モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」感想ネタバレあり解説 これは復讐かそれとも?

先生、私の隣に座っていただけませんか?(わたとな)

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今回鑑賞する映画は、漫画家の妻が知ってか知らずか「不倫漫画」を描き始めることで、不倫してる夫がひたすら肝を冷やしていくお話。

しかもこれだけじゃない。

 

その後彼女はあてつけのように「妻と先生との淡い恋」を題材にした漫画を描いてくという、ひたすら夫がザワついて仕方がない映画。

 

単純な復讐なのか、それとも漫画は単なるフィクションなのか。

漫画の続きを知ってるのは、妻ただ一人。

 

おいおい、なんだこれコメディか?

サスペンスか?

夫婦が元さやに戻るためのラブストーリーか?

 

ドキドキが止まらなそうな本作。

早速鑑賞してまいりました!

 

作品情報

嘘を愛する女」や「哀愁しんでれら」など、近年の日本映画に新たなクリエイターを輩出し続けている「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM 」。

その2018年のコンテストで準グランプリを獲得した作品。

 

夫の不倫に気づいた漫画家の妻が、夫の日常によく似た「不倫漫画」、さらには「妻と教習所の先生との淡い恋」を描くことで、不安と疑念に駆られた夫への報復活動を喜劇的に描いていく。

 

妻が描く漫画をメタ的に見せることで「果たして現実なのかフィクションなのか」といった線引きをあいまいにし、我々にスリリングな心理戦へと誘う。

また、自身の浮気と妻の不倫に慌てふためく姿を、男女感のズレと共にユーモラスに描く。

 

劇中で使用される漫画を、漫画家アラタアキと「サターンリターン」が連載中の鳥飼茜が担当。

映画ファン以外に、漫画好きも楽しめる1作となっている。

 

誰も見たことのない新たな夫婦映画に、あなたは何を感じるだろうか。

 

 

 

あらすじ

 

結婚5年目の夏。

それは夫婦のよくある、のはずだった…。

 

漫画家・佐和子(黒木華)の新作漫画のテーマは・・・「不倫」

 

そこには、自分たちとよく似た夫婦の姿が描かれ、佐和子の担当編集者・千佳と不倫をしていた俊夫(柄本祐)は、「もしかしたらバレたかもしれない!」と精神的に追い詰められていく。

 

さらに物語は、佐和子と自動車教習所の若い先生との淡い恋へ急展開。

この漫画は、完全な創作?ただの妄想?それとも俊夫の不貞に対する、佐和子流の復讐なのか!?

 

恐怖と嫉妬に震える俊夫は、やがて現実と漫画の境界が曖昧になっていく・・・(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

 

 

監督

本作を手掛けるのは、堀江貴大

 

監督作品としては、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にノミネートした「いたくても いたくても」、夢に迷うダンサーが夢を諦めたドラマーと出会い、本当の自分を見つけていく青春ドラマ「ANIMAを撃て!」に続く本作。

 

本作を製作するきっかけは、自身が結婚をしたことと「コンビニでたまたま読んだ雑誌の中に不倫をテーマにした漫画特集があったから」だそう。

そこから、ドロドロしたイメージの強い不倫をコメディ色の強い作品にしたい意欲と、以前から温めていた「妻と教習所の先生の駆け落ち」の話を混ぜて出来上がったのが本作とのこと。

 

また演出では、ヒッチコックの「めまい」や、不倫復讐の代表作「ゴーン・ガール」、「ノクターアル・アニマルズ」などを参考にし、視点を操作して物語をどう動かすかを重点的に考えたそうです。

映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』公式サイト より)。

 

キャスト

漫画家の早川佐和子を演じるのは、黒木華。

 

恥ずかしながら彼女の主演作を観賞するのは本作が初。

シャニダールの花」も「小さいおうち」も見ておらず、彼女が脇役の作品ばかり見てる気がしますw

バイプレイヤーとしてはもう十分すぎるほどの存在感で、「銀の匙」のドSな先生役も、「幕が上がる」での顧問の先生役も、「来る」での悲運な奥様役も、どれも印象に残っています。

 

そもそも芸達者な女優さんですから、かわいい妻と恐ろしい妻という二面性をしっかり演じてくれそうですし、夫役の柄本佑を翻弄してくれることでしょう。

 

 

他のキャストはこんな感じ。

夫・早川俊夫役に、「火口のふたり」、「アルキメデスの大戦」の柄本佑。

自動車教習所の先生・新谷歩役に、「猿楽町で会いましょう」、「サマーフィルムにのって」の金子大地

俊夫の不倫相手・桜田千佳役に、「サムライマラソン」、「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」の奈緒

下條真由美役に、「浅田家!」、「君の瞳が問いかけている」の風吹ジュンなどが出演します。

 

 

 

 

 

 

 

妻からの疑惑にドギマギしっぱなしの2時間なのでしょう!

