エルヴィス
今回観賞する作品は、エルヴィス・プレスリーの知られざる真実を描く物語。
音楽映画としても楽しみですが、彼がどんな人生を歩んできたのかという部分も学ぶつもりです。
早速観賞しました!!
作品情報
彼がいなければビートルズもクイーンも存在しなかった—
禁断の音楽「ロック」で世界を変え、数々の偉業を成し遂げるも、若くして命を落とした永遠のスター「エルヴィス・プレスリー」の知られざる伝説の裏側を、「華麗なるギャツビー」、「ムーラン・ルージュ」など音楽映画に定評のあるバズ・ラーマンが手掛けた。
ルイジアナの小さなライブ会場に突如現れたやせっぽちの無名歌手が、そのセンセーショナルなパフォーマンスと歌で次々と若者たちを魅了し、一気にスターダムへと駆けあがっていく。
しかしその衝撃はやがて社会の反発をも生んでいき、エルヴィスを苦しめていく。
「監獄ロック」や「Can't Help Falling In Love」、「ラヴ・ミー・テンダー」など、数々の名曲を世に残したエルヴィスを、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のオースティン・バトラーが見事に熱演。
「同じ歌声をやってみることに目標にした」と語るように、監督からも「エルヴィスそのもの」とまで言わしめるほどの、圧倒的なパフォーマンスを披露する。
また生涯にわたりエルヴィスのマネージャーを務めた悪名高い男トム・パーカーを、「フォレスト・ガンプ」、「ペンタゴン・ペーパーズ」のトム・ハンクスが担当。
これまで見たことない役柄を熱演しています。
第95回アカデミー賞では、作品賞、主演男優賞などにノミネート。
エルヴィス演じたバトラーが絶賛されていることでも注目の1作。
ロックで世界を変えた男の知られざる真実と、熱狂渦巻くパフォーマンスの数々。
音楽映画の歴史に新たなページを刻む本作をご堪能ください。
あらすじ
謎の死を遂げた若きスーパースター
≪伝説≫を誰が殺したのか?
禁断の音楽「ロック」が生まれたライブの日から世界は一変する。
エルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)のセンセーションすぎるパフォーマンスは、若者に熱狂的に愛される一方で、中傷の的になり警察の監視下に置かれる。
型破りに逆境を打ち破る伝説と、その裏側の危険な実話。
そして彼を殺したのは誰なのか?
その真実を知った時、あなたもきっと心を揺さぶられる!(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、バズ・ラーマン。
「ダンシング・ヒーロー」で監督デビューし、シェイクスピアの代表作をレオナルド・ディカプリオ主演でリメイクした「ロミオ+ジュリエット」や、パリのキャバレーを舞台に、踊り子と若き作家の恋模様を、往年のポップスに乗せて描いたミュージカル映画「ムーラン・ルージュ」、フィッツジェラルドの小説を再びディカプリオを主演に迎え製作した「華麗なるギャツビー」などを作った方です。
初期の作品は全然見てないんですが、バズラーマンが作る映画のイメージとしては、鮮やかな配色や花火などで華やかさを演出するのが得意なのかなと。
もちろん音楽面にも長けたお方で、楽曲を使うセンスは抜群だと思います。
Netflixドラマ「ゲット・ダウン」はヒップホップが隆盛していったNYのブロンクス地区を舞台にした青春ドラマで、正直ヒップホップに疎い僕でも思わず「かっこいい!!」と興奮した作品でした。
あまり評価は高くなかったみたいですが、もしかしたら監督作品の中で一番好きかもしれません。
そんな音楽映画に長けた監督が「エルヴィス」を製作したのですから、きっとおなじみの演出と熱狂的なパフォーマンス、楽曲をうまく挟み込んだ作品になってそうです。
キャスト
主人公エルヴィス・プレスリーを演じるのは、オースティン・バトラー。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でマンソンファミリーの一員として出演したバトラー。
まさかエルヴィスプレスリーを演じるとは全く予想がつきませんでしたね。
まず予告編を見て驚いたのはエルヴィスの再現度の高さです。
顔が超似てるし!
