チャレンジャーズ
ゼンデイヤと言えば、「スパイダーマン」シリーズのMJ役でお馴染み。
「DUNE」でも主人公ポール・アトレイデスの相手役チャニ役でも活躍してました。
ただこれまでいわゆる相手役としての抜擢程度なんですよね。
だから今回鑑賞するこの「チャレンジャーズ」では単独主演作になるわけで、そういう点で非常に楽しみにしております。
パッと見テニスプレイヤーがキャラクターのため、スポーツ映画のように思えますが、どうやら「男を手玉に取って弄ぶ」かのような恋愛モノの様子。
こと恋愛において男性がイニシアチブを取るようなイメージが未だ根付いていますが、そういう点ではこれフェミニズム的な観点の強い映画なのかもしれません。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「君の名前で僕を呼んで」でアカデミー賞にノミネートしたかと思えば、「サスペリア」のリメイク、そしてカニバリズムを題材にマイノリティの青春描写を映した「ボーンズアンドオール」で賛否を巻き起こしたルカ・グァダニーノ監督が、「スパイダーマン」シリーズや「DUNE」シリーズなど、近年のビッグバジェットで活躍を見せるゼンデイヤを主演に描く、ある愛の形。
2人の男を同時に愛するテニス界の元スター選手と、彼女の虜になった親友同士の2人の男子テニスプレイヤーの10年以上の長きに渡る衝撃の<愛>の物語。
全米で1位を獲得し、監督史上ナンバー1ヒットとなった本作は、脚本を手掛けたジャスティン・クリツケスが、女子プロテニス選手である大坂なおみの試合を観て、本作へのインスピレーションが浮かんだとのこと。
世界プロテニストーナメントの下位レベルの選手間で争われる、いわゆる“チャレンジャーマッチ”の試合を観るまでハマった彼は、その試合が「長い間顔を合わせることのなかった2人が再び出会う舞台になったとしたらおもしろいんじゃないか」という発想から着手されたそう。
そこに今やファッションアイコンにまでなったゼンデイヤを起用、さらには「様々な愛を描く」ことを得意とする監督がオファーを受けたことで実現した。
また本作の衣装デザインを、「ロエベ(LOEWE)」のクリエイティブディレクターであり、自身のブランドの「JWアンダーソン」を率いる国際的デザイナー、ジョナサン・アンダーソンが担当。
ゼンデイヤが劇中で着飾ったスタイルは、「テニスコア」と呼ばれるほどトレンド化した。
さらに音楽には、「ソーシャル・ネットワーク」、「ソウルフル・ワールド」でアカデミー賞を2度受賞したトレント・レズナーとアッティカス・ロスが担当。
テクノとエレクトロミュージックを基盤にした音楽により、セクシー且つパワフル、そしてロマンティックな物語に仕立て上げた。
共演には、「ゴッズ・オウン・カントリー」Netflixの人気ドラマシリーズ「ザ・クラウン」のジョシュ・オコナー、「ウエスト・サイド・ストーリー」のマイク・フェイストが出演。
主人公を手に入れるため、先の見えない究極のラブゲームを競い合う。
10年以上かけて描かれる衝撃の愛の物語。
最後まで興奮する三角関係が、あなたの価値観を揺さぶる。
あらすじ
人気と実力を兼ね備えたタシ・ダンカン(ゼンデイヤ)は、絶対的な存在としてテニス界で大きな注目を集めていた。
しかし、試合中の大怪我で、突如、選手生命が断たれてしまう――。
選手としての未来を失ってしまったタシだったが、新たな生きがいを見出す。
それは、彼女に惹かれ、虜となった親友同士の2人の男子テニスプレイヤーを愛すること。
だが、その“愛”は、10年以上の長きに渡る彼女にとっての新たな<ゲーム>だった。
はたして、彼女がたどり着く結末とは――。(HPより抜粋)
感想
#チャレンジャーズ 観賞!!
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) June 7, 2024
うおーーーーーっ!!
カモーーーーーン!!
何だこのエロいテニス映画は。
すげえ試合見た。
三人とも優勝!!
