モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」感想ネタバレあり解説 まんまパディントンじゃん!!

ウォンカとチョコレート工場のはじまり

ティム・バートン監督とジョニー・デップのタッグで製作された「チャーリーとチョコレート工場」。

美味しいお菓子で世界を魅了するウィリー・ウォンカ。

彼が手掛ける夢のようなチョコレート工場を見学に来た子供たちが、目くるめく冒険を体験する物語でした。

 

その外見から子供でも夢中に慣れそうな世界観ですが、そこがティム・バートン。

少々子どもたちへの仕打ちやウォンカの闇の部分など、ブラックユーモアも紛れ込んだりしてるから、ダークな側面も持ってる映画だったんですよね。

 

そんなウォンカが一体どんな経緯でチョコレート工場を作ったのか、という彼の若き日を描いたのが、この「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」。

しかし、先に観賞された方からの情報によると、「チャーリーと~」の前日譚ではなく、これより前に製作されたミュージカル映画「夢のチョコレート工場」の前日譚になっているそうな…。

 

ティム版では終盤父との和解を描く、トラウマ克服のような締め方をしてましたが、本作では「母親との約束」を軸に物語が進んでいくらしく、ティム版で描かれていたウォンカの過去は一切関係ない模様。

それが功を奏すかどうかは観てのお楽しみ。

 

個人的にはファンタジーとユーモアが好みの「パディントン」の監督が手掛けてるので、非常に期待しております。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

ファンタスティックMr.FOX」やS・スピルバーグの「BFG」などの原作で知られるロアルド・ダール原作の児童小説「チョコレート工場の秘密」に登場するチョコレート工場の工場主ウィリー・ウォンカの若き日の物語を、「パディントン」の監督によって実写映画化。

 

魔法のチョコレートを作る青年が、夢を見ることを禁じる街で、母との約束を胸に世界一のチョコレート店を開くまでの物語を、鮮やかで幻想的な世界観とミュージカルをベースに、「夢見ることの素晴らしさ」を魅せていく。

 

監督は「パディントン」シリーズで一躍脚光を浴びたポール・キング

紳士としての品格に憧れを抱くクマと彼と共に暮らす人間の家族との絆を描いたパディントンでは、大人も子供も楽しめるイギリスらしい喜劇を軸に、人々が忘れてしまった本当の優しさを取り戻していく物語を、キャラクターのウィークポイントを後に克服させていくギミックで、手堅くも技巧的な映画として完成させた。

 

本作では原作が持つダークでファンタジーな色合いを踏襲し、「チャーリーとチョコレート工場」とはまた違った、甘くてほろ苦い物語を作り出した。

 

主演は、今や若手俳優トップといっても過言ではないティモシー・シャラメ

君の名前で僕を呼んで」以降、ビッグバジェットから小規模作品まであらゆるキャラを熱演してきた彼が、本作では純粋で希望に満ち溢れている好青年を見事に表現した。

今後も「デューン:砂の惑星」の続編が控えているなど、多忙を極めている。

 

他にも、「オペレーション・フォーチュン」のヒュー・グラント、「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリー・ホーキンス、「Mr.ビーン」でお馴染みローワン・アトキンソン、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」でキノピオの声を担当したキーガン=マイケル・キー、「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマンなど、監督作品に出演経験のある、イギリス人俳優らで固めたキャストで構成。

 

ウォンカは如何にして夢を見てはいけない街で、店を作ることになるのか。

見た後、あなたもウォンカバーが食べたくなるかも??

 

 

 

パディントン(字幕版)

パディントン(字幕版)

  • ベン・ウィショー(声の出演)
Amazon

 

あらすじ

 

ウォンカ(テォモシー・シャラメ/CV花村想太)の夢は、亡き母と約束した世界一のチョコレート店を開くこと。

世界一おいしくて、空だって飛べるウォンカの”魔法のチョコ”は、町のみんなを虜に!

