マダム・ウェブ
「シビル・ウォー」からマーベルシネマティックユニバースに仲間入りしたスパイダーマン。
もうずいぶんと前の話なので、すっかりそのままディズニーマーベルのキャラとして定着するのかと思いきや、そこはソニーが黙っちゃいないってわけで、「スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム」で一旦ピリオドを打った模様。
トム・ホランドが演じたスパイダーマンを貸している間、ソニーピクチャーズは、「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」なる独自の構想でアメコミを盛り上げようじゃねえかと作り上げました。
実際は「ヴェノム」や「モービウス」といったスパイダーマンの悪役キャラを単体の作品として製作し、噂レベルではありますが敵キャラが大集合する「シニスター・シックス」や、スパイダーマンに関連する新たなキャラの実写化に向けて企画しているそうな。
非常に楽しみである一方で、興行自体はどれもうまくいってない様子。
米批評サイト「ロッテントマト」でもあまりいいトマトメーターはついてないようで、果たしてこのユニバースはちゃんと成功するのか、個人的には不安であります。
今回観賞する映画は、そんなSSUの新たなキャラの単体映画。
未来が予知できる能力を持つ女性キャラが主人公で、どうやら本格的なミステリーになるという話。
一見面白そうに聞こえるけど、アメコミキャラなのに物理攻撃も超人的な肉体もないタイプのキャラのため、果たして見栄え的に面白くできてるのかどうかが評価の分かれ目に感じます。
果たしてどんな内容なのか、早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」=通称SSUの新たな作品。
原作コミックでは未来予知でスパイダーマンを救う重要なキャラクターとして描かれており、知性を武器とすることで、他のヒーローとは異なる存在として注目を浴びてきたマダム・ウェブ。
本作ではそのマダム・ウェブの若かりし頃、ニューヨークで救命士として働くキャシー・ウェブ(のちのマダム・ウエブ)の物語を、アメコミ映画では初となる本格ミステリーサスペンスとして描く。
大事故をきっかけに未来予知の能力を手にした主人公が、偶然出会った3人の少女が謎の男に殺される未来を予知、少女たちを守っていくが、それをきっかけに壮大な「運命の糸」を手繰り寄せていく。
Netflixシリーズ「ジェシカ・ジョーンズ」はじめ数々のドラマシリーズを手掛けたS・J・クラークソンが監督を手掛ける。
主演には「フィフィティ・シェイズ・オブ・グレイ」シリーズや「サスペリア」のダコタ・ジョンソンが初のアメコミ映画に参戦。
救命士として、また未来を予知するものとして命を守る姿を熱演した。
他にも、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の・シドニー・スウィーニー、「ゴーストバスターズ/アフターライフ」のセレステ・オコナー、「トランスフォーマー/最後の騎士王」のイザベラ・メルセド、「ナポレオン」のタハール・ラヒム
、「なんちゃって家族」のエマ・ロバーツ、「俺たちステップ・ブラザーズ」のアダム・スコットなどが出演する。
既にヴェノムやモービウスなどのキャラが単独映画として製作され、今後も「クレイヴン・ザ・ハンター」が控えるSSU。
マダム・ウェブはSSUのキーパーソンとなるキャラになるのか。
あらすじ
ニューヨーク。
救急救命士として働くキャシー・ウェブ(ダコタ・ジョンソン)は、一人でも多くの命を救うため日々奮闘していた。
ある時、救命活動中に生死を彷徨う大事故に巻き込まれてしまう。
それ以来、キャシーはデジャブのような奇妙な体験を重ねるのだった。
自分に何が起きているのか戸惑うキャシーだったが、偶然にも出会った3人の少女たちが、黒いマスクの男に殺される悪夢のようなビジョンを見てしまう。
それが未来に起きる出来事だと確信したキャシーは、少女たちを助けることを決意。
未来が見えるという不思議な力を使い何度も危機を回避するが、謎の男はどこまでも追ってくる…。
男の目的は一体?
なぜ執拗に少女たちを追うのか?
