モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「TANG/タング」感想ネタバレあり解説 監督の特性が悪い方にいってしまった作品でした。

TANG タング

人間とロボットの交流を描いた映画って結構な本数が在りますよね。

A.I.」や「リアル・スティール」、「アンドリューNDR114」、「アイ、ロボット」なんかがぱっと思いつきますし、なんなら「ターミネーター」シリーズも「トランスフォーマー」シリーズもそれに該当する作品だったり。

 

ディズニーアニメーションでも「ベイマックス」なんてのがありましたし、日本だって「ドラえもん」、「ジュブナイル」など数多く製作されています。

 

今回観賞する映画は、ダメ男とポンコツロボットの大冒険。

海外の小説が原作だそうで、正直設定はべたではありますが、現在の日本映画でこうしたSFやファンタジーを題材とした作品が制作されるのは個人的にはアツいと思ってます。

というわけで早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

イギリスの小説家デボラ・インストールが2015年に発表し、日本でも劇団四季でミュージカルをするるほど人気となったベストセラー小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」や「思い、思われ、ふり、ふられ」など多感な10代の恋愛模様を瑞々しく描く三木孝浩監督の手によって実写映画化。

 

とある理由により夢も妻との未来も諦めてしまった青年が、記憶を失ったロボット「タング」と共に、思いがけない冒険を繰り広げていく。

 

クリント・イーストウッド監督作品「硫黄島の手紙」に出演以降、アイドルでありながら「俳優」としての確固たる地位につき、近年でも「浅田家!」や「検察側の罪人」などで日本アカデミー賞にノミネートや受賞し、演者としての輝きを増し続ける二宮和也が、ゲーム三昧によって妻に呆られる青年を熱演。

満島ひかり奈緒京本大我、お笑い芸人「かまいたち」など、様々なジャンルの出演者が彼を支える。

 

そして本作にかかせないVFX描写を、「シン・ゴジラ」や「キングダム2」を製作した「白組」が担当。

人生の迷子と記憶の迷子二人が織りなす世界を鮮やかに染めていく。

 

この夏、ポンコツ同士の二人が見つけた宝物に、感動してください。

 

 

 

あらすじ

 

ゲーム三昧に明け暮れ、妻・絵美(満島ひかり)に家を追い出されたダメ男・健(二宮和也)。

わけあって無職で人生に迷子中。

 

ある日、家の庭に突然現れたのは、記憶を失くした迷子のロボット、タング。

初めは時代遅れの旧式のタングを捨てようとする健だったが、タングが失った記憶には、世界を変えるある秘密が隠されていた。

 

謎の追手が迫る中、大人とロボット、二人の迷子が大冒険の先に見つけた≪人生の宝物≫とは——?(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

監督

本作を手掛けるのは、三木孝浩。

 

浅野いにお原作のコミック「ソラニン」で監督デビューして以降、少年少女から若い男女らが織りなす恋愛模様や青春の瞬きを、眩しいほどの光のグラデーションによって、最高のシチュエーションを描いてくれるお方。

 

そんな恋愛青春映画の担い手が、今回は大人とロボットの物語を手掛けるというのが意外。

とはいえ監督は、オファーがあれば監督として期待されているということと捉え、それに応える姿勢でお仕事をされてるとのこと。

 

そんな監督は、原作の舞台が海外であることや、海外に住む夫婦間の価値観などをどう改変するか悩んだそう。

 

また出演者には手紙や音楽のプレイリストを送ることで世界観の共有を図ったり、撮影現場では、目の前にいないタングの動きやシーン全体のイメージを伝えるために、自身が演じて見せるなど、監督として細かい指導や指示などをされたそうです。

 

監督の過去作はこちらをどうぞ。

 

www.monkey1119.com

 

www.monkey1119.com

 

 

キャスト

とある理由で夢や将来を諦めている青年・春日井健を演じるのは二宮和也。

 

 

「硫黄島の手紙」での熱演により、今やジャニーズ事務所の域に留まらず「俳優・二宮和也」というパブリックイメージが染みついたニノですが、僕は彼がまだジャニーズジュニアの時から存在を知っていて、何かのドラマで丸坊主で演じていた時から、彼の非凡な才能に惹かれてましたw

 

そんな彼が挑む健という役柄は、本人曰く「自分と真逆」の性格だったんだとか。

何かを演じるうえで「自分と近い性格」の方がやりやすい気がするんですが、ニノの場合逆の方がやりやすいとのこと。

 