あ~ドキドキする!

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

終始肝を冷やしっぱなしの夫婦劇。

しかしあれだ、こういう時男ってホント情けなくて、女は強い。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

最後までホントにわからない。

夫の不倫現場を目撃した漫画家の妻が、現実と酷似した様な漫画を描き始めることで、こっそり読んでしまった夫がひたすらあたふたしていく姿を、現実とフィクションを漫画のネームを通じて線引きをあいまいにするミステリー要素と、疑惑をもたれていても嘘をつく姿勢を貫く反面、妻への疑惑に対してはドギマギしっぱなしという滑稽さでギャップを生むことで、題材的には重たそうなテーマにも拘らずポップな仕上がりで楽しませてくれた作品でございました。

 

TSUTAYAクリエイターズプログラム作品は、なるべく鑑賞するようにしてるんですが、企画の面白さで賞を決めている節があるため、どうしてもアイディア勝負な面が見えてしまうんですよね。

 

だからなのか、僕の場合予告編を見る段階ではすごく面白そうに見えるんですけど、期待値を越えるような作品にはまだ出会えてないんです。

ですが本作は、妻のかいた漫画が果たして本当なのかフィクションなのかわからないように見せている点で、期待値以上の満足度でした。

 

やはり事実を曖昧にさせることで、見る人の集中力を増してくれる吸引力という点ではミステリーは非常に効果的。

 

特に本作は、ひたすら終始疑惑を抱く夫の視点で物語が進行していくため、終盤で一旦の節目を迎えるんだけど、最後の最後で「え?どういうこと?」って所で終わるんで、そういう意味では見終えた後の「ゾクゾク」した感じと「え?結局どっちなの!?誰か教えて!」って気持ちが混同して、最終的には「わ、面白い!」って高揚感に変化していく作品だったんじゃないかなと。

 

 

昨今不倫スキャンダルによる世間の反応とスポンサー絡みによって、仕事を干されてしまう芸能人を多々見かけます。

一昔前は、仮にスキャンダルが出たとしても仕事に支障をきたすようなことはなかったんですが、今や芸能人は清廉潔白でないと商売できない仕事になってしまってます。

 

スポンサー的にはやはり商品に欠陥が生じた場合、早急に対処しなくてはいけない立場ですから、スキャンダルの出た芸能人が出演するCMを降板させたり、出演を見合わせなくてはいけないんでしょうけど、最低だ!とかいいまくるネットユーザーや世間の声に関しては、僕としては正直「なぜそこまで言うの?」と疑問に思ってます。

 

要は当人同士の問題であって、俺らは無関係で部外者なんだから口を出す意味ないだろうと。

仮にスキャンダルが明るみになった人がTVに出てて不快だったなら、チャンネルを変えればいいし、自分で避ければいいだけの話。

何故汚いと思った人を排除させようとネガキャンしまくるのかは、僕には疑問です。

 

 

という意見を先に書いたところで本作の話に戻しますが、そもそも事の発端は夫の浮気です。

これがなければ、「先生、私の隣に座っていただけませんか?」なんて不倫漫画は生まれませんし、妻もあんな苦しい思いをしなくて済むだろうし、ホントは描きたかったであろう「農業ファンタジー」を描いていたと思うんです。

 

だがしかし、そもそもこの夫婦、5年の結婚生活を迎えた段階で既に冷め切ってるように見えました。

 

本作の設定で大事なのは、夫婦が二人とも「漫画家」である点。

同じ仕事を自宅で共同作業しているわけです。

いわば二人で大衆食堂を切り盛りしてる夫婦みたいなもんです。

 

となると自ずと仕事の話ばかりで、お互いをしっかり見つめた夫婦生活は送れていない気がするんです。

こんな風に言うとまるで大衆食堂を経営している夫婦がめっちゃ冷め切ってるように思えるかもしれませんが、あくまで例ですからw

 

さらに設定が面白いのは、夫は妻の手伝いをしているが、以前は売れっ子漫画家だったという設定。

なぜ彼が今妻のアシスタント的立場になっているかってのが、本作のキーポイントになってるんですよね。

 

この時点で妻は夫に対して「再び漫画を描いてほしい」という希望や、「なぜ描かないのか」という不安を抱いてる。

それを面と向かって聞こうとしない、寧ろ聞いてもはぐらかされる一種のディスコミュニケーションが漂ってるんですね。

 