 

しかしそこは「夢見ることを禁じられた町」

その才能を妬んだ”チョコレート組合3人組”に目をつけられてしまう。

 

さらに、ウォンカのチョコを盗むウンパルンパ(ヒュー・グラント/CV:松平健)というオレンジ色の小さな紳士も現れたから、さぁ大変!

 

果たしてウォンカは無事にチョコレート店を開くことができるのか!?(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

人生は甘くて苦い。

でもウォンカの手にかかれば誰もが甘さたっぷりの希望で喜びに満ちていく。

ここまでパディントンだなんて思わなかったよw

期待値低かったけど、これは見て良かった!!

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

都会にダマされる田舎モン。

チョコで人々を魅了する街でチョコレート店を開くという母との約束を叶えるためにっやってきた青年が、夢を叶えるのではなく「夢を分かち合う」ことに気付かされていく本作。

 

もうまんまパディントンと同じような構成で進行してく物語だもんだから、まぁときめきましたw

いわゆるコテコテのイギリス喜劇のような歌ありユーモアありファンタジーありの、子供はもちろん大人までハッピーになれる素敵なお話だったように思えます。

 

 

冒頭、パンパンの夢と希望と銀貨12枚を握りしめ、船から町へ降り立ったウォンカは、地図に1枚、勝手に靴を磨く少年に1枚、カボチャを落とした弁償で3枚と、どんどん銀貨を失っていくではありませんか。

さらには寝床を探す道中、寒さに震えている乳飲み子を抱える母親にも1枚残してすべてあげてしまうわけです。

 

こんな優しさに満ちている青年がたどり着いたのは、「翌日6時までに1銀貨くれれば1泊できる」というお宿。

ものすごく長~い契約書にサインしたのが悪かった、結局1銀貨では足らず、とんでもない過剰な請求をしてくるボッタグリ宿だったのであります。

 

宿代を稼ぐためにチョコをお店の前で売るも、チョコ組合に加盟しているスラグワース一味の通報によって、稼いだ金を警察に没収される始末。

 

せっかく夢と希望を抱いて訪れた都会で、何もかも持っていかれ絶望の淵に立たされてしまうウォンカ。

 

これはもう、都会の毒に気付かず知らず知らずに墜ちていく「おのぼりさん」そのものであります。

 

僕も都会のネオンと誘惑にダマされ、金の使い方を考えずに使い込んでしまった過去がありますが、さすがにウォンカのように騙されることはありませんでしたが、ホント都会って将来有望な若者の全てを搾取する悪い町ですよねw

 

さてさて、ここまで見ていくとどこかで見たことある既視感が芽生えます。

そう、正にこの映画「パディントン」そのものなんですよね。

 

パディントンも森の中で祖父母に育てられ、二人から散々聞かされたロンドンに憧れを抱き、意を決して向かうことになるんだけど、紳士なんてどこにもいないほど自分の事しか考えてない利己的な奴らばかりの街だったことに幻滅していく姿が、序盤で描かれてるんですよね。

 

それでもお母さんに拾ってもらい、ドタバタ劇を繰り返すけど、彼の信念によって一家の心を変えていく姿が、なんとも微笑ましい物語でした。

 

 

実際本作では、スクラビット夫人にダマされたことで地下のクリーニング工場で働くことになるんですが、そこで同じく騙されて奴隷生活を送るヌードルたちと仲間意識を深めていくことで、この地獄の生活から脱却するべく、ウォンカの魔術とチョコとひらめきで状況を打破していくのであります。

 

カラフルで彩られた風景

本作の舞台となる街の構造は、チョコ組合の3人によって形成された「チョコで人々を搾取する」つくり。

 

民衆には薄めたチョコを売り、残りのチョコを隠し金庫に貯蔵、それを教会の神父や警察署長に「賄賂」として渡す代わりに、彼らの思うがままの社会を作り上げているという、いかにも談合社会な構図。

 

そこに「安い価格で平等に究極のチョコをあげる天才青年」の存在を疎ましく思った3人が、彼を徹底的につぶすとという「出る杭は打たれる」ような展開が用意されているのであります。

