近畿地方のある場所について

2025年はホラー映画が豊富な年になりましたね。
「プレゼンス存在」や「ロングレッグス」、「サブスタンス」や「罪人たち」といった海外の話題作が上陸し、「見える子ちゃん」や「ドールハウス」など日本も負けてない。
そして今年の邦画ホラーの本命ともいえるのがこの「近畿地方のある場所について」です。
僕自身ホラー映画は積極的に見る方ではなく、あくまでミーハー目線で鑑賞するのですが、本作に関しても映画仲間から「原作がヤバい」という話を聞き、「どうやら映画化されるらしい」という情報をいち早くキャッチしたのが1年前でした。
なので楽しみにしてるわけですが、監督の作品をほぼ見てないのが難点。
まずは初心者のような気持ちで、普通にビビりながら楽しみたいと思います。。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
2023年1月、WEB小説サイト「カクヨム」投稿されるや否やSNSを中心に話題を集め、累計2300万PVを超えるヒットを記録、単行本化されたことで人気が加速した同名ホラー小説を、「ノロイ」や「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズ、「サユリ」などフェイクドキュメンタリー方式のホラー作品で知られる白石晃士を監督に迎え実写映画化。
消息の分からなくなったオカルト雑誌の編集者の行方を捜す二人の男女が、行き着いた「近畿地方」で様々な怪現象に遭う姿を、不気味すぎるモキュメンタリー描写とそれに反応する二人の劇映画を融合させながら、謎が謎を呼ぶ展開と衝撃の結末で恐怖を煽る。
監督の白石晃士は本作を製作するにあたり「二人の主人公を軸にした劇映画のパート、そしてこれまでのキャリアの全てを注いだモキュメンタリー映像を徹底した」と語る。
また本作のプロデューサーは「ミッドサマーのような上質なホラーを作りたい」と意気込んでおり、いかに製作者らが「本気の怖い映画」を作ろうとしているのかが窺える。
キャストには、「ディア・ファミリー」の菅野美穂と「366日」の赤楚衛二が担当。
ふたりの掛け合いやリアクションにも注目だ。
様々な怪異で恐怖を与える本作。
なぜ「近畿地方」なのか、そして衝撃の結末とは。
あらすじ
オカルト雑誌の編集者が行方不明になった。
彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪事件や中学生の集団ヒステリー事件、都市伝説、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件や怪現象の数々だった。
同僚の編集部員・小沢悠生(赤楚衛二)はオカルトライターの瀬野千紘(菅野美穂)とともに彼の行方を捜すうちに、それらの謎がすべて“近畿地方のある場所”につながっていることに気づく。
真相を確かめようと、2人は何かに導かれるようにその場所へと向かうが、そこは決して見つけてはならない禁断の場所だった。(映画.comより抜粋)
感想
#近畿地方のある場所について 鑑賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) August 8, 2025
んー…。
モキュメンタリー映像がものすごく力が入ってて拳握るくらい怖かったのに、劇映画の部分が笑っちゃうくらいクオリティが低い。ミステリー要素抜群なのにそれをしなかった理由ってなんだろう。
「ましろさま」の映像、よく目を凝らしてください。いるよ。 pic.twitter.com/sfD2bAUZSk
近畿地方のどこなのかはどうでもいい。
だからこそ、散りばめられた謎を2人のキャラが整理しながら追ってほしかった。
フェイクドキュメンタリーは、まぁ~~~~怖い。
途中胃が痛くなって退出しようと思ったくらい。
以下、ネタバレします。
考察とか意味ないよ。
失踪したオカルト雑誌の編集長がやるはずだった特集を、部下の小沢と親しい間柄の女性ライター・千紘が引き継ぐ形で幕を開ける本作。