また姿の見えないタングとのお芝居をどう演じたかについては、「納期を遅らせたかもしれない」というユーモアを交えながら、自由奔放に動き回って演じたとのこと。

とはいえ、一人で演じたことで人間と向き合った時の芝居のむずかしさや喜びにもたどり着けたそう。

www.fashion-press.net

Jr.時代から20年以上の月日が経ち、主演を張り続ける男になったニノが、本作を経てどんな演技を見せてくれるのか期待したいですね。

 

 

 

他の出演者はこんな感じ。

健の妻・絵美役に、「川の底からこんにちは」、「川っぺりムコリッタ」の満島ひかり。

健の姉・桜子役に、「シン・ゴジラ」、「罪の声」の市川実日子

加藤飛鳥役に、「劇場版コンフィデンスマンJP」の小手伸也

ロボット歴史学者・大槻凛役に、「あなたの番です 劇場版」、「マイ・ブロークン・マリコ」の奈緒。

ロボットデザイナー・林原信二役に、アイドルグループ「SixTONES」の京本大我。

ロボット工学の第一人者・馬場昌彦役に、「ストロベリーナイト」、「海辺の映画館」の武田鉄矢などが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

 

タングにはどんな秘密が、そしてともに迷子の二人がたどり着いた場所とは。

ここから観賞後の感想です!!

 

ん~…。

ニノの良さも特になかったし、物語の進行もかったるいし、監督の特性も活かされていない・・・。

ダメ男×ポンコツロボの絆が深まる瞬間て一体どこだったんだろう…。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

TANGはかわいらしい。

過去のトラウマによりニート生活することで妻から三下り半を突き付けられた青年が、裏庭にいたポンコツロボットを処分するきっかけで様々な場所を共にする旅路を描いた本作は、白組のVFX描写により美しい映像表現とタングの自然な動きが魅力となっていた反面、監督の持ち味であるヒカリのグラデーションと人間描写が完全に薄れており、何もかも「置きに行った」かのような物語に留まっているのが残念な作品でございました。

 

色々愚痴を言いたいのを堪えて、本作のいいところを掘り出していこうと思うんですが、一体どこを掘り下げればいいのか…。

 

一応本作は、父を助けることができなかった過去を持つ元研修医が、妻との生活はおろか、今後の自分の人生でさえもどうでもよくなっている男を主人公にしています。

裏庭の門戸が壊れていいるという妻の申し出から外に出てみると、見た目の古い旧式ロボットを発見。

彼を処分するためにリサイクル工場や部品の製造元である企業などを訪れながら、一見役に立たないながらも徐々に愛着と愛情を注いでいく主人公の心変わりを描いたお話なのであります。

 

一方で妻からは、いつまでも過去に引っ張られ過ぎて前を歩もうとしない夫の姿に嫌気がさし、ついには家を出ていくところまで険悪な関係に。

さらにはタングに隠された優れた機能を狙って様々な者たちがタングを狙うというエピソードも挟むことで、単なる友情物語、自分探し、といったヒューマンドラマ以外にも楽しめる要素の備わった作品だったのであります。

 

どんなにダメで役立たずな奴でも、ずっと一緒にいれば自ずとそいつのいいところを見出し、どことなく愛おしさのような感情は生まれてくるものだと思ってるのですが、主人公・健も同じように、まるで子供のようなタングに足を引っ張られたり迷惑を掛けられたリしながらも、ちょっとした行動に心を動かされていくのが本作の魅力だったように思えます。

 

特に印象的なのはコーヒーを買ってくるシーン。

本作の時代設定はこの先の近未来であり、既に現金を持ち合わせて生活するような環境ではないのが見受けられます。

しかしタングにとってはその辺に落ちていた100円玉は宝物のような存在であり、肌身離さず持ち歩いていました。

 

また、健が無類のコーヒー好きである描写がいくつか描かれており、実際にコーヒーメーカーでコーヒーを淹れてあげようとするも床に落としてしまうタングの姿を見て、健は怒りとあきれ顔を見せるシーンがあります。

 

健からそんな態度を取られながらも、飛行機で見た映像から学習した「タング、健のために」の精神により、お祭りで見かけた自分が欲しいモノよりも、健にコーヒーを飲ませてあげたい気持ちを優先し、自分が大切にしていた100円玉でコーヒーを買ってあげるのです。