 

この手の物語は、どの映画でも見かけるパターンではありますが、現実社会でこうした展開の物語を見ると結構ゲンナリしてしまうわけです。

社会って結局何も変わらないんだな、上の奴が上を牛耳るから下の奴は這い上がることなんてできないんだ、と。

 

いつだってピラミッド構図なカースト制は根付いてるのが組織であり社会ではあるんですが、そうした悲しい現実をなるべく感じさせないよう、本作はカラフルな色合いでコーティングされているのであります。

 

それこそホバーチョコというお菓子を食べると宙に浮いたりしますし、突然始まるミュージカルシーンによって厳しい現実に立たされているウォンカが決して諦めてない、寧ろ自信に満ち溢れてるように見えるではありませんか。

 

アカシアミントが大好きなキリンのミルクをこっそり頂くシーンでも、とにかくキリンが可愛いし、そこから始まるヌードルとのミュージカルは、魔法のような美しさがスクリーンいっぱいに広がる、楽しいシーンでした。

ミュージカル自体、どこか重力を感じさせないふわっとしたダンスで、ウォンカやヌードルが軽やかに飛び跳ねたりしますし、終いには無数の風船を掴んだことで空を散歩するような動きに発展していくんですよね。

 

また、念願の店をオープンしたウォンカの店内は、ピンクの花が咲いた大木を中心に、大木まで続く道や、ピンクの雲や色とりどりの花たちが育った、自然色強めの店内なんですよね。

そこにジェリービーンズのように様々なチョコが瓶に詰められて陳列され、やってきた人たちで賑わう様子が映し出されてました。

 

他にも、地下のクリーニング工場から脱出するためにウォンカが出したアイディアってのがまぁ楽しい。

郵便配達員からもらったというウォンカのズボンに喰らいつく番犬を利用し、ぶら下がったニンジンをひたすら追いかける馬の如く、布の切れ端を頭上にぶら下げ、それを動力源とした「自走式クリーニングマシン」を開発。

 

これでウォンカがいなくても稼働する工場を生み出し、その空いた時間を使ってウォンカは外でチョコを売る時間を作れるというナイスアイディア。

 

こうしたアイディア満載でユーモアあふれる描写は、本当に見ていて楽しいです。

 

 

そして一番素晴らしいのは、悪い奴らもいるけれど、特段悪いような見せ方にはしてない寓話的なキャラになっていることでしょうか。

 

スクラビット夫人も貴族好きというウィークポイントがあり、モノの見事にころりと騙されるような愛らしさがあるし、警察署長もウォンカを氷の張った噴水に頭を突っ込む暴力描写があるわけだけど、チョコに目がないせいで賄賂を受け取った後「2週間で30キロも太ってしまう」という異常なまでのチョコへの執着心を見せるんですよね。

実際そんな太り方したら血糖値の上昇半端ないだろ!wwというツッコミをしたくなるほどですw

 

神父だってチョコに目がないし、キリンに追いかけられる姿も滑稽なのでまぁ許せるキャラというかw

 

そうした憎めないキャラを周囲に置き、スラグワースだけは徹底したワルに仕立てているのも巧いなと感じてしまいます。

端の2人に関しては、ボケとツッコミような配置にしていて、一人は「貧乏人」という言葉を聞くと嗚咽が出てしまう設定に、もう一人は遠回しに言ってる会話を直接的に訳してしまう癖を持つキャラ。

その真ん中でスラグワースだけは、ウォンカを憎み、彼を潰すため、そしてヌードルにも容赦のない悪行の限りを尽くすことで、ウォンカを応援したくなるようなキャラにしているのであります。

 

 

キャラクター面に関して言えば、ウォンカの脇にいるキャラクターがモブキャラになってないのも印象的。

 

パディントンでは、一家の悩みを克服するような伏線回収が用意されていたのが強く記憶に残ってますが、本作はどちらかというと見せ場をちゃんと用意していたのが好感を持てました。