これに追い打ちをかけるのが「不倫現場の目撃」でして、妻は一念発起して、次に連載する題材を「不倫」にし、夫へ向けた作品を製作していくわけです。

 

肝を冷やしまくる夫

あくまで不倫モノのコメディというジャンルとして宣伝されてますが、僕としてはそこまで笑えるものではありませんでした。

恐らく思いっきりコメディに振った演出をしてなかったのが理由になるんでしょうが、要は笑えるか笑えないかギリギリのラインを保って作っていた気はします。

 

とはいえ、妻に浮気がバレてるかもしれない緊張感と、妻に対する疑念を抱えた表所や行動は可笑しくて仕方ありません。

 

物語は、妻の母親が事故でけがしたせいで、夫婦そろって妻の実家へ帰省するところから進行していきます。

車の免許を持っていない妻は、今回のことをきっかけに免許を取得するために教習所へ通います。

 

初日はアクセルを踏むことができないことが判明し、自分は運転恐怖症ではないかと疑うんですが、二日目に担当した先生の心優しきアドバイスによって、妻は運転できるようになりました。

 

前日送迎した夫から見ると、あまりの変わり様に何かあったのでは?と疑問を抱き、夜遅くまでネームを描いてる妻の部屋に勝手に侵入。

机の上には、まるで現実とそっくりな「先生、私の隣に座っていただけませんか?」というタイトルのネームが。

夫の不倫現場を目撃した様子や、母の実家に帰省し教習所でイケメン先生と出会った様子など、現実と同じ展開が描かれていました。

 

読んだ瞬間一気に顔から噴き出す汗は、やがて一滴のシミをネームに残してしまうことに。

 

隠していたことがバレたことと、妻が隠れてしてる事が同時に襲う衝撃。

そりゃ汗吹き出るわw

 

ここから夫は、こっそりネームを読んでしまったことを隠し、遠回しに教習所の先生が男性なのか遠回しに聞いてみたり、教習所に通うのがやけに楽しそうな妻の表情を見て不安になったり、その結果こっそり教習所を覗きに行ったり、路上教習してる妻をこっそり尾行したりと、あれこれバレないように詮索するのであります。

 

そもそも夫は浮気がバレないとでも思ってたのでしょうか。

妻が夫の浮気相手である編集担当者に電話しようとする際、電池が切れたから電話を貸してと言われた時、何とか平静を装って電話を掛けるんですね。

電話音が鳴った瞬間、妻は「私が欠ける」と夫の携帯を勝手に奪うんですが、相手の編集担当者はてっきり夫が出るものと思い込み、普段なら「俊夫先生」と呼ぶはずが「俊夫さん」と甘い声を出してしまうではありませんか。

 

これ夫には聞こえてないから彼はバレてないと思ったんでしょうが、もうこの時点で現場を目撃してなかったとしてもアウトですよねw

 

だからこの時点で既に詰んでるんですよ、夫は。

 

 

しかもだ。

物語の中盤、教習所からの帰り道で夫は妻のネームをこっそり見てしまったことを打ち明けるんですね。

あれってフィクションだよね?まるで現実そっくりだねと。

ここで妻は「じゃあ浮気もホントのこと?」と聞き返すと、「ないよ」と否定するんです。

いやいやもう隠せないでしょw

何故ほんとのことを言わないんだ!今のうちに謝れ!既に時遅しだけどw

 

こういう真相を明かそうとする場面はドキドキしますね。

しかもはぐらかすからやきもきする。

 

もうあの漫画は自分への復讐だってのが手に取るように明らかなのに、多分夫は妻の不倫の方で頭いっぱいなんだろうな。

 

しかも、無事免許を取った妻が夫の車でドライブに出かけると行ったきり、数日帰ってこない事態に。

事故に巻き込まれたかと不安に駆られた夫は、浮気相手である編集担当者に、行方不明の妻の件と、新作のネームを描いてる事、自分たちの不倫がバレてるような題材になってることを連絡してしまったことで実家に来てしまうからさぁ大変。

 

さらにさらに、居所の分からない妻から新作ネームがFAXで送られ、これから不倫相手である先生を連れて実家へ戻ってくるところで「続く」というドキドキの展開。

夫はさらに肝を冷やしまくるのであります。

 

意外と憧れる夫婦の共同作業

僕は以前ミュージシャンをやってまして、映画にハマる前は音楽に没頭してたのですが、仮にもしミュージシャンとして売れて、結婚する相手もミュージシャンだったら、二人で曲を作ってみたいなぁという小さな夢がありましたw

 

布袋寅泰と今井美樹みたいな感じですかねw

 

