モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ナイトメア・アリー」感想ネタバレあり解説 気が付けば僕らが見世物小屋の客になってる。

ナイトメア・アリー

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みんなが大好きな「グレイテスト・ショーマン」。

奇形な人たちを集めてショーを手掛けてきた主人公バーナムの成功と転落、再生を描いたミュージカル映画でしたね。

 

みなこぞって「This is me」を聴きまくったと思いますが、正直ボクはそこまで好きではありません。

バーナムという男を美化しすぎてる気がしたからです。

結局彼は劇中で雇った人たちを見下して改心してませんからね。

 

興行師になるために卑下した人たちを集め、見世物小屋を作って金を稼ぐ。

その昔「モスラVSゴジラ」でもモスラの卵を見世物にしたせいで怒りを買うわけです。

 

現代ではこうした見世物系のイベントはないとは思いますが、かつて「グレイテスト・ショーマン」のような時代があったということです。

 

今回観賞するのは、野心溢れる主人公が読唇術を使って興行師として成功を果たすが、想像を絶する闇にを見ることになるというサスペンススリラー。

 

アメリカンドリームの闇を見せるという映画だそうですが、どんな映画なんでしょうか。

早速観賞してまいりました!

 

 

作品情報

シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞作品賞をお受賞したギレルモ・デル・トロ監督が、ウィリアム・リンゼイ・グレシャム原作小説で、1947年にエドマンド・グルーディング監督によって製作された「悪魔の住く街」を独自の世界観で描くサスペンス・スリラー。

 

ショービジネスでの成功を夢見て、そのカリスマ性と読心術を武器に成功の階段を駆け上がる主人公が、富や名声に目がくらみ、さらなる野望の先で人間の闇に触れていく姿を描く。

 

第94回アカデミー賞で作品賞含む4部門にノミネートされた本作。

「シェイプ・オブ・ウォーター」、「パンズ・ラビリンス」、そして「クリムゾン・ピーク」など、幻想的でありながら悪夢的要素を持ち合わせた作品が得意のデル・トロ監督が、今回初めてのノワールモノに挑んだ。

 

1940年代のアメリカの都市部と移動遊園地を舞台に、異世界感と摩訶不思議な空間で酔わせながらも、1人の男が操る獣人を見せながら人間の内部に潜む怪物性に踏み込んでいくことで、観る者に圧倒的なインパクトを与える。

 

本当におぞましいのは、人間なのかモンスターなのかわからない獣人なのか、それとも彼を操る人間なのか。

是非その目で確かめてほしい。

 

 

 

 

あらすじ

 

ショービジネスでの成功を夢見る野心溢れる青年スタン(ブラッドリー・クーパー)がたどり着いたのは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座。

 

そこで読唇術の技を身につけたスタンは、人を惹きつける才能と天性のカリスマ性を武器にトップの興行師(ショーマン)となるが、その先には想像もつかない闇が待ち受けていた。(HPより抜粋)

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監督

本作を手掛けるのは、ギレルモ・デル・トロ。

 

なんで「パシフィック・リム」の続編を監督してくれなかったんですか!

…という愚痴はぐっとこらえてw

 

怪獣やクリーチャーをこよなく愛する彼の物語は、いつだって悍ましさと悲哀が合わさった切ない物語だったりします。

そんな彼が今回ロン・パールマンから薦められた原作小説に感激し、映画化にこぎつけたそうです。

 

初めて手掛けるモダン・ノワール・スリラーですが、予告編を見る限り毎度おなじみのダークファンタジー感を漂わせてます。

アカデミー賞で美術賞や撮影賞にもノミネートされてる通り芸術的世界は一級品なので、一気に世界観に浸れることでしょう。

 

そして人間の内部を追求していくわけですが、何故興行師を主人公した作品にしたのかも気になります。

 

 

キャスト

主人公スタントン・カーライルを演じるのは、ブラッドリー・クーパー。

 

ハング・オーバー」でブレイクして以降、アカデミー賞常連俳優になり映画監督でも大成功してしまう、しかもイケメン!!