プレスリーの娘さんであるリサ・マリー・プレスリーからもお墨付きをもらうほどですからよっぽどなんでしょうね。
楽曲を熱唱するリハーサル映像では、監督にエルヴィスと紹介された時の恐怖と緊張にさいなまれたエピソードや、それを乗り越えたことで圧倒的なパフォーマンスを披露できたことへの喜びを語ってます。
それもそのはず、今回ほぼ吹替なしで偉大なアーティストの歌唱とダンスを演じたわけですからプレッシャーは計り知れません。
一体どこまで寄せた演技なのか。
既にアカデミー賞の呼び声も高い彼の熱演を堪能したいと思います。
他のキャストはこんな感じ。
エルヴィスのマネージャー、トム・パーカー役に、「フォレスト・ガンプ」、「この茫漠たる荒野で」のトム・ハンクス。
エルヴィスの妻となるプリシラ役に、「ヴィジット」のオリヴィア・デヨング。
B.B.キング役に、「WAVES/ウェイブス」、「シカゴ7裁判」のケルヴィン・ハリソン・Jr.。
ジミー・ロジャース・スノウ役に、「X-MEN/ダーク・フェニックス」、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のコディ・スミット=マクフィー。
スティーヴ・ビンダー役に、「パワーレンジャー」、Netflixドラマ「ストレンジャー・シングス」のテイカー・モンゴメリーなどが出演します。
「ボヘミアン・ラプソディ」に続くメガヒット音楽映画になるのでしょうか。
観賞する前に彼の名曲をヘビロテして臨みましょう!!
ここから観賞後の感想です!!
感想
#エルヴィス 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年7月1日
伝説のスーパースターの成功、挫折、そして復活を、バズラーマンらしくパワフルかつ華やかに描いた力作。
大佐め…。 pic.twitter.com/gGKjzbEXiI
伝説のスーパースターの栄枯盛衰。
言われるがままにスター街道を歩んだ男の煌びやかさと儚さを、ダイジェスト感はありつつも絶妙なバランスで描いたバズ・ラーマンの手腕は見事。
トム・ハンクスがまた巧いんだ!
以下、ネタバレします。
エルヴィス入門編。
なぜメンフィスの田舎者が世界を虜にし社会をも騒然とさせたのかを、マネージャーを務めたトム大佐の視点で描いた伝記的音楽映画は、彼の音楽のルーツや政治屋に疎まれた理由、俳優としての失敗、そして原点へ帰るまでを走馬灯のように駆け足で描きつつ、エルヴィスたらしめるものは何かをちゃんと理解している監督の構成によって「音楽」で圧倒させた力作でございました。
僕は本当にエルヴィス・プレスリーという存在をよく知らず、有名な歌がある程度の知識しか持ちあわせてなかったものだから、本作を見て「そんな歴史だったんだ!すげえ!」っていうのが全体的な感想です。
知ってる曲がかかれば自然と体が乗るし、知らない歌を聞けば「今度聞いてみよう」、そしてそんな曲がどうしてどうやって生まれたのかという理由が彼が幼少期に住んだ環境からだったということなど、「ミュージシャン」エルヴィスのルーツを知る絶好の機会だったなと。
キャッチコピーでも書かれてた通り、彼がいなければビートルズも生まれてなかったし、彼の絶頂期が遠ざかれば世間の注目はビートルズに向かい、ジャクソン5に向かうってのもアメリカの音楽史的になるほどだったなと。
それでも末期はラスベガスのホテルでファンに懸命に愛を注いで歌いきる姿は、本物のミュージシャンで、ラストの「アンチェインド・メロディ」はマジで感動しました。
やはりマイケル・ジャクソンもそうだったように、あれだけのファンを相手にパフォーマンスをすれば心も体も蝕んでいくよなぁ。
今健在の日本のミュージシャンも海外の人もそうだけど、よく平静を保って新曲作れるよなぁと。
一応自分も音楽やってた身でして、こういう音楽映画を見るともろに影響を受けてしまいがちなんですけど、やっぱり時代を席巻したアーティストは、貧しかったとはいえ音楽的に恵まれた環境下で育ったんだなぁと。
当時黒人を人間扱いしないアメリカってこともあって、黒人の多いメンフィスの白人専用街で育つんだけど、同い年の黒人たちと遊んだりしながらR&Bに触れるってシーンは本作の中でもかなり印象的。