僕のブログを読めばわかると思うんですが、限られた文章で収めることができない弱点がありまして、メロディに言葉を乗せる作業ってのが非常に苦手なのです。

要するに作詞が得意ではない。

 

反面、曲を作るのは大好き。

自信もありましたし、やろうと思えば1日でアルバム1枚分の曲は作れる。

 

だからもし結婚相手がミュージシャンだったら、作詞をお願いして共同作業をしてみたいなぁと。

別に一緒に楽器を演奏するでもいいんですけど、それだと瞬間的な共有しかできない気がして。

好きな人とクリエイトすることで、それが形となって残るのが憧れといいますか。

自分が生み出したメロディに言葉を乗せてくれるんですよ。

もしくは相手が書いた言葉に自分がどんなメロディを乗せて歌にするかってのを想像するだけでたまらないというか。

 

今となっては夢のまた夢ですけど、そんな憧れがあったんです。

 

いきなり自分語りしてどうしたモンキーとなってるかと思いますが、本作も正に共同作業することが夫婦として、それ以前にパートナーとして本来ありたいと願う気持ちが描かれてたんですね。

 

正にタイトルの妙だと唸った瞬間だったんですが、この「先生、私の隣に座っていただけませんか?」なる新作漫画は、夫への復讐が込められた内容ではあるんでんすが、それ以前に彼女の切なる願いが込められたタイトルにもなってるダブルミーニングだったわけです。

 

何故夫は4年もの間新作漫画を製作しようとしなかったのか。

それは「書く気が起きない、心が動かない」からだと。

車の運転も家事も、まして自分の作業も夫に負担をかけてしまっていることへの負い目から、もしかして彼が漫画を描けないのは自分のせいなのではないか、だから不倫をしてしまってるのではないかと。

 

もう一度あの頃の2人に戻りたい、机を並べて好きなモノに情熱を注ぐ彼に戻ってほしい、そんな願いが込められたタイトルになっているわけです。

つまりは夫へのラブレター的漫画になってると。

 

何これステキやん!

そりゃ浮気されて腹立ったろうけど、自分の創作物で夫を精神的に苦しめてやろうとしてるけど、やっぱり夫婦でいたいんじゃん!

倦怠期を乗り越えたいんじゃん!

 

このシーンではこんな気持ちで見ておりました。

そう、もうね夫が悪いとか妻が悪いとかってのは、見てるこっちはあれこれ意見しなくていいわけですよ。

当人同士が話し合って解決すればいい。

正に昨今芸能人スキャンダル問題にあれこれ文句言う世間の声に対する一つの意見と言いますか、世間の方の評価でお金をもらってる人たちがもしやらかしたら、それをもエンタメにしちゃえという姿勢というか。

 

最後に

これで終わるのか、まぁハッピーエンドでもいいよねフィクションだし。

・・・なんて思ってたのもつかの間。

物語は非常に曖昧な終わり方をするのであります。

 

妻が描いた漫画は果たしてガチの復讐なのか、それともフィクションなのか。

いや多分前者だと思うんですけど、明確な答えを出さずに終わらせるのがニクイです。

さっきまで俺が「ええやん!」と思ってた気持ちを見事に裏切ってくれたのであります。

 

そりゃそうだ、夫があんな態度だもんw

 

ぶっちゃけ最初っから向き合って問い詰めればいいだけの話なんですけど、夫婦生活ってそんな簡単に済むもんじゃないってことですよね。

独身の俺にはその辺よくわかりませんw

 

しかし、女性ってのはメンタル強いですね。

特に編集担当者の女性、堂々と不倫相手とその妻がいる現場に足を運んで平気な顔してるし、自分の不倫がバレてるのに、「何この漫画面白い!早く続き読みたい!」とか言って実家に何日も泊まってるし、フィクションなんだから別に連載しても問題ないっしょとか、どういうメンタルなんだよw

 

佐和子ももちろんだけど、お母さんも怖いわ~。

TV消した瞬間漏れる声を黙って聞く後ろ姿、たまりません。

 

ただ劇中の漫画、最初の場面てずっと車内じゃないですか。

その会話だけで物語進めていくのって、コミックとして面白いんですかね。

描写が優れてれば面白いのかな。

そこがちょっと疑問ですw

 

とにかく現実と漫画のラインがシンクロしているので、漫画の内容が事実なのかフィクションなのかホントにわかりません。

照明とかで区別してますけど、実際どうなのかは見た人次第な感じが良かったと思います。

 

ゴーンガールより爽やかでしたね。

だから不倫のお話だけど、もう一度見れるような心地よさでした。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10