ザ・メニュー
高級レストラン。
一度は行ってみたいものです。
最高級の食材を使い調理された品々が、キレイなお皿にキレイに盛り付けられ、まるで芸術品のような佇まいで目の前に現れる。
きっとナイフを入れた瞬間から普通の料理とは違うんでしょうね。
あまりに感動して涙してしまうかもしれません。
しかしそんな金もなければ一緒に行く相手もいない、何よりジャケット着用必須とかマジめんどくせー。
別にそんなもん食わなくたって生きていけるし、こちとらB級グルメこそ至高の料理だろが!
…というわけで、今回観賞するのは、美食フルコースを提供する孤島の高級レストランを舞台にしたサスペンス。
目の前に出された極上のメニューに客は皆感動しながら食べているけど、どうも店内とコックたちに違和感を抱くひとりの女性客。
今自分が食べさせられているモノは何なのか、そしてこの店はなぜ過剰な統率がとられているのか。
てかさ、緊張しながら飯食うとか、客の好きなように食わせない店は、いやだよねw
早速観賞してまいりました!
作品情報
「ノマドランド」や「フレンチ・ディスパッチ」などを手掛けたサーチライト・ピクチャーズが送る作品は、「マネー・ショート」や「ドント・ルック・アップ」など、社会問題をシニカルに描く作家性を持つアダム・マッケイが製作した、風刺と笑いのスパイスで舌を唸らせる極上のサスペンス。
孤島に佇む一件の高級レストランを舞台に、選ばれた12名の客が極上のフルコースに舌鼓するが、料理長による異常なまでのスタッフへの統率に違和感を覚えた一人の客をきっかけに、店内は異様な雰囲気を漂わせ、誰もが思いがけないサプライズに見舞われてく。
古典的、伝統的なフランス料理へのアンチテーゼとして、これまでにない新しい発想を用いたフランス料理=ヌーベルキュイジーヌを題材にした本作は、「死ぬほど素敵な夜へようこそ」というキャッチコピーの下、「キングスマン:ファースト・エージェント」のレイフ・ファインズを筆頭に、Netflixドラマ「クィーンズ・ギャンビット」のアニャ・テイラー=ジョイ、「マッド・マックス/怒りのデス・ロード」のニコラス・ホルトなどの一流スターが、決して忘れられない体験へといざなう。
第47回トロント国際映画祭でのワールド・プレミアでは、高級レストランが舞台なのに、なぜかチーズバーガーが提供されたという本作。
一体どんな意味があるのか。
そしてこのレストランは我々にどんな忘れられない一夜を提供してくれるのか。
あらすじ
太平洋岸の孤島に足を踏み入れたマーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)とタイラー(ニコラス・ホルト)らカップルの目的は、有名シェフ、ジュリアン・スローヴィク(レイフ・ファインズ)が手掛ける予約の取れないレストラン「ホーソン」。
そこでは、味はもちろんのこと見た目もすばらしい料理の数々が彼らを待っていた。
料理を前にして涙を流すタイラーをよそに、マーゴはレストランに対してふとした違和感を抱く。
その違和感をきっかけにレストランは不穏な雰囲気に包まれ、メニューには想定外のサプライズが添えられていたことが明らかになる。(Movie Walkerより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、マーク・マイロッド。
イギリスの映画監督さんだそうで、HBOドラマ「メディア王~華麗なる一族~」がゴールデングローブ賞のドラマ部門作品賞にノミネートされた実績を誇る方。
映画では、ギャングスタの格好をした主人公が、ひょんなことから国会議員になってしまうキャラを下ネタ全開で描いたおバカコメディ「アリ・G」や、恋に迷えるOLが引き起こす「元カレ」をめぐるドタバタラブコメディで、ちゃっかりクリス・エヴァンス、アンソニー・マッキー、クリス・プラットら大物が出演している「運命の元カレ」などを手掛けています。
このようにコメディ映画を中心に手掛ける監督が、アダム・マッケイと手を組んだわけですから、本作はスリラーサスペンスとは名ばかりの「ブラックコメディ」になってるのではと予想されます。