一体編集長はなぜ失踪したのか、そして彼が追っていたものは何なのかを少しずつ突き止めていくことで、踏み込んではいけない領域へと入ってしまうという流れ。
本作を鑑賞する前日、カクヨムに掲載されている原作を、順を追って読んで臨みました。
文章をすらすら読めなくても2時間少々あれば読めてしまうほどの分量で、中身は誰かのインタビューや当時様々な媒体にあった部分を切り取った「奇妙な現象」が時系列をシャッフルして書かれており、順を追って読むことでバラバラだったピースが脳内でパズルのようにハマっていく謎解き要素がある面白さでした。
オチに関しても「その手で来たか」という結末で、「情報をお待ちしています」とか「見つけてくれてありがとうございます」という文言が、むちゃくちゃ怖く感じる、非常に読み応えのあるものでした。
頭でパズルを組み立てたものの、ぶっちゃけちゃんと完成したわけではなく、誰かがまとめた旨の記事を読まないと補完できない部分もあって、そうした「考察」として楽しめる作品でした。
出はこれを一体どうやって映像化し、一つの物語として脚色するのか非常に楽しみだったわけですが、これがまぁ~ものすごく秀でた部分もあれば、ものすごく酷い部分もあって、中々の代物だったなというのが率直な感想です。
まず、本作はモキュメンタリー映像に定評のある白石監督だからできる恐怖感が満載の作品でした。
地下室で誰にも情報を開示せず資料を取り寄せていた編集長が残したものを、小沢と千紘が拾い集めていく作業が序盤では描かれていきます。
30年も前の資料映像ですからもちろん保存されているものはVHSテープ。
劣化も激しくかなりのノイズやモノラル感のある音声が不気味さを増すもので、少女失踪事件のニュース映像を始め、「見たら死ぬ動画」、「ましろさまという名の鬼ごっこ」を報じたバラエティー番組、当時流行したとされるチェーンメールを見せつけるコギャルたちの姿、一家失踪事件のニュース映像など、どれも良くこの現代にこんな映像作れたなぁと感心するクオリティ。
中でも一番怖かったのは「ニコ生で配信された首吊り屋敷に単独で潜入する男性」の映像。
凸撃○○バシラなる男が(かいばしらくんてこの手の作品良く出るよね)、にわかにささやかれる幽霊屋敷に突入する映像なんですね。
誰も住んでいないため、蔓が伸びきった一軒家を恐る恐る開けると、部屋の中には首吊り屋敷の名の通り、首を括るための縄があちこちにぶら下がってる映像が飛び込んできます。
床も埃はもちろん羽根のようなものが飛び散っており、リビングのソファーも壁もボロボロに破れた状態。
夜中に忍び込んでるため、明かりは懐中電灯のみですから、ライトが当たる箇所しかはっきり見えないのも怖さを手伝っており、画面の端々に何かいないか、もしくは何か飛び出してこないか、つい目を細めながら見てしまいます。
ニコ生ということもあり、視聴者からのコメントが画面の上で流れてくるのもリアル。
視聴者数もそれほどいない弱小配信者ということもあり、コメントもいっぱい流れてくるものではないので、案外追えちゃうのがまた怖い。
実は原作でも似たようなエピソードがあるんですよ。
それは山に祀られた祠を探索する配信者の話で、2ちゃんねるのスレッドをそのまま書き込んだもの。
実はこのエピソードで一番怖いのは、コメントを書く人の中にひとりだけ配信者に場所を誘導するコメントを書くやつがいるってところ。
本作での首吊り屋敷でも、コメントの中に「開かずの扉に行け」と書いてる奴がいるんですよ!!!!
うわ~~~~怖っ!!!!
しかも映像の最後のほうで「見つけてくれてありがとうございます」って流れてたんですよね…。
これ、原作読んでる人じゃないと、初見じゃ発見できないと思います。
そして「開かずの間」に突入すると、尋常ない数の首吊りの縄がぶら下がっており、血まみれになっていた床の上には有刺鉄線で作られた首吊りの輪があるじゃないですか・・・。
コメントでも「それ以上はよしたほうがいい」なんて本気で止める客もいて、俺も正にそんな気持ちになるほどヤバい映像。
微かに「お~い」と声が聞こえたかと思ったら、机の中に入っていた少年の写真が微かに動くじゃねえか!!!