神父たちによる集い勝手に紛れ込んだエルヴィスが、黒人音楽に触れた瞬間雷に打たれたように目を白くしてく姿や、それを見た神父が「彼に神が舞い降りた」ってセリフに重ねるかのように、青年期や晩年期のエルヴィスに重ねていく演出は見事でしたね。
カントリーウエスタンとR&Bが融合した音楽を世に知らしめたのが彼の一番の功績だと思うんですが、そんな瞬間を映画で堪能できたのは今回一番の収穫でしたね。
また腰を振って踊りながら歌うパフォーマンスですが、すごいですね。
またマイケルジャクソンを引き合いにしますけど、向こうのファンて興奮し過ぎて失神しちゃう姿をよく見かけるじゃないですか。
日本のファンもそういう人いるのかもしれないけど、興奮のレベルが全然違うというか。
本作で描かれるエルヴィスのオーディエンスも半端なくて、エルヴィスが腰を振り出すや否や思わず声が漏れちゃうんですよ、女の子たちが。
「いやぁっ!!」ってw
で、段々いてもたってもいられなくなって席を立ってさらに声を挙げるという。
気が付けば最前列まで行って彼に触りたくて触れたくて仕方ないっていう。
男性客からは細身の体に化粧した姿をバカにされてたけど、女性客はもう夢中なんですよね。
トム大佐のナレーション曰く「今楽しいのかそうでないのか迷ってしまうような感覚に陥るようなエンタメがウケる」みたいなこと言ってたんですけど、確かにエルヴィスのパフォーマンスは当時衝撃だったんでしょうね。
そもそも彼が歌う前はただただカントリーウエスタンを突っ立って歌うだけのミュージシャンだけでしたし、そりゃ警察や政治家も「けしからん!」とか言いますわw
この腰を振るパフォーマンスですけど、僕も運よくMr.childrenのライブに前から3列目で見られるという機会がありまして。
桜井さんのパフォーマンスって岡村靖幸の影響をすごく受けててとにかく動くんですけど、今回近くで見て新たに発見したことがあって。
彼も腰をすご~く回すんですよ。
何回転も激しく。
その姿をを見た近くの女性ファンがめちゃめちゃはしゃぐんですよ。
歌唱部分よりも、腰を回す時にはしゃぐんです。
飛び跳ねるんです。
やっぱこういうパフォーマンスってセクシーなんだなと。
エルヴィスの方が腰を振る速さがあったので、よほどセクシーなんでしょうね。
速さが肝かどうかは知りませんけどw
話を戻すとして、こんなパフォーマンスじゃそりゃPTAもうるさいよなぁ…娘を持つお父さんも顔をしかめるよなぁと。
また当時は南部での人種差別は徹底されてましたから、彼のように白人のくせに黒人音楽をやるってのはアウトなわけで、さらにあの腰の動きですからなおさらです。
いつの時代も異端児は叩かれるんですね~。
でも1万人を集めた慈善コンサートで、あれだけトム大佐におとなしくしろと言われたのにやってのけるパフォーマンスは圧巻でしたね。
一応前日に燕尾服を着てコントじみたパフォーマンスをさせられた反動もあったと思いますが、やっぱり「僕が僕であるために」貫かないくてはいけないこともあるってことですよ。
例えデカい権力が潰しにかかってきたとしても。
その反発こそロックだよなぁと。
ちなみにエルヴィスのパフォーマンスですけど、あれだけ踊ることもあって顔中汗だらけなんですよ。
よく化粧落ちないなぁって思うんですけど、整えたリーゼントが崩れていくのもまたセクシーで、腰を全反りしてシャウトしたり、スタンドマイクを右へ左へ持ち替えて腰をクネクネさせる姿はマジでカッコイイです。
楽曲も「バウンドドッグ」に「ハートブレイクホテル」、奥様となるプリシラとの絡みでは「好きにならずにいられない」がひたすらかかり、メドレーのシーンでも「監獄ロック」がかかるなど、一度は聞いたことあるナンバーが目白押し。
晩年期でのホテルでのディナーショーでは「サスピシャス・マインド」を熱唱し、ラストは立って歌えない中「アンチェインド・メロディ」を大熱唱する姿など、どれも秀逸。
というか完コピ。
バズ・ラーマンらしいのが、彼の楽曲をめちゃめちゃアレンジした曲を流したり、劇伴とマッシュアップした曲を流したり、終いには別のアーティストに歌わせたりと、様々な工夫をしていたのが、彼の映画らしいというか。
個人的にはそんな小細工はいいから、全編エルヴィスの歌う歌で統一してほしかったのはありますけど、これはこれで絢爛さを演出できたのかなと。
トム大佐の物語でもある