もうね、瓶ジュースですよ、チュロスですよ、バナナですよ、バドワイザーですよ。 pic.twitter.com/PE2ylj9FId
テニスを題材にこんなにエロい恋愛映画を見せてくれるなんて、、、
ゼンデイヤが劇中でテニスボールの如くラリーの応酬に翻弄されながらも「見たいモノを見せてくれる」ラストの叫びに俺も「カモ―――ン!!」だったぜ!!
以下、ネタバレします。
リレーションシップ見たいから略奪愛はしたくない。
全体的な流れをザックリ説明したいと思います。
物語は全米オープンへの挑戦権を獲得するため下位の選手たちで争う「チャレンジャーカップ」が舞台。
アートはグランドスラム目前というほどの実力でしたが、スランプに陥ってたりけが明けという情体も重なり別の大会で1回戦負けしてしまうことに。
そこで彼の奥さんでありテニスコーチでもあるゼンデイヤ演じるタシの薦めで大会に参加すると、そこにはかつての親友パトリックが参加しており、見事に勝ち上がった二人は決勝戦で戦うことに。
観客席の真ん中で一人ボールを追わずに2人の顔をじっと眺めるタシ。
そこには10年に及ぶ3人の複雑な関係があった・・・という流れ。
決勝戦での試合で、パトリックとアートが互いにポイントを取っていく過程の中で、3人の過去が挿入される構成になっております。
大学時代ペアを組んで大会に出場していたアートとパトリック。
そんな2人がプレイもルックスも虜になったのが、ジュニアオープン優勝経験を持ち、将来有望とされているテニスプレイヤー、タシ・ダンカン。
ダブルスで優勝越し、翌日互いがシングルで戦う試合を控えておきながらも、彼女が参加するパーティーに参加した二人は、タシに声をかけ意気投合。
その後2人の部屋を訪れたタシは、三人でさらに仲を深めていく。
アートの祖母が見ているからという条件で出来レースをするつもりの2人だったが、試合に勝った方がタシと付き合えるというエサを与えることで、二人は翌日の試合で本気になって戦うことに。
結果パトリックが勝利。
めでたくタシと付き合い、ツアーまで出るほどの実力をつけていったパトリックでしたが、アートと言えばどこか物足りない様子。
タシに「付き合ってるのか」どうかを聞いたりするあたりは、タシへの嫉妬というよりは自分以外に夢中になってるパトリックへの嫉妬を持っているかのような様子。
彼が帰ってくれば笑顔を取り戻す表情を見る限り、そう勘ぐってもおかしくない。
ツアー帰りのパトリックと体を重ねるタシでしたが、テニスの話をしたいタシに対し、男女の関係を強めたいパトリック。
口論はエスカレートし大喧嘩へと発展してしまう。
その直後のタシの試合。
観客席にパトリックはおらず、アートの姿だけ。
タシはこの試合で右ひざを思いっきり捻ってしまい大怪我をすることに。
このケガがきっかけで、タシはテニスプレイヤーの道を断たれてしまい、献身的にサポートをしてくれたアートと結婚、タシは彼のコーチにあり、アートはテニスプレイヤーとして大成していくことになります。
一方のパトリックはというと、チャレンジャー杯の前日の宿代すら払えず車中泊するほどの貧乏プレイヤー。
この大会で出る賞金目当てで、とにかく金が欲しい様子。
宿泊先もマッチングアプリで出会った女性の家に泊めてもらうなど、その日暮らしな感じという計画性もへったくれもないタイプの男になっておりました。
それでもこの大会で優勝すれば全米オープンへの参加権を取れるとあって、まだまだ選手として続けていきたい様子。
そんな彼がマッチングアプリで出会った女性とホテルのバーで談笑していると、そのホテルに泊まっているタシの数年ぶりの再会を果たすことに。
顔を合わせたくなかったタシに対し、再会を喜ぶパトリック。
やがてやや強引に電話番号を渡したり、俺のコーチになってほしいとせがんだりと、執拗にタシに絡む様子が描かれていきます。
嫌がっている様子のタシでしたが、もらった電話番号のメモをしっかりポケットに入れてる辺りが、まんざらでもない様子。
物語は、第1セットをパトリックが制し、第2セットをアートが制し、という具合に拮抗した展開が繰り広げられていきます。
セットごとの試合を見せながら、出会いや仲を深めていく様子、くっついたり離れたり、やがてそれが因縁になっていくなど、3人毎の相手に対する思いや立場、どういう「リレーションシップ」でありたいかを巡っていきながら、テニスの試合のように白熱した恋愛模様が映し出されていくのであります。
