。

恐らくケンティ目当てだと思いますが、果たして本作を理解できたのだろうか。

楽しかったのならそれでいいんだけどね。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10