もう敵いませんw(そもそも挑もうとしてないw)

 

今回デル・トロ監督と初タッグ。

読唇術を身に着け興行師として大成していく役柄ですが、3人の女相手に様々な表情で惹きつけていきます。

 

彼のお芝居のいいところは目で語るのが巧いなぁと思ってます。

鬱な役も狂ってる役も見事に演じるし好青年も巧くできちゃう。

そんな彼が、内面に宿る闇や暗部をどう表現していくのか。

新たな一面も垣間見えそうで楽しみです。

 

彼の作品はこちらもどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

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他のキャストはこんな感じ。

リリス・リッター博士役に、「ドント・ルック・アップ」、「キャロル」のケイト・ブランシェット

ジーナ・クランバイン役に、「へレディタリー継承」、「ナイブズ・アウト」のトニ・コレット

クレム・ホートリー役に、「ジョン・ウィック」、「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」のウィレム・デフォー

エズラ・グリンドル役に、「シェイプ・オブ・ウォーター」、「扉をたたく人」のリチャード・ジェンキンス

モリー・ケイヒル役に、「キャロル」、「ア・ゴースト・ストーリー」のルーニー・マーラ

ブルーノ役に、「パシフィック・リム」、「ヘルボーイ」のロン・パールマン。

フェリシア・キンボール役に、「メルビンとハワード」、「インランド・エンパイア」のメアリー・スティーンバージェンなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

実はどんな物語になっていくのか全然想像がついてませんw

「パンズ・ラビリンス」のようなオチなのか、それとももっとグサッと刺さるラストなのか。

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

デルトロがついに人間をクリーチャーにしちゃった。

見世物小屋からのし上がった男の顛末に思わずゾクっとしたサスペンススリラーでした!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

神の気持ちになった男

第二次世界大戦前のアメリカを舞台に、家と父を捨て大成しようと移動遊園地に赴いた男が「嘘」でのし上がっていく成功と衰退までの物語を、ひたすら雨が降りしきる暗い街で煌々と光るネオンサインがまるで主人公の心を見せているかのようなコントラストで雰囲気を作り、美しくも怪しく見せていく舞台に目を奪われながらも、「人間か獣か」ではなく「何が人間を獣にさせるか」を紐解いていく150分を堪能できた作品でございました。

 

悪夢小路。なるほど、こうやって人間は墜ちていくのだなという過程を丁寧に炙り出した作品だったと思います。

 

ザックリ言えば、移動遊園地で色々技術を習得、時に残酷なやり口もやったけど、モリ―をモノにしていざ都市部で大成功。

しかし彼の本性を見抜く心理学博士と手を組んだことで踏み込んではいけない領域まで行ってしまい、周囲の助言にも耳を傾けず墜ちるところまで墜ちていく、そんな物語でした。

 

1つ嘘を付けば、その嘘を隠すためにもう一つ嘘をつかなくてはならない。

気が付くと周りのモノすべてが嘘で塗り固められ、何が真実で何が嘘が見境がつかなくなっていく。

人を楽しませるのが興行師の宿命とはいえ、人に希望を与えるのが見世物師の仕事とはいえ、一線を越えてはいけない。

 

確かにトリックを成功させ、拍手喝さいを浴びれば勘違いだってするだろう。

これが俺の実力だ、誰も俺を止められない、全ての人の上に立ったなどと慢心してしまうのも無理はない。

だから「もっと、もっと」と求めてしまう。

飲まなかった酒にも手を出してしまう。

 

注目も浴びたかっただろう。

母親に逃げられて酒を煽ってばかりの親父を反面教師にして成功したかったのだろう。

しかしキャパシティを見誤っていた。

 

あの程度のトリックなら移動遊園地の見世物小屋で済ませておけばよかったかもしれない。

ミュージシャンで例えるなら、所詮ライブハウス止まりの実力なのに東京ドームでライブしちゃって客の入りが割に合わず閑古鳥状態といったところか。

 

読心術トリックで留めておけばよかったものを、禁断の「幽霊ショー」を使ってしまったことで、さらに勘違いをしていく。

 