そうなると既に「選ばれた12名の客」って時点で、店が客を選んでることが笑けてくるし、手を変え品を変え客をもてなす映像が、一見緊迫した感じに見えますが、裏を返せば実はこういう演出を施すレストランを小バカにした中身になってるのではないかと。
それでも客にどんな恐怖を仕向けるのかは見ものですね。
キャスト
料理長ジュリアン・スローヴィクを演じるのは、レイフ・ファインズ。
直近で言えばどこにも属さない諜報機関の始まりを描いた「キングスマン:ファースト・エージェント」でのアクションを交えた活躍ぶりが記憶に新しいですが、やはり彼と言えば「ナイロビの蜂」のような哀愁漂う演技だったり、「グランド・ブダペスト・ホテル」や「007」シリーズのMのような、厳しさと優しさを兼ね備えた気品あふれる姿が魅力的な俳優さん。
とはいえ「ハリー・ポッター」シリーズで宿敵ヴォルデモートを演じていたわけですから、今回のように料理長としてのコワモテな一面は迫力がありますね。
一体どんな恐ろしい姿を見せてくれるのか楽しみです。
他のキャストはこんな感じ。
店を訪れたカップル・マーゴ役に、「ラスト・ナイイト・イン・ソーホー」、「スプリット」のアニャ・テイラー=ジョイ。
同じく店を訪れたカップル・タイラー役に、「女王陛下のお気に入り」、「モンタナの目撃者」のニコラス・ホルト。
給仕長エルサ役に、「ダウンサイズ」、「インヒアレント・ヴァイス」のホン・チャウ。
他、客の役として、「タンブルウィーズ」のジャネット・マクティア、「ジョン・ウィック」のジョン・レグイザモなどが出演します。
一体、振る舞われた料理はどんな味なのか、もしかしたら変なの入れてないでしょうね…。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#ザ・メニュー 東京国際映画祭にて。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年10月25日
孤島にある高級レストランに招待された12名の客に天才シェフが振る舞うフルコースとは。
一応言っておくとアダム・マッケイ製作です。
なので、ねww pic.twitter.com/PTiPNCjVOg
これはかなりのブラックコメディ!w
狂気のフルコース過ぎる!!
お客から見てもシェフから見ても、どちらから見てもハラスメントに思えるのは俺だけか…。
以下、ネタバレします。
シェフはつらいよ…
孤島に佇む一軒の高級レストランに招待された12人の客が、天才シェフによる人生をかけた狂気のフルコースに翻弄されていく本作は、創作料理をいじり倒すかのような風刺を描いたかと思いきや、ふつふつと湧き上がるシェフの苦悩や執着が露わとなることで、上から目線のギャラリーに警鐘を鳴らすと共に、もてなす側ともてなされる側が対等の関係でなくてはならないことを改めて思い知らせてくれる画期的なブラックコメディでございました。
僕はこうしてモンキーとして映画ブログを書く以外は、主に接客をメインとした仕事をする立場にあります。
ただ業種的なのか、商品が安いからか、それともただなめられてるのか、お客様は時として「神さま」だという雰囲気でいらっしゃる方は少なくなく、たまに理不尽な思いをすることもあります。
恐らく何かしらサービスを提供する立場として働いてらっしゃる方は、一度はそんな思いをされた方も多いのではないでしょうか。
本作はそんなサービスや商品、料理でもいいです、お客様に提供する側としての恨みつらみがこもった映画だと、第一に受け止めました。
一応本作は料理店の話なので、それに例えて語りますが、今や様々な情報が入り乱れるSNS社会にあり、プロの批評家たちが「ここの店は旨い」と言えば行列ができるし、それが例え素人グルメ批評家たちであっても「ここの店は最悪」と言えばたちまち評判が下がってしまうわけで、一生懸命おいしい料理を振る舞おうとも、要はお客さんの評価次第でその人の人生が左右されてしまう時代になったわけです。
逆を言えば、客に対して自分の主義主張を押し付ける頑固な店も存在するわけです。