 

実際駆け足でコーヒーを運んできたこともあって、中身はほとんどこぼれており、普段の健なら怒ったり呆れたりするんでしょうが、このときばかりは健も彼の優しさにやられたんでしょう。

タングにはコーヒーが入ってないことを隠し、お礼を言うのです。

 

「人生は他者である」という言葉で締めくくった西川美和監督の「永い言い訳」を引用させていただきますが、これまで自分のミスにより大切な人を無くしたことがきっかけで、何もかもがどうでもよくなってしまっている健には、こうした献身的な愛を注ぐ相手が必要だったのかもしれません。

 

自分は一人だけで生きているのではなく、誰かの支えによって生きている。

妻との生活を蔑ろにし、自分の殻に閉じこもって体たらくな生活をしていても何も変わらない。

誰かと共に生きることが人生をどれだけ色濃くさせるのか。

使い古された言葉でもありますが、こうしたちょっとした優しさによって前を向くきっかけになるのではないかと言われてるような印象的なシーンでした。

だから健は、タングのために色々行動したり助けようと決心したのではないか、そんなクライマックスだったように思えます。

 

 

またタング自身見た目はポンコツですが、感受性や好奇心の高さから見るモノすべてを吸収しようと夢中になる姿は非常に可愛らしい。

そもそも人工知能を搭載しているが故にいろんなものを学習する機能が働いてるわけですが、ただそれをインプットするのではなく、見たモノ聞いたモノに対して喜んだり怒ったり感動したりするのがロボットの域を越えてるんですよね。

 

もはや人間と同等の感情表現を持ち合わせており、テントウムシに感動したり、無数のお魚に夢中になったり、健のためにコーヒーを買ってあげたり、その道中で短い足を思いっきり動かしながら駆け回る姿は、誰もがキュンとなってしまうのではないでしょうか。

 

三木監督の作風がハマってない。

とはいえ、全体的な内容としては、よく言えば子供や親子向け映画であり、悪く言えば「ぎこちなさ」の続く退屈さが窺えた作品だったように感じます。

 

そもそも三木監督の作品て10代の恋愛青春モノを得意とする映画が多く、対象である若い男女の心の機微を、木洩れ日や光をうまく使って美しく描くのが特徴なんですよね。

そこを尺を使って丁寧に描くから、物語の進行が遅くても「画が持つ」んですよ。

 

また会話の行間や間が長くても、対象が相手に恋心を抱くあまりに「ぎこちない」態度をとるわけですから、自然な間だから成立するんです。

 

さらに既に中堅の域に達している監督ですが、何作製作しても「ピュア」な気持ちを持ち続けてるのが凄い。

ピュアな気持ちを持ってなければ10代のキラキラ映画を撮り続けるのは不可能だと僕は思っていて、そういう監督は貴重だなぁと常々思っているんです。

 

なのになんでこんな作品をやろうと思ったんだろうと不思議で仕方ありません。

依頼されたからには期待されてるという気持ちで受けると語ってますが、正直不向きな作品だった気がします。

 

具体的に何故不向きだったのでは?と感じたかというと、とにかく話の進行が遅い。

恐らくタングの動きをVFXで表現しなくてはいけないという点が話の進行を遅くさせたかと。

実際カメラは健を追った後、タングの反応を映すパターンが多く、タング自身も歩く速度が遅かったりしていることから、全体的に動くスピードが遅いんですよね。

これに監督の特性である丁寧な描写が加わることで、さっさと済む話がさらに遅く感じるのが今回特に目立った気がします。

 

 

またアクションや敵の登場、救出するミッションといったエンタメ要素を監督自身これまで手を付けてこなかったことが今回かなりマイナスな部分になっていたように思えます。

 

それこそかまいたち演じた追手からタングを救出する場面でも、普通ならもっとヒヤヒヤしたりドキドキするような展開だと思うんです。

2人にバレないように救出するわけですから。

 

にもかかわらず、アジトに潜入する手前で妻からの電話を取る健を挟んだりするし、一瞬のスキを突いて反撃するシーンも素早いカット割りなどが無くもったりしている。

クライマックスの馬場教授との対決では、馬乗りしたりカートを押したり押されたりのバトルを見せますが、どうも迫力がない。

決して迫力があればいいというわけではなく、戦うための手段としてもっと普通の事をすればいいのに…と思ってしまうんです。

 