野心とは人をどこまで狂わせるのか。

 

劇中ではトリックだけでのし上がっていくスタンの前に、心理学という専門的知識を持つ女性が現れ対峙していくわけですが、そこにまで対等に張り合うスタンの姿を見て、これはもう後戻りはできないところまで来ちゃってるんだなと。

この後の末路が怖いなぁと思いながら見入ってました。

 

デルトロ作品の中では異質

移動遊園地ではウィレム・デフォー演じるクレムが酒浸りな男を捕まえ「獣人」と称して見世物小屋で披露するシーンがあります。

 

「彼は人か獣か、一流の科学者に人間と断定された彼は、一体どこから来たのか 我々と同じ生を受けて 一体どこで間違えたのか こいつは獣か?それとも人間か?」

などと口上をし、観客にショーを見せていくのであります。

 

これ要はクレムは監督で、獣人はブラッドリー・クーパー演じるスタンで、観客は我々なんですよね。

 

そう僕らは映画館という見世物小屋で獣人を見ていた構造になってるわけですよ。

しかもこの口上によって、我々はスタンという男が人間なのか獣なのかを見極めることになるという円環構造にもなっている。

 

正に金のためだけを見据えて成り上がるとこういうことになっちゃうよというアメリカンドリームの闇であり、またなぜ彼が一線を越えてまでのし上がろうとしたのかにも言及している。

 

普段のデルトロ監督なら、見た目バケモンみたいなキャラクターを登場させ、ルッキズムという外見至上主義に一石を投じるような問題を投げかけながら、悲哀だけでない喜びも見せていたと思うんです。

 

それこそ「シェイプ・オブ・ウォーター」なんかがそうで、彼らしいラブストーリーだったと思うんですが、今回は人間そのものに着目させることで、本当のバケモンは見た目で判断してはいけない!みたいなことを伝えてたように思うんです。

 

これまでクリーチャー愛が爆発していた監督。

劇中こそホルマリン漬けの奇形児「エノク」だったり、ショーの最中に生きたニワトリを与え腕力だけで首を引きちぎる獣人の姿、権力者エズラ・グリンドルをフルボッコにして顔をぐちゃぐちゃにする姿をしっかり見せたり、その部下を車で轢いて殺すシーン、判事の奥さんが自決するシーンをギリギリまで見せるなど、思わず「うっ!」と目を伏せたくなる映像が飛び込んでくるんですね。

 

とはいえ、あれ?こんなもん?となってしまうんですよね…。

普段ならもっとグロテスクな映像を見せてくれるんだけど、こんなもんかと。

 

そういう意味では監督作品が好きな方なら物足りないと思ってしまうかもしれないです。

しかし、人間の中身をしっかり見せていくことで「人か獣か」をやりたかった監督の心情を考えると、なんかこうひとつ大人になったな、監督、なんて思いたくもなるというか。

彼は人間をちゃんと見ることにしたんだなぁなんて妄想もできるなぁと。

 

今回アメリカンドリームの闇を描くってことで製作したわけですが、もしかしたら監督もまた人にダマされてしまったのかな、だからこんな映画を作ったのかなと勘ぐってしまったりもする作品だったんじゃないでしょうか。

 

演者について

正直今回の映画、原作はおろかオリジナル作品すら見ずに臨んだわけで、事前情報もロクに調べてないために、どんな物語なのかよくわからずに見に行ったんですね。

 

予告編だと「人か獣か」ってセリフと共に映像が流れるんだけど、ぶっちゃけよくわからない。

だから多分ブラッドリー・クーパーが獣を操ってショーを展開して失敗でもするのかななんて想像してたんです。

その獣が凄く見苦しいんだけど彼と獣の間にちょっとした絆かなんか生まれて、みたいなのを想像してたんですが、全然違いましたw

 

そんな主人公スタンを演じたブラッドリー・クーパーですが、冒頭ロクに喋らずにストーリーが進行していくのが見ごたえありましたね。

一体コイツ何しにここへやってきたんだろうとか、ただ見つめるだけで相手に気に入られていく流れが、スタンという人物の底知れぬ魅力の一つになってる気もして、相変わらず佇まいと目の表情だけで画になる男だなぁと。