「まず最初にそのまま召し上がっていただき、次にこれをつけて~」みたいなのは序の口で、行き過ぎると私語禁止だとか写真撮影禁止だとか色々なルールを設け、気づけば客よりも店側が上の立場にあるかのような、お客さんに気持ちよくおいしく食べていただくことを見失ってるような店も存在するわけです。
要は食べる側も食べさせる側も本来対等な関係にあったはずだよね?ってのを提唱したかった、それをブラックユーモアでコーティングして「批評」した作品だったのかなと。
このレストラン、マジでやばい
はい、いつもの通り何言ってるかわかんないすよねw
具体的にあらすじを語っていくとしましょう。
カップルのマーゴとタイラーは、レストラン「オーソン」に向かうために、店が用意した船で、他にも招待された客と共に向かいます。
生ガキのキャビア添えを食べながら向かう船の中には、オーソンのオーナーと知り合いの男性3人組、とある映画で評判の下がったハリウッド俳優と連れの女性、いかにも富裕層な老夫婦という顔ぶれ。
オーソンのシェフ・スローヴィクを崇拝するほどグルメ気取りのタイラーと違い、マーゴはどちらかというと「食べたいものを食べたい」タイプの人間。
今回のように店から招待され、決められたメニューを提供してくるようなタイプのお店は嫌いな様子。
島に着くと、給仕のエルサが名簿を確認しながら客をもてなす。
しかしタイラーは本来連れてくる相手ではないことが発覚。
マーゴもその事実を知らされておらず、2人の間には若干の気まずさが漂うのでした。
エルサにマーゴの入店許可をもらったことで店に向かう一行。
店で提供する食材はこの島で採れるものばかりだったり、店のすぐ近くには鶏小屋や燻製場まで作られているほど本格的。
さらにオーソンで働くスタッフは、店に隣接された宿舎に寝泊まりし、早朝から料理の仕込みをし、夜中の2時まで働くという重労働をしていました。
ある者がエルサに「それで幸せなのか?」と尋ねると、エルサは「全てをかけてもてなしているので幸せです」と答えるのでした。
そして一行はテーブルに案内され、オーソンのシェフ・スローヴィクの「食べるな、味わえ」という挨拶のもと、料理を堪能することに。
1品目はこの島で採れたホタテを小さな石に乗せた一品。
料理番組で見るかのような文字表記と共に料理を紹介しつつ、客は天才と呼ばれるスローヴィクが生み出した料理に舌を唸らせていきます。
タイラーは、海そのものを表現したという料理に感動し、涙を流しながら味わう本気ぶり。
その姿にマーゴは若干引き気味になるに加え、そこまでの料理かと疑問を抱く。
フルコースは2品目からおかしな方向に。
「小麦粉と水で出来たパンは、貧しい者たちが食することができる食べ物として古来から親しまれてきたが、今お客様は選ばれた者、そんなものを食べさせるわけにはいかない」というスローヴィクの言葉によって「パンのない皿」がテーブルに置かれていく。
皆スローヴィクのに引くとも思えるジョークに笑うしかない状態に。
皿の上には手紙が添えてあるだけで、皆パンに付けるはずのソースを、スプーンですくってなめていく。
スローヴィクを発掘したというグルメ評論家はソースをベタ褒めし、さすが私が見つけた料理人だと自画自賛しつつスローヴィクを讃え、タイラーは写真を撮りまくったりソースに何の材料が加えられているかを当てるのに必死な様子。
しかし男性3人組は「うちらにだけパンを出してほしい」とエルサに懇願する。
この店のオーナーと同僚だからという好なのだからいいだろうと頼むも、エルサはかたくなに拒否。
しかもモノを落としたついでに男性の耳元で「身の程の知りなさい」と忠告する始末。
一方のマーゴは「パンのない皿」を出されて不服に。
タイラーの自分に対する上から目線の態度にも腹が立ち、化粧室で隠れて一服することに。
すると女性用にも拘らずスローヴィクが入室、「君は誰だ」とマーゴに執拗に迫ってくる。
質問の通り応えるマーゴに対し、スローヴィクは「君はこの店に相応しくない」と一喝。
客をもてなすはずの料理人が、なぜここまでして冷たく接するのか理解不能なマーゴは、席に戻り厨房を見つめるのでした。