きっと優しさやピュアな気持ちを持ち続ける監督だからこそできた演出なのかもしれませんが、こうしたシーンではもっと激しい映像にするとか今まで見たことのない監督の持ち味を発揮してほしかったなぁと。

 

妙に変だったところも。

ここからはコマかいツッコミになるんですが、もう冒頭から正直無理でしたw

ドローン機によって郵送物が多々運ばれていく街の様子を空撮して始まる本作。

あまりにCG処理されてるので、美しすぎて心が拒絶してしまいましたw

 

一応この先訪れるであろう近未来の設定で、空港やロボットを開発する企業の中など、色々工夫がされていて近未来感は出ていたんですよ。

でもスマホは大したアップデートもされてなかったし、大槻先生のIDカードにGPS機能がついているのに、妻のスマホから健の居場所を特定するうってつけのGPSはなかった、というか使うという選択肢がなかった。

ロボットやアンドロイドが一般化されている時代であることから、いろんなIoTが実現されていたんだろうけど、もっとそこにフォーカスを当てればよりリアルな近未来感を出せたのに、そこまで描キレてなかったのは勿体なかったですね。

 

他にも、空撮で捉えた住宅街は、皆庭付きの一軒家なんですけど、なんで健の住む家にだけ馬を飼えるほどの庭のスペースがあったのか疑問。

さすがに馬を飼えるほどの庭を持っている家は見当たらなかったんですけど…。

 

 

あとは健と妻・絵美の関係ですよね。

結局絵美って、未だに人生の一歩を踏み出せない健にイラついていたのか、それとも家にずっといながら何もせずにゲームばかりしている健にイラついていたのかよくわかんないんですよね。

物語的には、タングと旅をしたことがきっかけでこのままではいけないと改心し、もう一度医者として前を向くことを告白してよりを戻すんですけど、どうも腑に落ちないんですよね。

 

だって奥さんは弁護士として働いてるから仮に夫が無職でも稼ぎは良いわけです。

だけど序盤では、家に居ながらゴミ出しも壊れた箇所の修理も全然やってくれないことに苛立ってるんですよ。

俺が奥さんの立場で考えたら、家に居ながら何もしない、結婚相手として生活するにあたっていわゆる「主夫」としての役目を果たせてないことに腹が立つ方が怒る理由に直結しないかなぁって。

 

しかも本作の肝って、タングが相手のためにいろいろしてくれることに感銘を受けたから健もそうしようと決心する流れだったので、健も奥さんのために医者になる!っていうのではなくて、奥さんのために家の事もちゃんとする!って所に着地するのが普通なのでは?と。

 

ラストシーンでは、タングとも一緒に暮らすことになり、奥さんともよりを戻すっていう畳みかけ方なんですけど、これ一緒にしなくちゃいけない?って思ってしまって。

だったら一応子を宿すって設定もあるので、父親になる決心がつかずに暮らしているって設定にして、タングと共に行動することで父親としての決心がつくって設定にした方が畳みかけ方としては上手い気がするんですけどね。

 

 

最後に

かまいたちの掛け合いは、さすが漫才師だけあってボケもツッコミも絶妙な間でやりとりしていて愉快でしたね。

ぶっちゃけ必要かどうかは別にして。

てか、タングをさらった撮影場所、幕張メッセでしょw

あそこ東京コミコンで並んだ駐車場だよw

全然中国じゃねえよw

 

これもまたツッコミになってしまうけど、タングと一緒に過ごしていたら汎用型人口知能ロボットってわかると思うんですけどね~w

どう考えても他のアンドロイドやロボットより優秀でしょうw

あれだけ感情表現するし、人間の気持ちを理解してるんだからw

何故誰も気が付かないのかw

 

とにかく三木監督の特性を活かせてないのが非常に残念だし、そもそも特性を活かせるような題材ではなかったのがそもそもの問題だと思ってます。

ニノのお芝居もどことなくクサさの強かった感じがしますが、やっぱり感情を露わにする芝居はしっかり見せてるなぁという印象。

個人的にはニノにはものすごく悪い役をやってほしいと思ってます。

変に良い人とか礼儀正しい人とか良識ある人とかダメ人間とかではなく、サイコパスまではいかないけどものすごく悪い奴。

多分そっちの方が役者人生でいいきっかけになると思うんだけどなぁ。

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10