そして映像の最後には、男性の背後に何者かが首を吊ってぶら下がってる姿を映り込んでおり、映像はそれを最後に終わってるんですね。
俺はそこまでホラー耐性があるわけじゃないから、かなりビビッて見てましたよ…。
よく出来てるなぁ~なんて書きましたけど、内心そんなこと考えられる余裕は、その時はありませんでした。
拳をぎゅっと握って「早くこの映像終れ!!!」と祈ってたほどw
こんな映像が、序盤から中盤まで間を挟まずに流れてきます。
この連発具合がとにかく息が詰まるほど苦しくて、もう少し劇映画の部分を進めていただいてもよろしいですかね?と思ったほど。
大体「ホントにあった呪いのビデオ」とか、「怖すぎファイル」とかって家で見るからある程度構えて見られるんですよ。
でも、この手の映像を、いくらフェイクだからってデカいスクリーンで垂れ流したものを見た経験がないから、かなりのインパクトを得られるんじゃないかと。
家だったら自分の意志で中断できるけど、映画はそれができないし、お客さんいっぱいだし、みんな黙って見てるしで余計恐いんだよ!!!
コメントの部分でも触れましたが、こうしたフェイクドキュメンタリー映像の中には、よく目を凝らすと「いる」エピソードもあったんですね。
それが「ましろさま」という映像資料。
ダーツの旅のような地方に行ってクイズの問題を探すテイのバラエティ番組の映像で、近畿地方の山の近くに立ち並ぶマンションの子供たちを発見したディレクターが、子供たちに「流行ってる物を聞く」というもの。
子どもたちの中で、「ましろさま」という鬼ごっこが流行っており、鬼=ましろさまになった男の子はみんなを追いかけるという、鬼ごっこそのものなんですが、捕まった女の子は「身代わり」をましろさまに捧げないといけない決まりになっているんです。
最初は花壇の花でご勘弁を!て感じだったんですが、ましろさまは拒否。
かわりに女の子が着けてる髪留めをよこせと命令し、女の子はいやいやそれを身代わりにすることで成功するという映像でした。
実はこの映像、彼らがましろさまをやってる最中、マンションの影に隠れて、緑色の服を着た男の子が彼らに混ざりたいような眼差しで見つめている姿がチラッと映ってるんですね~。
この映像の前に、先ほどのニコ生の映像に映っていた少年の写真、さらに恐怖映像を見せた友達が失踪したという大学生のインタビュー映像と、その後の彼のインタビュー映像に映った少年とうり二つなんですね。
だからしっかり映像を目で追えてる人は、ましろさまの映像資料の時に気づくんじゃないかなと。
他にも様々な部分で怖い映像が連発するので、あまり耐性のない人はかなりハードかもしれません。
ま、こんな映画見る人は大体耐性あるんでんしょうけどw
物語はいたって低品質。
こうしたハイクオリティなフェイクドキュメンタリー映像が立て続けに流れる中、肝心の劇映画の部分が、まぁ~退屈でしょうがなかった。
そもそもの発端は、失踪した編集長のせいで、掲載するはずだった特集を対ミリミットが迫る中、新しいものを書くか、もしくは編集長が持っていってしまった特集のデータを本人を探して回収するか、編集長が追っていたものは何かを調べる所から物語は始まるわけです。
色々調べていくうちに、ぼんやりとある共通項が浮かび上がることで、小沢君は千紘に黙って単独で追って行ってしまうことで呪われてしまうことに。
それに気づいた千紘は、もう後戻りできないと確信し、編集長の家に向かい真相を探っていくという流れになっています。
上でも書きましたが、原作は時系列がバラバラのため、脳内でそれなりのパズルを組みながら謎を解明できる仕組みに放ってるものの、やはり誰かがまとめて時系列をまとめた記事を読まないと完全に把握することができない内容になっています。
本来、脚色するとはいえ、このバラバラになった部分を物語のキャラクターが我々と共に謎を追うような内容にすればそれなりに整理できるし、一見共通点のなさそうな映像資料が線で繋がるのだから、非常に見やすくなるし面白みも増すと思うんです。
でも本作は敢えてなのかそれをやろうとしなかったことに大きな疑問、いや不満を感じたんです。
