モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「マイエレメント」感想ネタバレあり解説 あなたがいて、わたしになる。

マイ・エレメント

2023年、ディズニーは創立100周年を記念して様々なイベントやグッズを展開しており、ファンにとってはどれも参加したり購入したいと思わせる内容になってるのですが、こと映画のラインナップに関して言えば、「100周年でこんなもん?」と少々さみしい作品群になってます。

 

既に公開した作品で言うと、「インディジョーンズと運命のダイヤル」、「リトルマーメイド」があり、9月には「ホーンテッドマンション」、冬には「ウィッシュ」というオリジナルアニメーション映画が控えてますが、実写は既存のものやリメイクや続編という乏しいアイディアなんですよね。

 

アニメーションに関して言えば、まだキャリアの少ないクリエイターを監督に起用し、いつもながらのエンタメ要素や多様性を意識した内容で素晴らしいのですが、突き抜ける面白さが見えない。

 

北米興行収入が惨敗続きなのも、「いつも通りのディズニー」な作品群や内容から客離れしているのかもしれません。

ぶっちゃけ45日待てばディズニープラスで見れちゃうわけですし。

 

とはいえこの「マイエレメント」、今回最速試写で観賞したんですが、ベタで王道だった故に悪くない仕上がりでした。

いったいどんな物語なのか、解説含め感想を語りたいと思います。

 

 

作品情報

トイ・ストーリー』の“おもちゃの世界”、『モンスターズ・インク』の“モンスターの世界”、『ファインディング・ニモ』の“海の中の世界”、『インサイド・ヘッド』の“頭の中の世界”、『リメンバー・ミー』の“死者の世界”など、ユニークでイマジネーションあふれる[もしもの世界]を舞台に数々の感動的な物語を観客に贈り届けてきたディズニー&ピクサーの最新作。

 

 火・水・土・風のエレメント(元素)が共に暮らす都市エレメント・シティを舞台に、要素が全く正反対な二人の男女が出会い、奇跡の化学反応を起こしていく物語。

 

身体は大きいのに弱虫な恐竜アーロと、小さくてもたくましい少年スポットの友情を描いた「アーロと少年」の監督を務めたピーター・ソーンが、亡き両親への思いを含ませながら、違いを受け入れることで互いをより理解し、愛し合えることができる人間のすばらしさを、ディズニーらしい遊び心ある豊富なアイディアを用いながら作り上げた。

 

主演のエンバーの声を「ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから」での演技が印象的だったリア・ルイスが、ウェイドの声を「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」のママドゥ・アティエが担当した。

 

様々な動物が住む街「ズートピア」や、感情を擬人化させた「インサイド・ヘッド」を彷彿とさせる「4元素の民族たちを描いた」本作。

その気になれば互いを消せる要素の二人が、家族をも巻き込んでの物語を生み出す。

 

 

 

マイ・エレメント

マイ・エレメント

  • Walt Disney Records
Amazon

 

あらすじ

 

火、水、土、風のエレメントたちが暮らすエレメント・シティ。

家族のために火の街から出ることなく父の店を継ぐ夢に向かって頑張っていた火の女の子エンバー(CV:リア・ルイス/川口春奈)は、ある日偶然、自分とは正反対で自由な心を持つ水の青年ウェイド(CV:ママドゥ・アティエ/玉森裕太)と出会う。

 

ウェイドとの交流を通して、初めて世界の広さに触れたエンバーは、自分の新たな可能性、本当にやりたいことについて考え始める。

 

火の世界の外に憧れを抱きはじめたエンバーだったが、エレメント・シティには「違うエレメントとは関わらない」というルールがあった…(映画.comより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

他人種を「エレメント」として描きながら、交わることのなかった2人が思いを巡らせていく、ステキなラブストーリーとして捉えました。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

移民2世の物語。

火のエレメント「エンバー」と水のエレメント「ウェイド」を中心に、4つの要素が暮らす街で起きる災害や、移民として苦労を重ねた両親の姿を知る余り、自分のやりたいことを犠牲にしてしまうエンバーの葛藤、そんな彼女を励ましながら距離を縮めていくウェイドとの恋の行方も織り交ぜた、あまりにもベタだけどこういうのってええやん泣けるやん、な王道作品でございました。

 

本年度アカデミー賞作品賞作品賞を受賞した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」では、ミシェル・ヨー演じる主人公が、移民2世である娘を受け入れ理解していく「親目線」で描かれた手法が新しいと評価されましたが、本作は「親に理解してほしい娘」というエブエブとは逆の、寧ろ既存の作品でもよくあるパターンの内容だったと思います。

 

監督の子供の頃を反映させた映画であることがインタビュー等で明かされてる事から、本作は「移民2世」の物語に結び付けることは容易であり、舞台となっている「エレメンタル・シティ」もアメリカの都市部を意識したモノと言えるでしょう。

 