やがて明らかになる、少女たちの“使命”とキャシーの能力の秘密。
少女たちを守る先に、彼女が救うことになる“未来”の正体とは――?(HPより抜粋)
キャラクター紹介
- カサンドラ・”キャシー”・ウェブ(ダコタ・ジョンソン)…生死を彷徨う事故をきっかけに、未来予知の能力を手にしたマンハッタンの救命士で、マダム・ウェブの若かりし姿。
- ジュリア・コーンウォール(シドニー・スウィーニー)…エゼキエルに追われる身となった少女の一人。黒、白と配色されたスーツを着用することとなる。
- マティ・フランクリン(セレステ・オコナー)…エゼキエルに追われる身となった少女の一人。青、赤と配色され、背中から蜘蛛のような四本足のアームが出現するスーツを着用することとなる。
- アーニャ・コラソン(イザベラ・メルセド)…エゼキエルに追われる身となった少女の一人。白、緑と配色されたスーツを着用することとなる。
- エゼキエル・シムズ(タヒール・ラヒム)…スパイダーマンに似た黒いスーツを纏い、キャシー達を追う謎の男で、アマゾンでキャシーの母親と共にクモを研究していた探検家。
モービウスが失敗に終わった今、今後のSSUの存亡は彼女にかかっていますが、それも未来予知できたのでしょうか!?
ここから観賞後の感想です!!
感想
#マダムウェブ 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) February 23, 2024
縦の糸はあなた
横の糸はわたし
手繰り寄せた糸は
いつか誰かを救うかもしれない。
20年前のヒット曲に乗せていたこともあり、00年代風の映画を堪能。
そもそもSSUって、今っぽい作り方やらないのが好き。 pic.twitter.com/TPERaD0Ys7
アクションとしてもミステリーとしても正直イマイチで、ぶっちゃけ俺が未来予知能力持ってるのか?と思うほど展開が読める。
でも、なんだろ、20年前のハリウッド映画っぽい「誰でも楽しめる」空気感が好きだったな。
以下、ネタバレします。
ざっくりあらすじ
舞台は1973年のペルーから始まる。
臨月を迎えながらも治癒能力を持つ蜘蛛を探し求める女性学者が、その蜘蛛を見事に発見。
しかし警護として同行していたエゼキエルが蜘蛛を強奪すると共に彼女に向け発砲。
瀕死の状態だった彼女は、その土地に住む部族の助けによって、出産に成功したモノの、彼女自身は息絶えてしまう。
それから2003年のNYへと舞台は移り、主人公カサンドラ=キャシーは、救命救急士として同僚のベンとコンビを組んでバリバリ働いていた。
ある時、玉突き事故によって車から脱出できずにいた男性を保護しようとした途端、車が橋から川へ落ちてしまう。
そのまま川へ落ちてしまったキャシーは、光の糸を手繰り寄せながら様々なビジョンを見るという奇妙な体験をする。
無事救出されたキャシーはそれからというもの、数分後に起こる出来事を見てしまう現象に苛まれることに。
ある時は自分の血液濃度がわかったり、またある時はパーティーで出された食べ物が口に合わなかったことを知り避けるなど、まるでデジャブのような体験をしていく。
やがて爆発物の多い工場での事故に立ち会うキャシーは、そこで同僚が車に轢かれて命を落とす予知夢を見ることに。
自分が代わりに運転すると志願するも、自分の仕事を全うするよう促されたキャシーは、彼に起こる未来を解っていた故に止めることができなかったことへの後悔をしていく。
もしかしたらこの能力は命を救うことができるかもしれない。
そんな絵空事を浮かべながら、同僚の葬儀に出かけるキャシーは、乗車した列車内で再び未来予知をしていく。
それはたまたま乗り合わせた3人の少女が、エゼキエルに殺されるというものだった。
キャシーは彼女たちを列車から強引に引っ張り出し、追いかけてくる男性を阻止することに成功。
しかしエゼキエルは、自分がその少女たちに後に命を奪われてしまう夢を見続けており、なんとしてでも抹殺する必要があったため、必死に追いかけてくるのだった。
なんとか地上に出てタクシーを奪い、森の中に隠れる一行。