そう、本作はダシを巡る三角関係に見せておきながら、本質はそこではないという映画になってるのが無茶苦茶面白いんですよね。
特にタシが言う「略奪愛は嫌」とか、「リレーションシップを大事にしている」という言葉から、タシが二人のテニスの力を向上させる動力源になっているのだけど、彼女が操作していると思いきや、彼女もまた2人に翻弄されている様子が描かれており、如何に「相手との関係」によって、物語が目まぐるしく展開されているかが理解できる作品になっております。
略奪愛は嫌、という発言。
これは僕が思うに、二人の関係を壊すようなことはしたくないという意味に取れるかと。
略奪愛ってのは、好きな人の奥さんまたは旦那さんを奪うって意味合いなんでしょうけど、この場合、パトリックとアートのどちらかを奪うってことになりますよね。
だからタシは、二人が結婚してるかのような固い信頼関係を結んでいると思っており、それを奪うようなことはしたくないって言ってるのではと。
そしてリレーションシップって発言ですけど、試合中相手とどういう試合をしていくか15秒で判断し、そこで最高の試合をすることが一番の理想だと劇中で語っています。
だからアートとパトリックが彼女の試合を見てる時に、「カモ―――ン!!」と叫ぶのは、試合に勝利したことへの喜びではなく、リレーションシップが最高の形にできたことに昇天したからなのではと。
こうした彼女の発言が、後に伏線となり、本作=試合のラストの感動へと繋がっていくんですね。
アートとパトリック
2人の実力を高めるために、イニシアチブを取っていくタシなんですけど、事はそうは旨く行かないってのがこの映画のさらに面白い所。
実際嫌と言っていた略奪愛をしてしまったタシ。
そもそも付き合っていたパトリックは「対等な関係でいたい」と言ってるけど、タシは支配したい様子。(エッチしてる時に上になってましたし)
それがうまくいかなくては曲するんだけど、彼女を求めてるアートは、タシに支配されたい=あなたの望む男になりたいということで結婚まで進んでいくという、どっちが上になるかという関係性が元で選択が別れていく物語になっております。
タシをモノにしたい2人の男、その二人を自由に操りたいタシ。
行ったり来たりな恋愛模様は、タシをテニスボール代わりに怒涛のラリーを繰り返していく。
でも、見てるこっちはアートとパトリックがめちゃめちゃ素敵なカップルにも見えてくる。
もういやらしいほど「棒状のモノ」が劇中に溢れてるんですよ。
試合の休憩中にアートの方を向きながら頬張るバナナ、パーティーの最中タシの踊る姿に夢中になっている2人の手には瓶コーラと瓶サイダー、ツアーから帰ってきたパトリックとの再会を喜びながら口に詰めるチュロス、そして三人で回し飲みするバドワイザーの缶。
もっと言えばラケットを握りしめる2人のグリップを持つ手を映してる辺りも意図的で、こうしたショットが2人の男の奥に秘めた「何か」をメタファーのように見せてるのが非常に印象的な作品でしたね。
例えば、ドラゴンボールの悟空とベジータのように、スラムダンクの桜木と流川のように、どちらが強いかを争う姿って、敵対関係ではあるモノの、相手をうわマるために切磋琢磨しあって、それが相乗効果を呼んで高め合ってるからこそ「ライバル」なわけじゃないですか。
そういう関係が「美しい」と思える瞬間て、スポーツでも勉学でもなんでも当てはまるよなと思うし、何よりそれって性愛を超えた「愛」みたいなものなんじゃないかと。
あくまで性的なメタファーが転がってる作品だったし、パトリックがアートに「マスかき」を教えるとか、男同士であんましそういうの教えるとか「??」だったりするんだけど、親友でテニスプレイヤーのライバル、ってだけの関係ではない、それをタシというファムファタール的キャラクターによって導かれていくっていう流れが、今まで見たことない感覚で新鮮で。
あれだ、セッションって映画あったじゃないですか。
デイミアン・チャゼルの。
あれって教師が生徒をスパルタ指導しながらも歯向かって、いがみ合いながらもラストで高みにたどり着いて互いを認め合って最高の演奏をするって話ですけど、本作はそれをやりながら実はそうなったのは「タシのおかげ」っていう構図だったよなぁと。