冒頭ではエンバーの両親であるバーニーとシンダーが、新たな希望を求めエレメンタルシティにやってくるところが映し出されます。

拙い英語でしかコミュニケーションが取れないことや、それが中々聞き取られない状況、火のエレメントのため何でも燃やしかねないことから物件探しが困難になるなど、初めての街での苦労と、それを乗り越えてコミュニティを作り出していく姿が描かれています。

 

また、エレメンタル・シティは、水で動く電車を始め、水のエレメントが住みやすい環境になっており、水に弱い火のエレメントたちは、常に命の危険に晒されたり、彼らに配慮して行動しなくてはならないなど、生きにくい環境であることが映し出されています。

 

しかも大きなイベントにも入場できないという差別的な行為を受けるなど、火のエレメントたちは、水の要素の人種に対して敵対心を持っているという背景があります。

 

そんな両親を見て育ったエンバーもまた、水のエレメントを毛嫌いしており、自分たちのコミュニティから外に出なかったり、彼らと関わらないような暮らしをしているのであります。

 

 

そんな中、地下室の水道管が破裂。

流れた水と共にやってきた水道検査官のウェイドと出会うわけであります。

 

恐らくですが、火のエレメントはアジア系の移民で貧困層を意識したキャラ設定で、水のエレメントは白人や富裕層を意識したキャラになっているかと思います。

だから街はアジア系よりも先に住んでいた白人らのための町づくりになってるし、そんな街ではアジア系は生きにくい、だから自分たちのコミュニティを作っていった、そんな背景が透けて見える作品だったのではと。

 

しかし、火と水というどちらも触れたら死ぬレベルの人たちが、どうやったら仲良く暮らすことができるのかって、普通に考えたら無理ですよね・・・。

火は水かけられたら死ぬし、水は熱で蒸発しちゃうし、木は火がついたら燃えちゃうし、風は…生きていけるのか?ww

 

とにかく本作は、他の要素の違いを差別として捉えたり見下すという行為で分断するのではなく、違う要素同士が補い合うことが大事だってことを描いたお話に留めており、クソまじめにジャンケン方式で「○○は○○に弱いから無理」みたいな考えで見てしまうのはダメってことですw

 

人間をエレメントに置き換えたことで「交われない」「交わらない」という線引きをしたわけなので、実際は全然一緒に暮らしていけるんだけどね。

 

 

またエンバーは、両親が毛嫌いする水のエレメントと仲良くしていることや、彼のおかげで見つけた「やってみたいこと」などを、どう説得するかがクライマックスで描かれてるんですよね。

そのお願いを聞いた両親、特に父親は大反対するんだけど、かつて自分たちが国を出てこのエレメンタルシティへ行く時の思いと重なっていくんですよね。

 

自分たちは国を捨てたレッテルを貼られたせいで、決していい形で海を渡ることができなかった。

その繰り返しをしていいのか、って問いをしていくわけです。

 

その話を知っていたエンバーが、両親が渡航した時にした行為と同じことをラストでするんですよね。

これが泣けるんだ…。

 

凄く飛ばして話を語ってるんですが、最初に語った通り「親に理解を得ようとする娘」を描いた物語であり、アジア系移民、そして移民2世がどのようにしてアメリカという国で暮らし、葛藤しながらも家族を形成していってるのかを描いたお話だったということです。

 

 

もちろん異なるエレメントがどのようにして相互理解していくかを中心に描いたお話ではあるんですが、火のエレメント=アジア系移民という設定故に、この部分を語らずにはいられない物語だったというわけです。

 

 

恋の行方に関してはもうベタですw

せっかちなエンバーとおっとりなウェイド、すぐ怒るエンバーとすぐ泣くウェイドと性格も異なったものになってるんだけど、これまで決めつけで嫌っていた水のエレメントたちの「優しさ」を知り、徐々に素直になり、やがてそれが好意に変わっていくことで前へ進んでいくエンバーの成長譚でもあり、ウェイドと出会ったことで自分が秘めていた才能を開花させ、それが「やりたいこと」として目覚めていくお話でもあります。

 

そんな2人を急接近させていくハプニングが、違法建築と見做された実家の雑貨店を救うために水漏れの原因を2人で探る調査。

 

その原因を二人で解決しながら距離が縮まり、交わることのなかった2人の初めての共同作業であり、全く違う要素でもこういう形で協力し合える発見であったり、怒りをコントロール出来たり、終いには涙を流せるようにもなったりと、私が変われたのはウェイドのおかげです!という具合になっていくのであります。

 

もうほんとベタです。

見たことある話です。

それでいいと思うんです。

だからこの作品に意外性はありません。

 

良く映画を見てる人ならきっと物足りないという人もいるでしょう。

だって洋画でよく見る「他人種間」の話だし、視点が逆になったエブエブだし、いがみ合った人種が実は共存できるんだっていうハッピーエンドの話だし。

 