 

序盤はスタンが少しづつ喋り出し、少しづつ移動遊園地の連中と心を通わせ、皆がピンチの時に本領発揮していく姿が描かれてます。

それまで表情の硬かったスタンが、警察官を出し抜いた時に、手口を雄弁に語る姿を見て、あ~図に乗ってるなぁこれ、このまま調子こいていくんだろうなぁと思わせてくれるクーパーのお芝居はお見事でしたね。

 

てか風呂に入りにトニ・コレット演じるジーナの部屋に行った時に、一瞬局部が写ったのは気のせいか…w

しっかり握られて唇を交わしてしまうような男もまた画になるなぁとw

 

中盤以降は、きれいなホテルの会場で目隠しをしながら、モリーの手引きによってズバズバ心を読んでしまうスタン。

しっかりした身なりでカッコつけるクーパーも美しい…

しかもショーをやる際はちょっと声色を変えてやってるんですよね。

普段も声が低いですけど、さらに声を低くして語ることで心を掌握できたりするのかなぁなんて思いながら聞いてました。

 

実際彼のお芝居ってあんまりオーバーアクトしないなぁって僕は思ってて(ハングオーバーは別w)、今回も結局こいつの深層心理がよくわからないけど目は野心に満ち溢れてるって感じで、表情だけで色々見せてくれたのはハマってたと思います。

 

 

そしてモリ―役のルーニー・マーラ。

そこまで秀でた演技をしていたとは思わないんですが、スタンに父親を重ねて彼に身を委ねながらも、彼を愛するあまり従うしかない健気な姿ははまり役。

逆に態度を急変して彼に愛想をつかして以降はちょっと物足りなさが出ちゃったかなぁと。

一度態度を改めてついていくほど愛していたんでしょうけど、結局一線を越えたスタンを見てやっぱりコイツダメだって一人でコツコツ歩いていっちゃうのだったら、もっと態度を出してほしかったなぁと。

 

中盤から登場したリリス博士を演じたケイト・ブランシェットは、相変わらずの妖艶さ。

心理学博士ってときたまきれいな女優さんが映画で演じるのを見ますけど、恐らく一番何考えてるかわからない博士だったんじゃないですかねw

ぶっちゃけスタンより底が知れないキャラでしたよ。

なんせ切れ長の目が凍り付いていて低い声で近づいてくるんですから。

 

また心理学博士VSペテン師の騙し合い対決がメインの後半は、どう考えてもスタンの方が分が悪いだろうと思ってしまうほどのオーラの差。

俺だったら「あ、この人はダマせないな…」って思っちゃったんですよ。

何で挑むかなぁスタンw

 

 

最後に

他にも年をとっても腕の錆びてないパンチでスタンをぶん殴るロン・パールマンや、失った人への罪悪感のあまり何考えてるかわからないリチャード・ジェンキンスも良かったですね。

あとはウィレム・デフォーですよ。

まぁ胡散臭い見世物師の姿がよく似合うこと似合うことw

前半だけの登場でしたが、インパクトある存在感でした。

 

 

騙す人も悪いですけど、騙されてしまう人も注意が必要です。

今の世の中何を信じていいかわからないほど情報が溢れてるし、日々に疲労してるせいで目の前のモノを簡単に信じてしまい、疑うことや考えることを忘れがち。

コロナ禍によって色んな嘘の情報やフェイクニュース流して金を稼いでる人がわんさかいますから、僕らはホント注意して行動することが大事です。

 

そしてそうやって騙して金を稼いでる奴は、マジでスタンのような末路を辿ればいい。

獣ですよそういう奴らは。

本作は因果応報的な物語でしたし、あくまで興行師の闇を描いたお話でしたけど、現実世界でもよくある話です。

 

しかし長かったなぁ…

あそこまで丁寧に語らずとも良い気はしたんだけどね。

でもオチに驚愕したのでおっけー!

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10