ジュリアの発した「クモ人間」という言葉に引っかかり、キャシーは彼女たちを森においたまま、自宅へ戻って母が遺したメモを引っ張り出す。
するとそこには母親が特殊能力のクモを探していた詳細が書き記されていたことや、母と一緒にエゼキエルが映っていた写真を発見したことで、自分に課せられた使命だと確信していく。
腹をすかせた少女たちはダイナーで食事をすることに。
するとNSA職員から盗み出したパスワードによって、全ての監視カメラを傍受し顔認証できるシステムを駆使して少女たちを探していたエゼキエルに所在がバレてしまう。
間一髪で到着したキャシーによって、エゼキエルの計らいから逃れることができた一行は、モーテルで1泊。
様々な事情から自宅に帰ることを拒んだ少女たちを匿うことになったキャシーは、自身の出征の秘密を探るべくペルーへ向かうことを決心。
同僚のベンに少女たちを預け、キャシーはペルーへ向かい、何故臨月の状態の中アマゾンの地を訪れ、血眼でクモを探していたのかを知る。
それは後に生まれる自分自身のためだった。
治癒能力の高いクモを見つければ、生まれてくるキャシーは無事元気に生きることができる。
そんな母親の思いを知ったキャシーは、授かった能力を駆使して少女たちを必ず守ることを改めて誓うのだった。
必死に追うエゼキエルに対し、キャシーは一体どんな未来を予知して彼女たちを守るのか。
・・・というのがざっくりしたあらすじです。
目新しさはないんだけど。
今回の主人公キャシーが「マダム・ウェブ」として生きていくまでを描くオリジン映画。
基本的にヒーローのオリジン映画ってワクワクするもの。
普通に過ごしていた毎日だったのに、突如として手に入れてしまった力によって別の人生を歩むことになっていく葛藤が生まれたり、逆にその力によって誰かの救うことができる喜びに出会ったり。
そうした中出現するヴィランに、どう立ち向かっていくか。
こうした「授かった力」に対して自分はどう扱うべきか、どう向き合うべきかという姿に感情移入するからワクワクするんですよね。
だからいつまで経っても思春期真っただ中で、回を重ねても地に足がついてない、その姿がかつての10代の自分と重なるピーター・パーカーに夢中になるわけです。
しかし今回は30代を迎えた女性のヒーロー誕生譚。
女性を描くにあたり恋愛だの結婚といった部分を一切描かない辺りは正に現代的なモノだと感心。
あくまで「命を救う仕事」を全うしているごく普通の姿としてキャシーを映し出してましたね。
授かった力は事故によって覚醒はしたものの、その能力に対しての葛藤という部分は、自分の人生を狂わせてしまうかもしれない、普通の生活に戻れないかもしれない、といったものとして描いておらず、どちらかというと「命を救う仕事」をしているキャシーが別の形で「命を救うこと」に対して葛藤していたように感じます。
ただそれを、かつての自分の暮らしとこれからの暮らし、みたいな照らし合わせ方をしてないため、能力にただただ戸惑い、勢いで少女たちを救ってしまったモノの、誘拐犯扱いされちゃったという巻き込まれから、その道を進んでいくみたいな描き方でしたね。
この辺をもっとヒーロー的な描写で見せていけば、グッと来たように思えたんですが、その辺は正直不満ではあります。
また肝心の未来予知能力ですが、ここをもっと面白く活用する手段はなかったのかと感じました。
基本的に先に彼女が予知した未来をこちらに提示し、ふと我に返ると数秒前の時間に戻って戸惑うキャシーという構図で見せていました。
最初から数回は確かに戸惑うでしょうから、その辺りはそれでいいとして、その後改心してエゼキエルと対峙しなくてはならない時に見る未来予知は、もっと工夫すべきだったと思います。
そこでも先に予知した未来を断片的に見せた後に、その危険を回避するキャシーという繰り返しだったんですよね。
本作を見ながら思い出したのはニコラス・ケイジ主演の「NEXT」。
2分先が見える主人公が核爆弾を阻止するというSFアクションで、正直都合よすぎるってくらいガンガン未来を予知、しかも2分という制限を無視して、先の先の未来まで見えちゃってるからそりゃツッコみたくなる!でも楽しい映画だったんですよね。