それこそ会計士は、ウォンカのチョコの売り上げをしっかり帳簿に収めたり、当初無口だった女性は、ホントはめっちゃおしゃべりな電話交換手であることが明かされ、後にヌードルの母親探しの手がかりを見つける役目を果たします。

 

他にも自称コメディアンは、形態模写という特技を生かした見せ場があったり、地下の排水管に詳しい女性は、神出鬼没で登場するウォンカの逃げ道をエスコートする役目を担うなど、ウォンカのアイディアで建てられた作戦と称して、皆が活躍するような配慮がされていました。

 

もっとモブキャラで言えば、ウォンカのチョコによって操られた動物園の守衛がかつて好きだった女性にアプローチする相手が、隠し金庫の門番をしていた警備員の女性だったというつなげ方もまた、上手に関係性を構築した設定だったように思えます。

 

この魚の骨まで残さず食べるような使い方こそ、ポール・キング監督の特徴だと思った瞬間でしたね。

 

 

最後に

ウォンカの母親が彼に残した言葉は「夢は叶えるのではなく、分かち合うこと」。

板チョコを割って仲間と食べあうウォンカは、正に夢を分け合うことで夢を叶えていく姿を見せていくわけですが、これ、僕としては、昨今賃金問題で揺れるハリウッドメジャースタジオに対する答えにも思えたんですよね。

 

というかどの資本主義でもそうですが、上が金を牛耳って下には大して金をやらないピラミッド構造が貧富の差を生んでいるわけで、それは映画興行に関しても言えること。

実際今年はストライキが起きるなどの大問題が起き、何度も組合とスタジオが交渉せざるを得ない状況が数か月も続きました。

 

そんな中、富を分配することこそが、今後の未来にとって重要であることを「AIR」という映画では映し出していたわけですが、本作も同じようなメッセージ性だったように感じます。

実際チョコ組合がやっていたこと自体が搾取と寡占であり、彼らを無くしてウォンカのようにチョコで夢と喜びを分配するような社会こそ好ましい組織形態、または関係性なのではと。

 

多少強引な解釈でもありますが、監督ならではの思いが透けて見えた作品だったのではと思うわけです。

 

所詮この世はビタースウィートシンフォニーのような人生ですが、ビターにさせてんのはチョコ組合のような奴らのせいじゃねえのかよって話ですw

 

さて、本作はあくまでウォンカの前日譚で、終盤ではウンパルンパと契約を結んで工場を作り出していきます。

ただ正直この展開、個人的には強引だなと思ってしまいました。

 

彼の本作の上でのゴールは店を出すことで、一度失敗はしたものの、やはり本作のゴールは店を出すことにすればよかったなと。

なぜかそっちにいかず、徐に工場を作りたいと言い出し、街を出て工場を作って幕を閉じるという「夢のチョコレート工場」の手前まですっ飛ばしていく締め方に。

 

それをやるなら劇中で「ゆくゆくは工場を作りたい」とほのめかす台詞があればよかったし、工場を作るとしてももう少し手順があっても良かったのになと。

 

また、夢のチョコレート工場のウォンカって、バックボーンが全然描かれてないこともあって、どうにも描けるんですよね。

だからってこんなに優しい青年だったなんて!という驚きがある一方で、どうして金持ちでワガママなガキにあんな仕打ちをしてしまうのか、というきっかけになるような描写がまるでないのは、前日譚として機能していないようにも思えてしまったわけで。

 

始まりという点では非常に優れた前日譚だったわけですが、最後の結び付け方だけはいただけなかったなというのが一番の不満点です。

 

それ以外はもうポールキング最高!!と言える作品でした。

とにかく期待値を低くしてたのが良かったかなw

 

あとはもうウンパルンパ演じたヒューグラントですw

そもそもウンパルンパってこんな性格だったのか!という発見も良かったし、ほんのり笑かしてくれる愛くるしいキャラでしたねw

最後に全部おいしいとこもってくしw

 

そういう意味でもパディントンだったなと。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10