とにかく3人が見たいモノを求めながらも、見えてこなかったモノが見えてくるような構成にすることで、ラストシーンは正に「カモ―――ン!!」な感動へと向かっていくのであります。
変態カメラワークと変態音楽
まぁぶっちゃけ変な話であんまし共感はできないけど、映画だから成立する面白さが充満していた本作。
そうさせていたのは、テニスの試合のようにどうなっていくか予想できない物語構成ももちろんですけど、何より普段見ないようなカメラワークとテクノチックな音楽が面白さを掻き立てていたのではないかと。
冒頭、テニスコートを上から撮影したショットが映るんですけど、やや斜めなんですよね。
斜めに撮るとネットとセンターラインが、十字ではなく「×」に見える。そこに2人のテニスプレイヤーが近づいてくることで、誰かVS誰かにも見えるし、誰か×誰か=∞みたいな、物語の結末に繋がるような構図に見える。
そんな解釈ができる本作の試合では、プレイヤーの頭にGoproをつけてるかのようなFPSショットが出てきたり、テニスボールにカメラをつけて映してるようなラリーを見せるんですよね。
こういうの、普通のスポーツ映画だったらあんまり見られないシーンで、ちょっと酔ってしまいそうになるんだけど、凄く新しい映像になってる気がして。
普通そんな風に撮るとか誰も考えねえだろ!とはなるんですけど、そもそも3人の変な三角関係を描いた「変態映画」なわけじゃないですか。
だからこういう変態ショットがあっても、なんもおかしくねえっていうかw
あとはもう、生々しく見えるアートとパトリックの汗ばむ姿ね。
自然光を使ってるんだと思うんですが、こんなに艶めかしくみえるもんかね!?というほど、湿った肌がエロい。
タオル一枚で並ぶサウナでの姿、試合での休憩中、太陽の光によって光る上半身、コートに垂れる汗をスローモーションでたっぷり時間をかけて映す瞬間、しかもそれをしたから映すといういやらしい~ショット。
これが中肉中背のおっさんの汗だと、おえ~ってなりますけど、いい男の引き締まった体から流れる汗は、決して汗臭くない。
そう思えてしまうエロティックなシズル感。
なんてドキドキする映像なんだ…と。
もちろん僕はゼンデイヤのなが~い足と上に上がったヒップにドキドキしましたけどw
こんな変態映像に、トレント・レズナーとアッティカス・ロスが手掛けた音楽が重なることで、心臓のBPMが高まっていくんですよね。
最初はちょっと古臭いテクノミュージックに聞こえがちなんだけど、3人の複雑で淫靡な関係がねちっこくなっていく手助けをしてるように感じて、徐々に音楽と映画がかみ合っていく、なんとも言えない気持ちにさせてくれるんですよね。
最後に
3人がホテルの一室でキスを重ねていきながら、気づいたらアートとパトリックがディープキスしてるっていう光景は、それをしたからにやりとした表情で眺めるタシから、どういう映画になっていくかが見て取れる映画だったと思います。
ただ彼女の思惑通りに行かなくなってくる乱れがあるから、この映画の先が読めない。
きっとハッピーエンドのような結末になるだろうと予測していたものの、高揚感溢れるラストショットだとは予想できず。
切り返しのショットに関しても、距離感で差をつけるようなあまり見ない編集もしてるし、隅から隅までもう一度見てみたい気持ちになりましたね。
終盤でパトリックがサーブをミスったことで、アートが「くそったれ!!」と叫ぶシーンがありましたけど、こういう形で回収するとは思いませんでしたね。
こっからヒートアップしてくラリーはものすごく盛り上がりました。
しかし最終セットまでの過程がちょっとスピードダウンしてしまったのはちょっとマイナスですかね。
それでも全然面白いですけど。
直接的なエロを提供するんでなくて、それを彷彿とさせるエロ差がたっぷりつまった「チャレンジャーズ」。
タシの相手になるべく「挑戦」する映画でもあり、チャレンジャーズという大会に出る選手たちでもあり、そこから3人の性差を超えたバランスの良い関係へと描かれていくのが非常に新鮮でドキドキした映画でした。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10