少しづつ不穏な空気が立ち込めていく店内。
その不穏な空気は、3品目で確実なものとなっていくのでした…。
というのが、序盤のあらすじです。
僕は本作を見る前に「新しいモノを追求し過ぎて、見た目重視の普通の料理を提供する創作料理店」をdisりまくる映画なんだろうなぁと予想してたんです。
実際「パンのない皿」を始め、全然お腹が満たされそうにない料理を少しづつ食わされ、それを富裕層やら批評家共が「素晴らしい」っていう姿を見て、マーゴのような一般市民が「は?これのどこが素晴らしいの?」とツッコむようなブラックコメディなのではと。
蓋を開けてみると、ツイートで張り付けた画像のように千鳥の2人が的確なツッコミをして料理を茶化すような、大方見立てていた筋書きだったわけですが、物語は別の方向に向かっていったんですよね。
それは周囲にはやし立てられたが故に、初心の気持ちを忘れて評価のみを追求してしまい、あらゆる人たちから自分の作った料理を批評されたことに疲弊し、結果自分の人生を狂わせた者たちへの復讐と心中という結末を選んだ一人の料理人の物語だったということ。
自分のすぐ近くで修業すればいつかは店を持てると勘違いしていた右腕のコックや、母さんを苦しめた父への怒り、セクハラをした部下の女性を監視下に置くということへの戒め、自分の料理に口を出すオーナー、そのオーナーと共に不正を働いて私腹を肥やしている同業者、自分を高く評価したかわりに他の料理人の酷評する評論家、何度も来店してるにもかかわらず過去に食べた料理など全く覚えてない老夫婦、つかの間の休日にもかかわらず下手くそな芝居で台無しされた映画の主役、そして素人にも拘らず出しゃばってくるグルメ気取りなどなど、とにかく一流の料理人として君臨するが故に、自分の人生を台無しにしてきた者たちを招待し、いっそのこと「俺の人生の終幕をお前らと共に完成させてやる」とばかりにフルコースという名の地獄を味あわせていくのであります。
ここに一般市民の感覚を持つマーゴが加わったことで、スローヴィクの計画は狂っていき、物語は予想だにしない事態へと加速していくんですね。
ここが本作の一番の面白さだったのではと。
もちろん随所でつい笑ってしまう描写が多々映し出されており、ヘンテコ料理をはじめ、タイラーの料理バカぶりや、他の客たちによる掛け合いに至るまで、色々笑えます。
それ以上に本作はデスゲームばりに人が死んでいく描写も用意されており、グロテスクな部分はおさえているものの、「こんなレストラン、マジで行きたくなぁいっ!!」と思ってしまうような怖さが漂っています。
とはいえさっきまで「こんなレストランいやだ!」と思っていた観衆の気持ちが「あれ、これもしかして…飯テロ?」と思ってしまうような極上のメニューを見せつけてきます。
きっと誰もが見終えた後、アレを食べたくなるのではないかとw
そういう意味でもちゃんと料理映画だったりするのがニクいんですw
最後に
モブキャラと化したコックたちが、なぜそこまでしてスローヴィクの言うことに従順なのかや、なぜ客たちは誰も殺されてないのに反旗を翻そうとしないのか、エルサが言い残したことの意味や、タイラーはスローヴィクに何と囁かれていたのかなど、非常に多くの不可解な点が残っているのが、個人的には説明不足という形で腑に落ちなかったりするんですが、きっと色々な解釈や考察しがいのある映画に仕上がっていたのかなと思います。
本作のクライマックスは、正に料理を提供する側と提供される側が、本来あるべき立場にあることを明確に提示したシーンとなっており、これを受けたスローヴィクの表情が全てを物語っていると思います。
食べる側も食べさせる側も、どちらにも敬意を払うことが大事だということを改めて思い知らせてくれます。
それは料理以外にも、ぶっちゃけ映画業界全体にも言えることなのかと。
だから俺はタイラーなんですよw
そこまでお詳しいのなら、映画を作っていただけませんか…
この続きは映画を見た人ならわかりますよねw
今後は敬意を払って感想を…w
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10