でもそれでいいと思うんです、ディズニーって。

誰でもわかりやすいプロットの中に、ディズニーらしい遊び心があって、大作映画のようなアクションやハプニングがあって、美しいドラマがある。

そしてこれからを生きる子どもたちにも伝えたいテーマがある。

これでいいんですよ、ディズニーって。

 

アイディアは良かったと思う。

もうね、正直これといって特筆するようなことがないんですよw

アジア系移民と2世の話くらい、言いたいのは。

 

それでもディズニーアニメですから、キャラクターや世界観の構築ってのはホントユーモアがあふれてて楽しいんですよね。

 

エンバーをはじめとする火のエレメントたちは、可燃性のものを摂取して生活してる描写がありましたね。

確か泣き止まない赤ちゃんには、ミルクでなくてジッポライターとかに入れるオイル飲ませてましたからねw

他にも両親が経営する雑貨店ではレジ前にりんご飴みたいな感覚で棒に刺さった石炭が売られてましたねw

 

こういう小ネタをいろんな個所に仕掛けるあたりがディズニーらしいし、人間ではないものの、普段の我々と何ら変わらない過ごし方を見せることで親近感を持たせる工夫もしてるんですな。

 

また、エンバーは火を使う人種ってことで、いろんな特技を見せてくれるんですよね。

それこそ彼女の今後を左右する特技なんですけど、ガラスを作れるわけですよ。

 

水漏れの原因を探ると、海に近い堤防に割れ目が入っていて、船が通るたびに水が入ってきてしまうことが判明。

それを防ぐために、エンバーは分厚いガラスを作ってヒビに張り付けていくんですね。

 

海辺でウェイドと夕日を眺めているシーンでは、砂を使ってガラスアートを作る技を披露。

これを見たウェイドが自分の家族を紹介し、ガラスアーティストとしての才能を仕事に敷かすよう促していくんですね。

 

他にもエンバーは自分で煙を吐き出すことも可能で、屋上の景色に喜ぶ子供たちの前で煙で顔を作ってあげてました。

色のついたクリスタルに触れれば、体と同化して色鮮やかなエンバーに変身できるという技も見せてましたね。

これに感銘を受けたウェイドが水上を走って虹を作って見せたシーンは印象的です。

 

気球で飛ぶために自分の熱を利用するってのもユニークでしたね。

 

ただ火のエレメントにも弱点が。

ウェイドと証明写真と取ると、体から放たれる明かりのせいで反射してちゃんと映らないというハプニングが。

また映画館でのデートでも、唯一眩しいためフードを被らないと他のお客さんに迷惑をかけてしまう。

電車やエレベーターなどの狭い場所でも不利。

熱を持っているせいで、木のエレメントは燃やしてしまうし、水のエレメントの体温はどんどん上昇して沸騰寸前にさせてしまうんですね。

 

火のエレメントたちは同じ街で暮らすには迷惑をかけすぎるし、迷惑だと思われてしまうのも無理はないです。

だからこそ自分たちの地域が必要だったんですね。

 

では、火だけが加害性があるかと言ったらそうでもない。

それこそウェイドら水のエレメントらが生息する場所は、エンバーにとっては常に命の危険がある場所。

なんてたって水を被ったら死んでしまうんですから。

 

だからこそウェイドは最大限の配慮を彼女のためにするんですよね。

優しい男として映るもんだから効果的。

自分が傘になって水の導線を変えたりできるわけですから。

 

 

最後に

とにかくエンバーとウェイドが共に行動するたびに、これまで体験できなかった光景や景色に触れる一方で、やっぱり懸念していた「うまくいかない部分」も露呈してしまうという映像が多々映し出されるんですよね。

 

あくまで真逆の要素である二人を描いた物語だけど、それは人間にもあり得ること。

人種がどうとか国がどうとか文化がどうとかもそうだけど、性格でもよくあるじゃないですか。

一緒にいていいところとよくないところがある、だからそれを「どう捉えるか」「どう見るか」なんですよね。

 

 

しかし、「4つのエレメント」が住む街で、ほとんど火と水しか交わらないのは、物語として工夫が少ないというか。

一応風のエレメントであるウェイドの上司や、エンバーと仲良くなりたい木のエレメントの子供が登場しますけど、もっと深く関わってほしかったなぁと。

 

そういう意味ではズートピアって巧くできてたなぁと思うわけですよ。

キャラとして見せ場だったりピーパーソンになったりってあったあけですから。

 

あとはもう「置きに行った」話にしすぎなのも勿体ないなぁと。

まぁ優等生のディズニーなんで仕方ないんでしょうけど、「この手があったか!」みたいなサプライズや発見、発明みたいなものは見えなかったのは残念ですね。

 

とはいうものの、心を動かすような構成の物語になってるのは高く評価したいです。

45日待って配信で見てもこの感動は受け取れるとは思いますが、できることなら劇場で堪能してほしいですね。

というわけで以上!あざっした!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10