エルヴィスの物語を描いた作品ではありますが、あくまで視点は彼を発掘したマネージャー、トム・パーカーの視点。
彼が病に倒れ死期を意識したところからエルヴィスを見つけた当時を回想していくというのが物語の始まりでしたが、如何に彼がギャンブル狂いで、金に汚くて、音楽に興味がなっくて、金を稼ぐプロモーターとして一流であったかを見せる映画でもありましたね。
途中でも書きましたけど、過去に見世物小屋で働いてた経験から、客を喜ばせる一番の秘訣は「面白いのだけどどうしていいかわからない感覚に陥るとエンタメは成功する」みたいなことを言っていて、正にエルヴィスはそのパターンにハマったわけであります。
熱狂する女性ファンを見たエルヴィスのお母さんは、酒におぼれてしまうほどの心配性のため、息子がヤバい世界に行ってしまうのではないかとガチで心配してしまう。
しかもお父さんは金の未払いで一度刑務所に入っていることから、トム大佐は「だったら家族で会社作っちゃえばいい」と言いくるめて、彼のネクストステージへの許しを頂くんですね。
もうこの辺りからペテン師・トム大佐が片鱗が見えてくるんですよ。
あまりの過激さゆえに警察や政治家にマークされてしまったエルヴィス。
トムは彼らに呼ばれ、色々脅されてしまうんですね。
でもその矛先はトム自身にも向けられていくわけです。
お前の素性をばらすぞと。
トム・パーカーは実はオランダからやってきた移民だったんですね。
だからトムは警察の言うことを聞かなくてはいけない事態になり、それをエルヴィスにも押し付けていくわけです。
でもエルヴィスは反発してパフォーマンスをし、逮捕か徴兵されるかどっちかを選ばなくてはならない事態になってしまう。
しかもこのタイミングでお母さんが逝去。
トム大佐はとうとう家に居座るまでになっていくんです。
この後もカジノで使った金をチャラにするためにエルヴィスのコンサートを独断で5年契約させてしまったり、自分がパスポートを作れないことを隠し、海外ツアーには莫大な経費が掛かるとか殺害予告を引き合いに海外は危ないから警備が必要で、それにもお金がかかると嘘を吹き込んでエルヴィスを言いくるめていく、超ペテン野郎だったんですね。
ただ本作がエルヴィスなわけです。
それでも彼をマネージャーとして雇うエルヴィスにも責任があるわけですよ。
基本的にはトム大佐のおかげで売れたという恩義があり、彼の言うことに影響を受けやすい傾向にありました。
また金銭面に疎く、親父が会社を経営してたこともあって関心もなかった様子。
知らない間に自分の収入がトム大佐ときっちり折半だったことを後から知って激昂したりしてましたが、時すでに遅しでしたし。
それこそビンダーが介入してきた辺りで、セルフマネンジメントとかすれば状況も変わったのになぁと。
最後に
結局エルヴィスは誰に殺されたのか。
マスメディアなのか、社会なのか、それとも薬なのか、トム大佐なのか。
映画では「愛」に殺されたとして締めくくられます。
ファンへの愛のために身を滅ぼしていったと。
愛を注ぐあまり、体も心も酷使したってことからなんでしょうか。
スター故の宿命なのかなぁ。
俺はどう考えても大佐としか思えないんですけどw
出来る事ならエルヴィスの視点で物語を描いてほしかったという希望もありましたが、スターの表と裏あっての伝記映画だったなと。
しかしバズ・ラーマンの演出はすごかったなぁ。
2時間40分て長尺なのに全然飽きない工夫。
それこそ序盤なんか回想シーンに回想挟んで、しかもめちゃんこテンポはやめで描いちゃうんだけどすごく分かりやすい。
ヤバい奴がいるって会場に向かうと後ろ姿のエルヴィスが立っていて、そこからさらに彼の幼少期に話が移行するややこしさを凄くスマートに見せてましたからね。
またトム大佐を演じたトム・ハンクスの演技が最高。
彼は基本いいひとを演じてばかりのイメージでしたが、こういう悪名高く金に執着する奴を演じるのも巧いなと。
マジで憎たらしい奴でしたからw
オースティン・バトラーもエルヴィスに寄せた歌やパフォーマンスでしたし、お芝居も良かったんじゃないでしょうか。
でも晩年はもっと太って演じた方がリアルだったかなぁ。
そこは彼のせいじゃないかw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10