もちろん劇中では、小沢君が夜通しで作った地図を制作して整理してくれたので、元凶は「近畿地方のどこか」という部分に繋がっていくんですが、それこそ原作を読んで考察なりまとめ記事を書いてくれた人のように、小沢君と千紘が我々にバラバラのピースを組み立てていくような描写を細かく入れてくれてもいいのになと。
そうでないと、客を置いてけぼりにして勝手に二人で謎を解いていってるみたいで不快なんですよw
実際原作では「山へ誘うモノ」と「ジャンプ女」、「あきらくん」と大きく3つにまとめることができる怪奇現象があり、これらが一つになっていくことで謎が明らかになる仕組みになってるんですが、そうしたフローチャートめいたものが本作にはなく、ある程度の部分だけ把握して、さっさと祠に行っちゃうんですよね~。
また、クライマックスで隠された謎が明らかになるんですが、それもぼんやりとしたもの。
見た人はそれぞれ解釈して~くらいのざっくりしたもので、一応セリフを追っていれば何となく理解できるんだけど、原作とは違う導線になっていることもあり、原作読んだ人からしたら「あれ?石ってそんなに大事なアイテムだったっけ?」とさえ思ってしまう。
またフェイクドキュメンタリー映像はめちゃめちゃ凝ってるのに、まさるさまのビジュアルやラストシーンのCG感がクオリティが低いのなんの。
フェイクドキュメンタリー映像はアナログ感満載だからこそ恐怖を増幅させる映像だったのに、クライマックスになるとクオリティ低いせいで怖さが半減してしまうというw
まぁフェイクドキュメンタリー映像に予算のおよそを使ったのかもしれませんが、せめてまさるさまの顔くらいはもっと怖いモノにできなかったモノか。
それでも菅野美穂は抜群に良かったんですよ。
良かったというかベストキャスティング。
彼女が持つ演技の二面性、とうかぶっとびキャラがはっきり色濃く最後に出るので、これがまぁ怖さを助長させるものになっていて、それが良いんですよね。
ネタばらししちゃうと、物語の根底には「失った子の悲しみと救い」めいたものが伝承されていくホラーになってて、実際赤い服を着てジャンプする女は首を吊って死んでしまった子供を失った悲しみが、いわば呪いとなって様々な媒体を通じて伝染していたわけです。
新興宗教に入信していた過去を持つ千紘もまた、公園でうたた寝をしてしまったが故に、誰かに連れ去られ池で死んでいたところを発見し、自分を戒めていたわけです。
新興宗教に祀られていた石は、まさるさまを祀る祠にあった石で、それがあれば子供をもう一度手にすることができると考えた千紘は、編集長や小沢君を利用してたどり着くことができたってオチ。
劇中度々流れる「行方不明になった人を探しています」という千紘の映像は、実は編集長の事ではなく小沢君のことだったわけで、本性を隠していた千紘の化けの皮が剥がれていく変わり様は、菅野美穂だからこそ成立した怖さだったように思えます。
最後に
要するに、近畿地方のある場所ってどこなのかよりも、赤い服を着た女に憑りつかれていたかもしれない千紘が仕組んだものだったという話だったわけ。
これ原作も近いような終わり方ですが、結末までの道筋が若干違うので、鑑賞された方で、俺と似たような感想を持った方は、是非原作を読んでほしいと思います。
で、それを読んだら、この方の記事を読んで補完してもらえれば。
ふと思ったんですけど、あきらくんに呪われてしまった小沢を救うために真相を突き止めるという展開って「リング」「リング2」と似てる展開だなと思えたし、結局いけにえになってしまうという部分も、近いものがあるなぁと。
実際貞子の呪いのビデオも、荒い映像が不気味さを助長させたものだし、何より彼女の呪いはビデオテープをダビングすることで拡散されていくってのも、本作の呪いと近いよなと。
ただやはり、謎を追う展開については非常に勿体なく、リングのようにすればよかったのになと思えて仕方ない。
もっと一連の現象を、いくつかのパターンに分けて整理し、根幹はどこへつながるのかを見せながら、物語を集約させていった方が絶対面白かったと思うんですよ。
それが原作でできなかった部分で、映像にするならその辺を巧く脚色してほしかったよなぁと。
ガッカリではないんですが、もっとできたろ!という映画でした。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10