本作に限って言うと、エゼキエルも未来を予知できる、どちらかというと自分の最後だけ予知できるみたいなある種の呪いによって行動してるので、本作の最後のような未来も予知できたんじゃね?だったらもう未来予知バトルになるんじゃね?と思ったんですよね。
だったらもう容赦ないツッコミをされてもいいから、互いが未来を予知しまくって交わして交わして最後に大逆転!みたいな歯止めの効かない何でもありなギリギリの攻防を見せてほしかったですね。
終盤なんて、こうしたら回避できるっていう未来ばかりを予知してた気がするんですけど、そうでなくて「そっち行ったら危険!」みたいなのを、こまごまと見せるんじゃなくてもっと大きく見せて、「一体キャシーは危険な未来をどう回避できたのか?」っていう見せ方にしてほしかったですね。
あとはもう、これは仕方ないことなんですが、アクションが他のヒーロー映画に比べて少ないのが魅力を損ねていたように思えます。
キャシー自体未来予知しか能力を持ってないので、あの手この手でエゼキエルの行動を阻止するしかないんですよ。
車で突っ込んだり、救急車に搭載されたAEDだったり発煙筒使ってみたりと、ナイス小道具で回避する分には楽しいんですけど、その分エゼキエルがウェブスイングせず車の天井に飛び移ったりする程度の移動で、なんだかスパイダーマンの格好してるのに対して強くないなぁ…とw
身体能力と毒を持ってるくらいの能力なので、キャシーの相手にはちょうどいい強さなのかもしれないんですけど、もっと手ごわい相手にしてほしかったですねw
実際救った少女たちがこれからスパイダーウーマンとして活躍するのは、数年後になると思いますので、今後製作される続編や彼女たちの単体映画に期待するしかないんですかね。
本編では未来の彼女たちが映し出されていましたが、あの辺ももっと欲しかったなぁ。
しかしスパイダーマンとガッツリ絡んでるのは意外でしたね。
なんてったってキャシーの同僚がベン・パーカーで、義妹に赤ちゃんが生まれるという設定。
名は明かしてませんが、明らかにおなかの赤ちゃんはピーターですよね。
後にスパイダーマンのメンター的存在になると噂されてるマダム・ウェブがこんなにも近しい関係だったなんて思いもよらず。
またベンがいい人と出会ったと言ってましたけど、それってきっとメイ叔母さんのことですよね。
舞台が2003年ということは、この歳にピーターが生まれ、およそ15年くらい経ったあたりが「スパイダーマン・ホームカミング」てことになるのか、それとも再びスパイダーマンはリブートされるのか。
またそこにスパイダーウーマンがどう絡むのか、今後のSSUに期待ですね。
最後に
海外での酷評にかなり期待値を下げてましたが、個人的には悪くなかったです。
もちろん期待値を下げた結果ですけど、20年前のハリウッド映画ってこういうサクッとした軽い感じの、誰でも気軽に楽しめるタイプの映画が多かったなぁという空気を、本作で感じましたね。
いい意味で全然深みがなくジャンル映画として巧くまとめた感じ。
正直ソニピクが手掛けるマーベル映画って、なんというか「あっさり」なんですよねどれも。
でもひと昔ふた昔前のハリウッド映画ってこういうのが主流で、手早い場面転換や編集でタイトに物語を描いてたと思うんですよね。
昨今長尺化の一途をたどるハリウッド映画ですけど、この手の映画が増えてほしいと願っている身分としては、そういう意味で本作は大歓迎。
あともっと注文するとすれば、独身30代が少女を牽引するという流れだったので、もっと少女たちに振り回されても良かったかなとw
そうしたコミカルさがもっとあればと思いました。
CG合成が段々雑になってくのとかは、もう仕方ないですね。そこをいちいちツッコみません。
てかマダム・ウェブって盲目の設定になるんですか?原作キャラをよく分かってないので、この辺はおいおい学習したいところ。
アメコミ疲れが慢性化してる昨今ですが、ある意味でそんなタイプの映画ではないので、誰でも気軽に見てほしいですね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10